図書館へ
授業を始めるといったランパードは少し学生の質問に回答していた。
「今日も、あとは自習でよろしく。ケイト君とルカ君は学生証が発行終わったから職員室まで来るように」
質問を聞きに来る学生がいなくなったことを確認した後、ランパードは早足で教室を出ていく。他の人たちは各自で移動を始める。魔術演習室や武術演習室、図書館等へ行くのだろう。
京翔とルカはそれに続いて職員室へと向かった。
職員室の扉をノックする。中から「どうぞ」という声が返ってきたので扉をあけて中へ入る。中は教室サイズであるのにランパード以外に2人の教師らしき人が居るだけで閑散としていた。
「閑散としていてびっくりしたかい?昔はいっぱいいたんだけどね、今は戦争の方へ駆り出されてしまっているんだ」
「戦争?どことですか?」
「そりゃあ空の国の翼人と水の国の海人に決まってるだろう。戦場は複数あるから実際の場所がどことは断言できないけどな。まあ、どこにいてもそうそう死ぬ奴らではないよ」
ランパードは少し昔を懐かしむような顔をしている。最初に着いたポル、ギルド協会の雰囲気、今考えれば笑顔の裏に少し殺伐とした雰囲気があった気がする。ランパードが最初にふざけたような挨拶をしていたのもそのような雰囲気を紛らわせるためなのだろうか。そして昨日のテストの問題も戦争を想定したものだとしたら…
「僕たちがなろうとしている冒険者からも戦争に行かなければならない人が出てくるのでしょうか?」
「…そうだね。冒険者ギルド、傭兵ギルド等の戦闘職の一部には戦争へ向かってもらっている。ただ、新人の場合は余程のことがない限り各地の町や都市の周りに発生した魔物を討伐するようになる。どうだい?怖気づいたかい?」
「いいえぇ、そんなことはないですよぉ。僕には目標がありますしぃ」
京翔は怖かった。今すぐ逃げ出したかった。けれど…
「やめることはできない。ですよね。」
「そうだ、ここに来た以上最低限の戦闘技術を身に着けることが必要だ。戦況が劣勢でな。少しでも戦力増強としてこの絶対に安全な空間、場所がある。」
魔法が存在する世界だ。絶対安全と断言している以上別の空間にあるのだろう。出るためには卒業条件を満たす必要があるのだろう。
「この状況だ、君たちを含め全生徒には魔法学、戦術学及びその演習以外は自習という形で学んでもらっている。この学生証が鍵となっているから自由に出入りしてもらっていい」
そう言うとランパードは二人に金属製のプレートを手渡した。銀にかがやくプレートには名前らしき文字が刻まれており、裏は幾何学模様が描かれていた。
「それではよい成長を期待しているよ。」
ランパードに見送られて職員室を後にした京翔とルカは図書館へと向かうことにした。
図書館は先ほど受け取った学生証をドア横にかざして中へと入ることができた。
中は外見からは想像できないほどに広く、円形状の部屋一面の書架だけでなく、宙に浮いた書架まで存在していた。
「これはぁ、広すぎませんかぁ?天井まで五十メートルはありそうですねぇ」
「とりあえず、そこら辺の本を適当に読んでみるか」
二人は3時間後に入り口で落ち合うことにしてそれぞれ適当な本を読み始めた。
京翔が手に取ったのは白い背表紙の本であった。
しかし、京翔は失念していた。自分が文字を読むことができないことを。
そのまま本を開くと京翔の目のまえは真っ白になった。




