女は久々に睡眠し、男はケンカ祭り
『まさか、あの女が加護を与えるとは思わなかった』
色々と、本当に色々と感情が振り切った時間だったけど、やっとひと息。
『下手したら初めてじゃないか?』
ルークはまだ何やらブツブツ言ってる。
「パスは完成?」
『ああ、なんなら蛇1人でも一発で完成だった』
「やっぱりすごいんだ。蛇神さま」
『次は異世界だ。蛇は祭を楽しめと言ったがどうする。俺は用意があるから一緒にはまわれない。1人になりたいなら部屋を用意してあるからそこで待て』
(選ばせているようでいて部屋で待ってる一択なんだろうなーまあいいか。考えたいことあるし)
「なんか疲れたから部屋で待とうかな」
ルークは私の返答が意外だったのか少し眉を上げて「そうか」とだけ言った。
(嬉しそうに見えるけど見なかったフリだ)
「あれ、店じまい?」
男の声に振り向くと、そこにはワイルドイケメンがいた。
『来たか。予想外に大物が揃ったんだ』
「じゃあパスはできたのか」
『ああ。あっちに散歩に行くからしばらくは戻らない』
珍しくルークの声色が穏やかだ。友達か。
「新しい魔王さまはこの子?やっぱり強そうだね」
ワイルドイケメンは屈託のない笑顔を私に向ける。
「強そう…ですか?」
まだ普通の人間のはずですが。
「まだ力もないから実感わかないだろうが、自分の力を信じて大丈夫だ。危なくなっても俺たちが助ける。ドーンと構えてろ」
そこにドロドロに病んでる悪魔がいなかったらイケメンに飛び込んでた。確実に。
何そのたくましい胸板。甘えたい!
その大きな手でいい子いい子してほしい!
だが自制心が圧勝した。監禁からの愛の囁きという名の洗脳、自ら命を差し出すほどの…重すぎる執着心を思い出し一気に熱が冷めた。
「アリガトウゴザイマス」
心の葛藤は嵐のようだったか返事は片言になってしまった。
『わざわざ呼び寄せたのに悪かったな』
「風神のお守りでどうせ来る羽目になるのはわかっていたから気にするな」
『来てるのか。やはり』
「来ないわけない。種はまだ分からないがな」
*****
ルークの用意した部屋は結界がほどこされた空間だった。もちろん自分では出られない。
用意があるから先に部屋に行くよう指示され、
私は雷神さま(ワイルドイケメンは雷神さまだった!)に送ってもらった。
考えたいことは山ほどあるが、まずは寝たい。
結界に入ったとたん、久しぶりに眠気を感じた。
今寝たら絶対気持ちいいやつ。私は用意されていたベッドにダイブした。
*****
ここからはあとから聞いた話
【男たちの戦いダイジェスト】
・私が去るのを見計らったかのように、因縁の相手がやって来る→因縁の相手とはあれ、前魔王の想い人。
・天女をはべらせルークの前に立ち、色々と侮辱する
・ルーク、別に魔王の想い人が誰でも興味ない。適当にあしらう。だが私の事を侮辱したのでブチ切れた。
・待っていたかのように、風神、雷神が参戦。
・ケンカ祭りの始まり
・結界がえぐいので神たちも拳の闘い
飽きた頃、終了の合図とともに宴会開始
●ダイジェスト終了
『俺が喧嘩の種にされるとは』
「天界の茶番だ。今日のお前は隙があったからな」
雷神は酒をルークに注ぎながら笑う。
『あいかわらずクソだったな』
「ん?ああ、あいつか。パンチ1発ルールだからみぞおちにいれておいたぞ」
『フッ…効いてない振りしてたな』
因縁の相手にルークは手を出さなかった。
風神と雷神の重い1発で充分だ。
「…今度こそがんばれよ」
『ああ』