前夜
色々あったが、明日に備えて早めに休むこととなった。
「いよいよ明日だな…」
「ああ、明日で全てが決まるんだからな…」
走と正一は、自分達の場所に戻っている。
辰馬と鹿川は、念の為にとって武器の最終確認をしている。
「万が一、暴発でもしたらシャレにならないからな、念には念を入れとかないと!俺はいいから、皆は先に休んでてくれ。」
と、言っていた。最後までも責任感の強い男だ。
そんな中、何処かから楽しそうな声がしてきた。
「へぇー、神門さん彼氏いるんだ!」
「まぁね!てかさ、神門じゃなくメグでいいよ!ワタシも、お二人のこと有希子先輩・登紀子先輩って呼ぶから!」
「そう、そんじゃあメグ!」
「いきなりすぎでしょ登紀子!」
「ノープロだって先輩!」
新堂姉妹と恵美に巳兎、更にカエデが署内の一室を利用して話していた。
「何してんだよ皆して⁉」
「あっ、走によっちゃん!まあ軽い女子会みたいなものよ!」
「女子会ね…」
「これがここでの最後の夜かもしれないから、思い出作りみたいな感じでね。」
「思い出作り⁉こんな時にか?」
「こんな時だからこそよ!」
「まあいいが、ところで神門さん、さっき新堂さん達を先輩って読んでたけみたいだけど…」
「えぇ、実は神門…いえメグさん、私達の通ってる高校の後輩だったんです!」
「えっ、マジか!」
「そっ、あたし達は知らなかったけどね!」
話によると新堂姉妹は、性格は真逆だけど仲のいい双子の姉妹として、通ってる高校では有名人らしい。なのでひとつ下の学年の恵美も2人のことを一方的にだが、知っていたのだった。最も、恵美自体も明るく元気で、友達も多い有名人の1人ではあるが、学年の違う2人は知らないでいた。
その後もアレコレと会話に花を探す彼女達。走達は完全に蚊帳の外だった。
「緊張感が感じられないな…」
「全くだ…」
「させといてあげて!」
「「カエデ!」」
蚊帳の外状態の2人にカエデが話しかけた。
「さっきも言ったとおり、こんな時だからこそ、させといてあげて。彼女達、元気そうに見えるけど内心はそうでもないのよ。嫌なことを沢山見て体験して、女の子らしい化粧したり、美味しいスイーツを食べ歩いたりとかも出来ず、そうとうストレス溜まってるはずよ。それでも、それは自分だけじゃない、皆そうだ、亡くなった人達の分まで生きなければ、そうやって自分を奮い立たせてるのよ。」
「カエデ…」
「それにこの作戦だって、成功する保証は無いんだから。もしかしたら、明日の今頃は…」
「……」
「彼女達もそれは重々承知のはずよ。でも皆を不安にさせたくないから、必死に明るく振る舞ってるのよ。だから、今は楽しませてあげましょ!」
「そうだな!」
「ああ!」
そう言って走達は盛り上がる彼女達を暖かく見守った。
「で、先輩達は好きな人とかいるんですか?」
「えっ、好きな人…私は別に…」
「あたしも特にいないなー!同世代は皆、子供にしか見えないし!ココにいる人でだったら…辰馬さんかな!」
「えっ、辰馬さん⁉」
「そっ、イケメンで性格も申し分ないし、何より収入!マンションよ管理人何でしょ⁉なら収入も安定してそうでしょ!あ~あ、嵐子さんがいなけりゃツバ付けとけたのになー!」
「…先輩…」
「ちょっと登紀子…」
「何?」
「う、後ろ…」
「へ、後ろ?」
登紀子が後ろを振り返る。すると、
「!ひっ‼」
そこには、先程まで大人しかった辰馬の妹、巳兎が鬼の形相で登紀子を睨んでいた。
「み、巳兎ちゃん!」
「登紀子さん、今の発言聞きづてならないんですが!」
「へっ…」
「辰馬お兄ちゃんにツバ付けるとか…それに収入って…お金目当てでお兄ちゃんに近づこうという魂胆で!!」
更に凄みの増す顔でにらみつける巳兎。その迫力に、登紀子は涙目になっている。
「ちょっと巳兎ちゃん、ステイ!ステイ!登紀子先輩も本気じゃないよ!ですよね⁉」
巳兎をなだめる恵美。
それに対し、登紀子もコクコクとうなずく。が、
「ふーん、本気じゃないと…とてもそうとは、思えませんけど‼…」
殆ど焼け石状態だった。
巳兎は更に登紀子に詰め寄る。一触即発寸前だ。
暖かく見守ろうと思っていた走達も、
「おい、あれは止めたほうがいいんじゃ…」
「言われるまでも!」
と、止めに走るカエデだった。
この後、一同が巳兎をなだめるのに、そうとう手こずったのは言うまでもないことだった…
以降、「巳兎の側で恋バナは禁止!」「するにしても、辰馬の名は出さない!」といった暗黙のルールが出来たとか…




