到着、ポルの町
光が差し込む。俺はゆっくりと体を起こした。
何か悪い夢を見ていた気がする。
「あ、起きましたか。もうすぐ着きますよ。」
目をこする京翔に話しかける黒髪の少女、ラミィ。京翔が彼女の方を見ると後ろに光がさしており、後光がさした女神のように見えた。
「あ、あぁ。寝てしまっていたか。」
「ええ、話している途中で寝てしまったのでびっくりしましたよ。」
「そうか、それはすまないな。」
「それほど疲れていたってことでしょう。」
ラミィと話しているうちに二人はポルの町の入口へと着く。そこでは検問を行っていた。
京翔は背中、そして手のひらを重点的に調べられた後、町に入ることを許された。
「なかなか不思議な検問だな。」
「それは今だからですよ。今は戦争中ですからね。」
「戦争なんてしてるのか。」
「知らないんですか?昨日から思っていたんですが京翔さんはどこから来たんですか?」
「多分ラミィが知らない遠いところだよ。」
ラミィはふうんと言いながら流してくれた。京翔の言いたくないのを察してくれたのだろうか。
暫く歩いて町の真ん中ほどだろうか、目のまえには横幅が100メートルを超えるであろう7階建ての建物の前で立ち止まった。
「ここがギルド協会です。私は商業ギルドへ向かいますが京翔さんはどうしますか?」
「俺は昨日言っていた冒険者ギルドへ向かってみるよ。」
「そうですか、じゃあここでお別れですね。頑張ってくださいね。」
頑張る?何が?と思ったが、言い間違えたのだろうと思いながらラミィと手を振って別れた。
別れたはいいものの京翔は文字が読めなかった。レンガ造りの壁に所々に矢印と文字が書かれているが『ナニコレ』と目を点にしてしまう始末であった。
文字が読めない京翔はしょうがないので何となく近くを通っていた冒険者のイメージに近い体つきのよい男たちが向かう方向へと向かっていった。
たどり着いた先には酒場のような酒臭い場所、カウンターにいる女性に話しかけて何かを登録しているようだ。
京翔もその人達の後ろに並んで順番を待った。
「こんにちは、こちらは傭兵ギルドです。本日はどのような御用ですか?」
「傭兵ギルドでしたか。冒険者ギルドへ行きたいのですが、どこにありますか?」
「冒険者ギルドは真ん中の広場を挟んで反対側ですよ」
周りにいた人たちは京翔を笑い、酒瓶を持った人に蹴飛ばされ外に出された。
「治安悪すぎるだろ」
そう呟きながら京翔は反対側へと向かった。今回は先ほどのように外周から回るのではなく、真ん中を突っ切っていこうと建物の内側へと向かう。
ギルド協会の真ん中は小さな広場になっており、中央には巨木が聳え立っていた。その周りには道具や武器を売っている露店が並んでおり、それを挟んだ向こう側に何やら人が溜まっている場所があった。そこが冒険者ギルドなのだろう。
反対側に着いた京翔が最初に思ったのは『暗い』であった。暗いと言っても部屋が暗いわけではなく、全体的に人の顔に影が落ちているように見えた。
その中を進み、カウンターで受付の女性に話しかける。
「すいません、ここが冒険者ギルドで会っていますか?」
「あ、ぁあ。あっていますよ。どうか、されましたか?」
「今、無一文でして。ここで依頼を受けると報酬が得られると聞いたのですが。」
「ギルドの登録ですね。ではこちらへ。」
無一文の人が金策に訪れることが多いのか簡単に登録ができそうだ。
女性は京翔を奥の部屋へと通した。中は小さな机とベッド、トイレのみ無機質な部屋であった。
「では、先ほども確認しましたが冒険者ギルド登録がしたいということでよいですね?」
「はい。」
「では今日はこちらでお休みになってください。明日、昼頃に呼びに行くのでそれまで自由にしていていいですよ。」
そういうと女性は立ち去る。
一人部屋に残された京翔はベッドへ寝転がる。無機質な天井を見上げながら今後のことを考える。
とりあえずの目標は衣食住か。まぁ、明日になれば解決するか。
そして京翔は眠るのであった。