謀
話は京翔の契約が終わり,翼人の拠点に戻ってきたところから始まる.
京翔はアーリエに肩を掴まれながら空を飛んでいた.
「ごめんなさいね,拠点に行くのであればこれが一番早いのよ.怖くはない?」
「・・・いえ,大丈夫です.」
京翔はこの時,正直怖かった.飛んでいる高さもあるが,猛禽類に捕まった小動物はこんな気分なのかなと感じていた.
拠点に着くまではしばらく時間があるというので,アーリエに聞きたい事を聞くことにした.
「なぜ,殺した?」
これは,自分が心から知りたかったこと.ラミィと一緒に居る時には抑え込んでいた感情が振り替えしてくる.
「何のこと?」
「あの現場…,俺たちが最初に出会った場所は,お前らがやったのか?」
言葉にするとあの光景が頭を過ぎる.沸々と蘇るあの時の感情.鋭い視線がアーリエに刺さる.
「・・・あれは,少なくとも私の部隊ではないよ.」
アーリエは彼女の瑠璃色の髪をいじりながらそう言った.
「災厄の暴風,テンペストと呼ばれる大魔法.あの現場からそれが用いられたことは間違いないだろう.私達も一枚板ではないのだよ.」
最近,翼人の中でも暴走して惨殺するようになったらしい.しかし,自軍には影響がないため,上層部は対して問題視せず放置しておくように命じた.
「だけど,私達はそう思わなかった.私達はそれを防ぎたい.」
これを変えるためには相手の動きを知ることが重要であった.契約を通じて相手の拠点へ行く.裏切り者を見抜くために情報を得る.情報を得たらその場所へ赴き戦いには手を出さずに見張る.
「だから,捕虜交換を…」
「そうして情報を集めているうちにとある予想が出てきた.」
「予想とは?」
深刻な顔をしているアーリエは遠くを見据えて答えた.
「この戦争,誰かが仕組んだ可能性がある.」




