2.森の村 / 滞在
村に入った途端、待っていた人達が一気に押し寄せてきた。
「無事だったか!」「魔物は!? 魔物はどうなった!?」
「大丈夫、魔物は倒した。もう安全だ」
グレイスの答えで村の人々の空気が弛緩する。
「それと、魔物を退けられたのは、シュウとアテナの助力があってこそだ。2人が居なかったら、私もどうなっていたか分からない。彼らへの感謝も忘れないでくれ」
彼女がそう続けると、村人からは何とも言えない困惑した雰囲気が漂ってきた。そんな人々の間から、小さい影が進み出て来る。
「ありがとうございます。シュウさん」
やっぱりというか何というか、出て来たのはリタ達だった。その一歩がきっかけになったのか、様子見をしてた人の中からも、お礼の声が出始める。その数が意外に多く、なかなかグレイス宅に着けなかったのは予想してなかったけど。
◇◇◇
「ふう、ようやく帰ってこれたな」
「はは、下手したら魔物の相手より大変だったかもな。それにしても……何ていうか、良い人達なんだな」
適当に雑談をした後、話の内容は本題へと移っていく。
「しばらくここに留まろうかと思ってるんだけど」
「この村に? 私としては歓迎するが……旅や例の魔物のことはいいのか?」
「今後のことを考えるとちょっとな。しばらく腰を落ち着けて武器やら道具やらの準備もしないと……って思って」
準備自体は研究室で出来るとしてもだ。各地を転々としながらだと、思いもよらない事態に陥る可能性もある。
「それで、この村のルールとか覚えておくことべきとか、教えてもらえないかな」
郷に入っては郷に従えとも言うし、協力してくれる人がいればありがたい。
「分かった。しかし……そうなると住む場所はどうする? 2人が良ければ、ウチの空き部屋を使ってくれても構わないが」
「いや、流石にそこまで世話になるのはちょっと……。それに当てもないわけじゃないし」
研究室には居住スペースも備えてある。ちゃんと確認する必要はあるけど、説明で見た感じだと十分に快適そうだった。昨日の夜に使わなかったのは、セキュリティ上の都合なのか俺とアテナ、そして研究室の元の持ち主しか入れない仕様になっていたからだ。皆が野宿してる中で2人だけ快適スペースにいるのは申し訳ない。
「それなら大丈夫そうだな。村の皆には私から話しておくとして……他に手伝えることはあるか?」
「今は……とりあえず無いかな」
「そうか。じゃあ色々と準備するか。ルールと言ってもそんなには無いから、説明は長くならないだろう」
こうして、俺達はこの村にしばらく滞在することになった。