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世界境界  作者: shi:to(碧空の使徒)
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冒険者育成学校


試験の次の日、京翔は早くからギルド協会前に立っていた。まだ、空は暗く街灯も点灯している。昨日ロウガから渡された封筒には迎えが来る時間と場所が書かれていた。時間には早いが特にすることも用意もない京翔は朝早くから立っていた。暫くすると靄の奥から呑気な声が聞こえてきた。


「お待たせしましたぁ。もう来てますかぁ?」


声の主は個性的な寝癖をしたルカだった。


「いいや、まだ迎えは来ていないよ。」

「そうですかぁ。もう少しゆっくりでもよかったですねぇ」


京翔達が軽く話していると後ろから人の気配がした。


「二人とも揃っているな。ではお前たちを学校まで連れていく。そこでじっとしていろよ。」


京翔達を迎えに来たのはロウガだった。ロウガは二人が居ることを確認すると肩をつかんだ。そして一言、「いくぞ」と言うと元の景色が崩れ、新たな景色へと組み上がる。例えるならばブロックを崩して別のものを作るような感じだ。そして京翔達の景色は白色の無機質な空間に木製の扉がある場所に変わった。


「さあ、ここがお前たちの学校だ。冒険者になれるといいな。」


そういうとロウガは京翔とルカの背中を押して目の前の扉へと押し込む。扉は誰も押さずとも勝手に開き二人が奥に入ると飲み込むようにバタンッという音とともに閉じた。

扉が閉じた空間は薄暗く、隣にいるはずのルカでさえ顔がよく見えない。

肝が据わっているのか緊張しているのか、二人はじっとその時を待った。

そして突然スポットライトが点灯して、小さなステージに立った一人の男性を照らし出した。


「ウェールカーム!!よぉうこそ、冒険者育成学校へ、待っていたよ。私がここの校長をしているランパードだよ」


紫と黒のタキシードで全身を包み、ふざけたような帽子を身に着けた男性。30歳ぐらいだろうか。明らかに怪しいが校長と言っているのだから、そうなのだろう。


「どうしたんだね?この恰好が気になるかい?新しい学生が来たのだから礼服でいるのは当然だろう?」


気になるのはその帽子なのだが京翔は面倒になって口を噤んだ。


「いろいろ聞きたいことがあるだろうが、もうすぐ授業が始まる。その前に適正試験を行いたいのでね、急いで奥の部屋まで来てくれるかい?」


ランパードは後ろのカーテンを捲り、奥に続く扉を開くと手招きをして京翔達を呼ぶ。

二人はランパードに連れられた奥の部屋へと向かった。

着いた先には小綺麗な台に置かれた小さな水晶玉と30cmほどの木製の棒が置かれていた。


「まずはこの水晶玉を持ってみてほしい。」


ランパードはそう言いながらルカに水晶玉を持つように促した。水晶玉はルカの手に触れると水晶玉の内側で淡く黒い靄を浮かべ、そして靄が渦を巻いた。


「では、次はケイト君だよ」


ルカが持っていた水晶玉を京翔に手渡すと先程まで靄が晴れ、水晶玉は元の透明なまま変化は起こらなかった。


「では、次はこっちの棒を持ってほしい。」


同様にルカが最初に棒を手にした。すると棒は橙色に発光しながら霧散し、光の粒が弓状に形成された。ルカが驚いて光の弓を手放すと元の木の棒へと戻った。続いて京翔がその棒を持つ。しかしその棒は何も変化することなく木の棒のままであった。


「うん、わかった。では適正試験の結果を発表する。」


ランパードは最初にルカと向き合った。


「ルカ君は主属性が闇と風。適した武器は弓だ。」


ランパードは一旦、呼吸を整える。そして京翔と向き合った。


「そしてケイト君だが、君は魔法の適正がない。正しく言うと魔法の主属性が存在しないため魔法を使うことは困難に近い。そして武器適正もない。ただ、これは現在での適正であるからこれから変化するかもしれないし、そうでないかもしれない。まだ気を落とさないことだね」


京翔はその時何を言っているのか分からなかったが、横で聞いているルカがこちらを見る目を見てこれは最低評価であることを理解した。


「まあ、どんな結果だったって私たちは平等に扱うかぁらね。気にしなくていいよ」


京翔は少し困惑したような顔を見せたがすぐに元の顔に戻る。


「それでは教室に向かおうか。この学校にはクラスは一つしかないし、人数も君たちを入れて8人だからすぐに馴染めると思うさ。もし、卒業検定試験を受けたくなったら私に言うんだよ」


ランパードは歩きながらこの学校の主要な場所と卒業の方法を説明していく。説明が終わるとちょうど一つの引戸の前にたどり着いた。


「ここが君たちのクラスだ。入ったらすぐに授業を始めるから簡単に自己紹介をよろしく」


ランパードは京翔達の返答を待たず、扉を開いた。


「やあ、皆さん。授業を始めたいところだが、最初に新たに入学した子達らがいるから簡単に挨拶を済ませてもらおうと思う。ケイト君、ルカ君こちらへ来てくれ。」


二人が教室の中へ入ると中にいた6人分の視線が集まる。京翔を見ると「あぁ」という声であったが、後ろから入ってきたルカを見た時の反応は「おぉ」だった。やはり女子がいいのだろうか。とりあえず異世界あるある自己紹介をしてみるか。


「俺は京翔って言います。出身は東の果てです。よろしく。」

「僕はルカって言いますぅ。できるだけ早く冒険者になりたいですねぇ。よろしくですぅ。」

京翔が東の果てという言葉を発した時、少し不穏な雰囲気が漂ったが、続くルカの挨拶でその雰囲気は収まった。

東の果てという言葉は何か禁句なのであろうか、時間があれば聞いてみるか。


「では席についてもらおうかね、どこでもいいよぉ」

ランパードは京翔達を座らせると気の抜けるような掛け声をかけた。

「それでは本日の授業を始めるよぉ」



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