地を鳴らすつま先に祝福の旅路を――。

英雄顕現

　英雄顕現。

　それは200年に一度許された世界からもたらされる祝福。

　その祝福を誰も彼もが今か今かと待ちわび、世界を救ってくれる英雄に胸を期待で膨らませる。

　この世界にいくつも存在する多種多様様々な国、そこに住む人々は誰一人例外なく前回の英雄顕現から200年経った今日をずっと夢に見ていたはずである。

　そう、今日こそが――。

　紅い月が辺りを照らし、星々の輝きがまるで祝福された未来への道標のように夜の帳に散らばる今日こそが、前回の英雄顕現から200年経った幸福の日。

　本来日をまたぐこの時間は夜と囁く静寂（しじま）であるが、今日はまるでカーニバルのように誰もが外へ出て酒の入ったグラスを打ち鳴らす。

　世界は今、祝福され、幸福を思い出した。