その1 私って、
続きもの小説の第一話、むしろプロローグ前です。毎週月曜日に更新予定です。
よろしくお願いします(*^^*)
なんの役にも立たない私なんて、解釈違いだわ。
きっと今の私には、このテア家の令嬢としての価値なんてない。
空の明るみと共に、朝がやってくる。憎しみを込めてカーテンを睨んでもその眩しさは変わらず、ユリアは諦めて毛布から這い出た。
その少女は、一言で表すならば、諦念の中にいる。
貴族の家に生まれた令嬢が令嬢として存在するには、いかにそれらしく振る舞うか、またそれらしく扱われるかがとても大切だ。私がこの家の令嬢であると思わせてこそ、令嬢としての価値が高まる。
そう教えられて育ってきたが、もうすぐ14歳になる今、ユリアは未だ社交の場に出たことがなかった。
テア家の第三子にして次女のユリアは、家族から大事に大事に、愛されて育ってきた。そして幸か不幸か、令嬢としての教育を受けてきたにも関わらず、適齢期になっても社交への参加が許されないという矛盾した状況の中にいた。
ユリアは才色兼備と謳われるテア家の血をしっかりと引いて、麗しいまでの見目と、学問への深い素養を持つ。しかし令嬢としての働きを与えられなければ、ただ生きているだけの無力な子どもだ。ユリアは、自身をこの家のお荷物、もしくは愛玩動物なのだととらえていた。
何か価値のある存在になりたい。
私にしかできないことを探してみたい。
貴族として生まれたからには、本来あるべき令嬢の姿として、社交なり嫁ぐなり、きっとやり遂げてみせるのに。
生まれた意味を成せないならば、私にできることが何もないならば、この身には何の価値もない。価値のない私は、生きている必要もない。
不要なものは、私ではない。
ユリアは、哲学を好み、自らの容姿の美しさもよくよく知っている、家族に愛されて生きてきた少女だ。
だからこそユリアは、胸元のリボンを握るその手も、その白い手を見ているその瞳も、体も思考も、ただ生きているのではなく、何かを生み出すことに使って、自分自身で価値を生み出すような、そんな存在になりたかった。
だけど現実は。
お兄様にお姉様、お母様、お父様。大事な家族に愛されているのは分かっているけれど、愛され過ぎて、私は何もできないままの子どもだ。
ユリアちゃん、14歳。悩める乙女です。