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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
第一章 始まり
9/202

喧嘩するほど仲がいい

 結局、途中で信号に引っかかったりして、走は待ち合わせ時刻ギリギリに到着した。待ち合わせ場所のコンビニの駐車場にはよく知る2人の男女がいる。

 その2人に向かい、


 「よー待たせたな。フー、間に合った…」


 走は息切れした声を出しながら親友達と対面した。

 

 「おう走!あの日以来だ。なーに丁度今が待ち合わせ時刻だ。」

 

 正一は気にしてる素振りもなく答えたが、横にいる女性は不満顔だった。


 「走!相変わらずね。二十歳にもなって、もう少し余裕持って行動しなさいよ。」


 と走達幼馴染みである3人組の紅一点であるカエデが、説教じみた口調でいった。ショートヘアで少々ボーイッシュ風なカエデは気が強く、走と衝突することも珍しくない。


 「かー相変わらず口の減らない女だなカエデ。少しはおしとやかにできねーのか?」

 「大きなお世話よ。だいたいあなたは…」

 「おいおい、又出会い頭に口喧嘩か、勘弁してくれよ…」


 正一は呆れ顔で愚痴った。

 走とカエデの喧嘩は出会った日から度々行われており、もはや数え切れないくらい行われた。正一も以前は仲裁に入っていたが、最近ではただ傍観している事が多い。止めるだけ無駄だと悟ったのだ。「それにつけてもこれでよく15年近くも友人として付き合いが続くよ」と正一は幾度となく感じた疑問を、今日も感じた。「喧嘩するほど仲がいい」という言葉があるが、この2人はどうなんだ。正一はこの事を長年考えているが未だ結論は出ないでいる。

 叫び疲れたのか、2人が静かになると正一。


 「気が済んだか?済んだなら行こうぜ。」


 と2人を呼んだ。

 走とカエデが正一の顔を見た後互いに顔を合わせ、ふんとでも言ったかのように顔をそむけ、正一の元に集合した。

 3人は正一の車に乗り込んだ。ドライバーは車の持ち主の正一、助手席に走が座り、後部座席にカエデが座り、シートベルトをした。

 そして正一がハンドル横に刺したキーを回しエンジンをかけた。エンジン音と共に、カーラジオからアイドルグループの歌が聞こえた。が、走達は3人共特に興味のないグループだったので、正一がチャンネルを回した。これと言っていいのが無かったので、無難にニュースに落ち着いた。ラジオはよくある強盗事件を報じていた。

 それからまもなく、車はコンビニの駐車場を後にして、出発した。

 車で行こうと決まったのは、LINEでの打ち合わせでだった。正一とカエデは電車でも問題なかったが、走にとって電車代も結構な負担だった。自転車では時間も体力までかかるので、車も免許もある正一の運転で行くことになった。

 二十歳で車持ちとは贅沢な気もするが、あいにくこの車は、正一の親戚の叔父が買い替えの為、手放す品をタダ同然で譲り受けた物だ。譲り受ける前にメンテナンス等はしてあるが、よく見れば所々に傷や凹み等を直した痕があり、メーターも二周り近くは行っている有様なのだ。

 そんな車だが、走は羨ましく感じている。経済的な事情で免許が無く自転車を愛用している走には、マイカーというだけで贅沢な代物だ。

 本来なら、大学に通いながら今頃はバイトして原付くらい手に入れてたのかもしれない走は、正一に初めて見せられた時少しは妬ましく思っていたのだ。

 出発して十数分後、カーラジオから新たなニュースが聞こえてきた。


「今朝未明、大阪の〇〇市の池の辺りで女性の変死体が発見されたました。死体は体内の血液が殆ど無く、ミイラ化していて警察は、先週から立て続けに起きている連続不審死事件と関連付けて捜査をしていると発表しました。続いてのニュースです。政治家の………」

 「またか、これで6件目じゃないか…」


 正一が運転しながらつぶやく。


 「また?何だよ同じ様なこと起きてんのか?」


 走が呑気に聞いてきた。

 すると後部座席から


 「先週から騒ぎになってるでしょ、知らないの。」


 とカエデが呆れたように答えた。


 「先週お前のアパートで会った日に、県境で見つかってから、立て続けに起きてるらしいぞ。」

 「あの日からか!」


 そう言えばあの日、正一が帰った後のテレビニュースでそんな事をやっていたなと、思い出した。

 平和な日本なんて嘘だなと感じたあれかと、その時のことが蘇った。


 「6件とも発見場所は大阪を中心に、京都・奈良の方でも見つかってる。遺体は男女問わず共通点は体内に血液が殆ど残っておらず、ミイラ化した状態になっているらしい。」


 正一が事件を簡単に説明した。

 

 「うーむ。」


 走が考え込んでいる。


 「何、珍しく真面目な顔しちゃって。」


 カエデが後部座席から走の顔を覗き込見ながら言った。


 「この事件、俺の推理によると犯人は…」


 走はまるで推理漫画の探偵の様にもったいぶった口調で話し始めた。


 「犯人は⁉」


 2人が聞く。


 「吸血鬼かもしれないな。」


 走が答え、


 「吸血鬼?」


 カエデが呆気に取られたように発し、


 「吸血鬼ってフィクションに出てくる血を吸うモンスターのことか?」

 

 正一が質問した。


 「そう、その吸血鬼だ。大阪には海があるから、海外から日本人の血を目当てに密かに来日し、そして、例の日から夜な夜な人を襲い、血を吸いつくし、遺体は適当に捨ててるって…そんなわけねーよな」

 「当たり前でしょうが、吸血鬼だなんて非現実的よ。相変わらず子供ね…」


 軽いジョークのつもりで言った走だが、カエデの態度に対し腹が立ち少しムキになった。


 「そんなのわかんねーだろが。なー、よっちゃんはどう思う?」


  走の質問に正一は


 「そうだな…心配なら十字架とニンニクを絶えず持ち歩けばいいんじゃないか⁉」 

 「あー信じてねーな。」 

 「当たり前でしょうが。」


 カエデが呆れ半分でつぶやく。

 そんな事を話している間に、一行は目的地近くに到着した。


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