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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
作戦開始
80/205

モールス信号

 「急げ!早く隠れろ!」

 「慌てるな!慌てず騒がすにだ!」

 

 それぞれ店にある商品棚やレジ、立て看板に身を潜めた。中には隠れる場所にあぶれて、トイレやゴミ箱に隠れた者もいる…


 「ここは俺の場所だぞ!」

 「俺が先だ!」

 

 当然のように、隠れ場所を巡って小競り合いをする者もいる。


 「騒ぐんじゃない、見つかるだろ!」

 「そうよ。何処でもいいから隠れるのよ!」

 「非常時にわがまま言うな!」


 と、他のメンバーにいさめられ、渋々場所を譲るなんて光景もしばしば見られた。

 そんなこんなで、各自が近くの店舗に身を隠し終えた。

 隠れ終えてから、それぞれ外の様子を伺う。


 「よっちゃん、どうだ蚊の様子は?」

 「あの辺を飛んでいる。コッチに気づいてはいないみたいだが、油断はできないぞ!」

 「このまま通り過ぎてくれればいいんだけど…」


 廃墟同然のコンビニに身を潜めた走達。

 一緒に高倉と剣持等もいる。


 「どうします高倉さん?居なくなるまで待ちますか?」

 「そうしていところだが、そんな事してたら、何時になるかわからない。桜島くん達との合流が遅れるしな…」

 「でも、強行突破は危険です。蚊も近くで待ち構えているかもしれないし…」

 「そうだな…とりあえず、コレで他の場所にいるメンバーに連絡をしてみる。」


 と、高倉は懐中電灯を取り出した。


 「そんな物でどうするんですか?」

 「まあ見ててくれ!」

 

 そう言うと高倉は、向かいの店に懐中電灯の光を放った。

 すると向かいの店に隠れているメンバーが、光に気付いた。

 そして高倉は、懐中電灯を少しづつ動かしながら光を付けたり消したりを繰り返した。


 「そうか!モールス信号か!」

 「そういや習ったな⁉」


 そう、地下で避難していた彼等は、非常時に備えモールス信号を習っていたのだ。

 蚊が近くにいて声を出せない。等と言った事態を想定し、モールス信号を覚えておく事としたのだ。

 皆に教える講師となったのが他でもない、村雲の老人だ。戦時中、戦艦に乗っていた彼はモールス信号を習得していた。年ながら頭はしっかりしており、信号の一覧を書き出し、信号の覚え方を高倉達リーダー格達に教え、更にそれを高倉達が皆にレクチャーしたのだ。


 「戦時中、通信兵をしていて、必要だから覚えたんだが、まさかこんな事で役立つとはな…」


 と、村雲は呟いていたという。


 「モールス信号に詳しい人がいると聞いてはいたが、それがあの村雲のじいさんだったのか!」

 「まさか本当に役立つとは…」

 「まさに、備えあれば憂いなしだな!」

 

 と、走が先程と同じ様に自慢げにしている。


 「何言ってんのよ、走。アンタ、全体の3分の1と覚えれなかったでしょうが!」

 「うっ…」


 レクチャー後、暫くしてから、皆がどれだけモールス信号か身に付いているか、テストを行った。

 

 テストの結果

 紫苑・ブライアンは共に満点。

 正一・有希子・大石等も十分合格ラインを超えていた。

 カエデ・剣持は及第点。

 走・登紀子・近松は赤点……


 といった結果だった。

 元々の学力の差が、ハッキリと出ていた。


 それはさて置き。


 「よし!」

 「あっ、どうでした高倉さん。」

 「向かいの連中とは連絡が取れた。一先ず、無事らしい。他の店にいる連中にも、コンタクトしてみる。」


 そう言って高倉は、斜向いに向けて信号を送り出した。

 邪魔にならないように離れている走達。

 

 「クソっ、早くも足止めか…桜島さん達との、待ち合わせ時間まで後どれ位だ、よっちゃん⁉」

 「後…30分位だな…」

 「‼ちょっと見て!蚊が増えてるは!」


 外を見ていたカエデが抑えた声で叫んだ。

 カエデの言うとおり、先程まで2匹だった蚊が4匹に増えていた。


 「いつの間に…」

 「まじかよ…居なくなるどころか増えやがった!これじゃあ、ますます進めないぞ!」

 「う~んどうするか…」


 連中を取り終えた高倉が会話に混ざった。が、現状を打開するアイデアは出て来ない。

 強行突破するか!と考えていた。そこへ、


 「高倉さん!」

 

 店の奥から別の声がした。声の方に顔を向けると、


 「私です!」

 

 別の場所に居るはずの紫苑が現れた。


 「齋木さん!何でココに⁉」

 「隣の店舗に隠れてたんですが、ココから高倉さんの声がしたんで、裏から回って入ったんです。」

 「聞こえたって…よく聞こえたな!そこそこ離れてるぞ!」


 高倉が驚いていると、紫苑は手に持ってる機械を見せた。


 「これのおかげです!」

 「それは?」

 「集音器です!コレで音声を拾いました!」


 と、淡々と答えた。手には、心電図の様なグラフが映し出された液晶パネルと、マイクらしきものが付いた機械を持っていた。


 「そっ、そんな物まで持ってたのかね…」

 「研究用です。まぁ、それは兎も角…」


 紫苑は相変わらず、マイペースに話しだした。


 「うまく行けば、あそこにいる蚊を追い払えるかもしれません!」


 と、紫苑は宣言した。


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