釘戦車
「みっ、三船さん!」
「なんすかそれは⁉」
唐突に得たいのしれない物を操りながら現れた三船達に、走達が軽く困惑していると、新手の蚊がやって来た。
「説明は後だ!」
そう言うやいなや、コントローラーを操作する三船。
小型の戦車の砲口が蚊の方に向いた。そして、
「ファイヤー!」
そう叫ぶと三船がコントローラーのスイッチを押した。
すると砲口から砲弾ではなく、細い針状の物が次々と発射された。
発射された物は蚊に命中し、蚊はそのまま先程と同様、墜落した。
墜落した蚊を離れた所から見る走達。
「細い針みたいなものが、沢山刺さってるぞ!」
「あれは…針じゃない、釘だ!」
そう、墜落した蚊に刺さっている物、それは釘だった。
戦車の砲口から発射されたのは、木材を組み立てる時などに用いる釘だ。それも、丑の刻参りでワラ人形に刺しているような五寸釘みたいにゴツい物だ。
「見たか!釘戦車の力を!」
と、自慢する様に言う三船と、それを見る一同。
何と言えば良いのか分からず困惑している。
一方、残りの蚊は、危険を察したのか離れた所に留まっており、それ以上、近付いて来る気配はない。
そして暫らくすると、去って行った。
「逃げてくぞ!」
「とりあえず、一安心だな!」
「ああ、しかし助かりましたよ三船さん!」
「この位、なんてこと無い!」
そう言いながらも、少し自慢げな三船だった。
「で、それは一体?」
「おホン、これはな…」
わざとらしく軽い咳払いをした後、三船が説明に入った。
先程も言ったが、この小型の戦車の名は「釘戦車」。
三船が趣味の一環で作った物で、砲口から釘を飛ばす事が出来る。
何年か前にテレビでネイルガンで釘を飛ばし、板に絵を描くのをやっていて、それに触発されて作ったのだとか。内部にネイルガンを仕込んでおり、軽く数メートルは飛ばせるのだ。
説明を聞いて、
「スゲーな!」
と、走等一部は感心したが、
「なんて危ない物を…」
「物騒な代物だ…」
と、否定的な者が過半数だった。
最も、当の本人も、
「あぁ、勢いで作ったのはいいんが、自分でも危険だと思ってな、ずーとしまい込んていてんだよ、下手すりゃ、警察に捕まりかねないからな…」
「勢いでこんなの作るなよ…」
「でもまさか、役立つ日が来るとは、自分でも思わなんだよ!」
と、再び自慢げな三船。
その様子を見て、
「この人は1度捕まった方が、世の中の為なんじゃないか⁉」
と、その場の何名かが思ったのだった。
そんな中、
「三船さん、調達して来ました!」
「うん、ご苦労さん!」
中年の男が箱を運んで来た。箱は5箱程で、小さいが、運んでいる男の様子からして重そうだった。
「それは⁉」
「弾だ!」
「釘!」
「そう、テレビゲームみたいに、無限に撃てるわけではないからな、補充せんと撃てん。撃てなければ、ただの邪魔な荷物だ!」
「そりゃそうだけど、その釘は何処から、まさか…」
「あぁ、この辺には金物屋も何軒かある、そこからな…」
「やっぱり…」
「非常時だやむを得んよ。それに、この辺一帯の店の関係者とは顔馴染みだ!分かってくれると思うぞ!」
そう言うと三船は釘の箱を開き、釘戦車に装填した。
「三船さん、釘の大きさや向きがバラバラですよ⁉」
「心配ない!自動的に向きを揃え、大きさに関わらず撃てるように出来とるのだ!因みに動力は電気で、充電式の上、本体のソーラーパネルで自動充電する仕組みだ!」
と、力説する三船。
それを聞き、
「ヘェ~!」
「実用性は兎も角、よく出来てるな…」
「無駄に性能はスゴイな…」
「どういった仕組みなんです?」
そんな感じに、先程感心していた者だけでなく、否定的な意見の者達も、釘戦車の性能に感心し始めている。
無論、全員男達だった。何歳になっても男はこういった類の者が好きなのだろう。
反対に、冷ややかな目を向ける女性陣達…
女性陣の目線に気付いた高倉が、
「それはさて置き、先を急ごう!」
と、仕切り直した。
隠して、再び歩き始めた。
目的地の桜島達の待つ警察署は、もう目の前だった。
今年もこんな感じで、ほそぼそと連載しますのて、よろしくおねがいします。