元の世界
太陽が沈みきり、街中のビル群に先ほどが嘘のような影を落とす。一部が蒼かった空もすべてが暗黒に染まっている。
突風が吹き荒れる。
京翔は歩く。先ほどの出来事が嘘であったかのような感じがする。白昼夢でも見ていたのではないか。そんな気もしていた。しかし嘘ではないことがはっきりとわかる。実際に感じた痛みはそのまま、傷もそのまま残っていたからだ。
目のまえがユラリと歪む。めまいだろうか。疲れているのだろう。
京翔は歩く。先ほどの世界が嘘でないならあちらの世界の方が面白そうだと感じた。自分がいた世界からしたら考えられない不思議、獣人と呼ぶにふさわしい人々、そして違う世界があったということ。それらすべてが京翔の興味を呼び起こした。
しかし興味を持ったとは言えあの世界に行ける方法もわからない。こちらへ戻って来るためにはあの転移装置を使用すればよいことはわかっている。どうやってあちらの世界に行こうか。もし夢であったならばその夢の続きが見たい。そういう感情に胸を膨らませていた。
駅の方から人が込み合うオフィス街を抜ける。その奥にあるバスに乗るためだ。
人込みを歩き続ける。すると後ろから救急車のサイレンが聞こえた。
どこかで事故だろうか?
救急車のサイレンはドップラー効果を効かせながら横を通り過ぎていく、するとしばらく行ったところで停止した。その周りには人込みができており、その周りいったいがざわついている。
いつもならば気にならないところだがなぜか今回だけとても見なければならないと感じてしまった。
再度ユラリと目の前が歪む。少し気持ち悪い。
・
・・
・・・
野次をかき分ける。人の隙間を縫い進んでいく。
その先に、
その先にあったのは・・・
血だまりの中に横たわり顔面が半分ほど潰れている自分の死体であった。
鏡で見たことのある顔、同じ制服、何も持ってはいないが確かに京翔自身であった。
目の前の光景に惑う、そして気持ち悪くなる。自分の死体を見れば誰でもそうなる。
自分の死体にカバーが掛けられ運ばれていく、野次は写真を撮り拡散している。
目の前が歪む、頭痛と吐き気を伴い世界が回っていく。
歪みは収まらず目の前の色が混じりあう、色という色が少しずつ溶け合うように混じっていき次第に黒くなっていく。
終には目の前が真っ暗になった。