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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
第一章 始まり
8/202

手料理

 セリフより説明文が多いけど、ご了承下さい。

 そして時は流れ、亀山に行く約束の木曜日になった。

 約束の日の朝。走はアパートで1人朝食をとっている。朝食といっても、温めたご飯と納豆という簡単なものだ。走は普段から朝は至って簡単に済ませている。漬物だけの時もあれは、味付け海苔だけ、又は卵かけご飯だけの時も珍しくない。今の走にとってそれが普通のことだ。


 しかし、ここ数日走は食事の度に実家を懐かしんでいる。というのも、先週親友の正一に会いタイムカプセルを掘り出しに行く約束をした日からだ。両親を思い家を出て、最初は寂しさを感じていたものの、すぐに慣れ気ままな1人暮らしを送っていたが、あの日から母の作る料理を懐かしく感じ始めた。正確には、懐かしむ事はたまにあったが、最近懐かしく感じる事が一層強くなった。幼少期を思い出したのが原因だろう。正一とカエデが夏休み内に泊りがけで遊びに来た日、3人で母の手料理を食べた。見栄を貼ったのだろう、いつもより豪華な品々に正一とカエデは舌鼓をうっていた光景をあの日の夜、夢で見て「そんな事もあったな、普段あんなの食卓に出たことないのに」と走はますます懐かしんだ。

 

 母の手料理を食べることが当たり前になっていた走だったが、その当たり前が終わりを迎えるときが来た。高校卒業し、家を出たからだ。元々大学の寮に入る予定だったので、終わる事に変わりはないが、バイトに性を出しすぎて一度も家に帰れてない為、ここ2年程母の作る料理を口にしておらず偏った食事ばかりなので尚更だ。


 「そういえば最後に母さんの料理を食べた時には、もう使ってたなこの箸。確か親父が失業する前の年の正月からだったな。」

 走は愛用の箸を見ながらつぶやいた。使い古したその箸は、走が実家から持ってきた数少ないものだ。箸以外は服や身の回りの品数点を持ってきたのだ。今のアパートはあまり広くなく、引っ越し代も無いので殆ど実家に置いてきてしまったのだった。そんな中箸は、両親と揃いの品で皆同時におろし、家族での食事の時は常に一緒だった為、家族の思い出を感じさせる数少ない物なのだ。


 走がしみじみしていて、何気なく付けていたテレビの左上に表示されている時間に目をやると、

 「‼やばっ、もうこんな時間かよ。待ち合わせの時間に間に合わなくなっちまう。」


 走は急いで残りを口にかき込み、納豆のパックをゴミ箱に捨て、台所で箸と茶碗を洗い、出かける準備を始めた。


 「二十歳にもなって遅刻したら又カエデにネチネチ文句言われちまうぜ。あいつうるさくお節介な奴だからな。」


 などと言ってる間に着替え終え荷物を入れたリュックを背負い戸締まりをして、正一達との待ち合わせ場所に向って走り始めた。向かっている最中、走の頭の中で、

 「そういえば来週のバイト、2連休の休みあったな。良い機会だ久々に実家に里帰りでもすっかな。メールのやり取りはしてるけど久々に会いたくなったな。何より母さんの手料理が恋しいしな。よし、そうしよう、思い立ったが吉日って言うしな。後でメールしとこ。」

と早くも来週の休日の予定を決め始めた。


 走はテンションが上がって内心ウキウキしながら道を急いだ。これから親友達に合うのももちろん楽しみには違いないが、今走の頭の中は来週の里帰りの事を考えて一杯だったのだ。


 しかし、その来週の里帰りは行われないことを走はまだ知らない。いや、これから日本を最悪の事態が襲うことになる事を全世界の人々はまだ知る由もないないのだった。ただ1人ある人物を除いて…

 

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