到着
蚊に警戒しながらも、足を動かし続ける一同。
「皆、もう少して目的地の警察署だぞ!」
「そこを曲がってすぐだ!」
「やっとか…」
もう間もなく着く。そう聞き早くも安心する者がいる。
がそんな中、
「最後まで油断は禁物だ!今の大阪は、何処に蚊が潜んでるか解らんのだからな!」
と、高倉が折角静まりかけた心を、再び動かす様に注意を促した。
彼の言うとおり、今の大阪に絶対安全と言える場所はない。不安な気持ちにさせたくはないが、少しでも犠牲者が出て欲しくないという、気持からの発言だ。
「脅かすなよ…」
「でも高倉さんの言うとおりだ。今の俺等は、常に死と隣合わせなんだからな!」
「嫌な事言うなよ…」
「事実だ!」
等と言ってる内に、ようやく着いた。
トラブルで遅くはなったが、桜島達との合流予定地点に来ることが出来た一同。
「やっと着いたな…」
「あぁ…脱出までまだまだあるってのにな…」
彼等が隠れ家にしていた地下からこの警察署までは、歩いても大した距離ではない。しかし、途中で巨大な蚊と遭遇し足止めを食った。その上、犠牲者が早くも出ている。それが彼等を肉体的だけでなく、精神的にも疲労させていた。
一同が着いて間もなく、警察署の正面の入口が開いた。
そして開いた入口から、若者数名が姿を見せた。当然のように、重火器や鉄パイプ等で武装している。
今の大阪では当然だが、警察署とい場所から彼らの出で立ちが、より一層不釣り合いに見えた。
「おー、えぇっと我々は…」
高倉が代表して話出した。が、若者達は
「挨拶なんていらねーよ!」
「辰馬さんから話は聞いてる!早く入ってくれ!」
そう言って急かすように、彼等を警察署内に招いた。
「そうか、よし入ろう!」
と、高倉が言おうとしたが、言い切る前に、既に何名かが入口に詰め寄っていた。
それに続くように次々と入口に吸い込まれるように入って行く。ちょっとした人波が出来ていた。
人波が途切れると、
「大石くん近松くん、君達で最後かね?」
「ハイ!僕等で最後です!」
リーダーらしく、入るメンバーを誘導していた高倉と三船、そして後方で蚊に警戒していた大石と近松。
「よし我々も入るぞ!」
「ハイ!」
彼等もようやく、警察署内に入った。
途中で1人の脱落者が出たが、何とか最初の目的地に到着し、作戦の第1段階は遂行出来た。
「フー…」
「あぁ、大した距離歩いた訳じゃないのに、スゲー疲れた気がするぜ…」
「警察署に来るなんて、今年の初め頃免許の更新依頼だ。」
等と口々にボヤいている。
「久々だなココも。」
「そうそう、ココで桜島さん達と合ったんだよな…」
「あの時は銃を目当てで来てけど、今度は別目的で来る事になるとは、思わなかったな!」
と、走達もここに来た時の話を咲かせている。
そんな時、懐かしい声がした。
「よっ、暫く!」
「あっ、桜島さん!」
ここのリーダー的存在である、桜島辰馬がやって来た。
横にはスカジャンを羽織った、鬼童町嵐子もいる。
「嵐子さんもお久し振りです!お元気でしたか?」
「えぇ、アンタ達こそ怪我とかない?」
「お陰様で、この通りピンピンしてますよ!」
「それは何より!」
「そうだ、幼馴染みのカエデっす!嵐子とは会うの初めてでしたね?」
「どうも、冬樹カエデです!」
走達は久々の再会の桜島達と軽く挨拶を交わした。
それから、
「さてと、挨拶はこの位にしておいて、高倉さん…」
「あぁ…」
高倉は地下のメンバーに体を向けた。
「皆、ここにいる桜島くん達と協力し、いよいよこの大阪からの脱出をはかる訳だ!」
そして、少しためてから、
「だが、本番はこれからだ!ここから先今まで以上に危険を伴う、気を引き締めくれ!」
と発した。その言葉にその場の空気が固まったのを皆が皆感じた。