作戦決行
遂に作戦決行の時が訪れた。
高倉が皆の前に立ち、
「皆いよいよ作戦決行だが、準備はいいかな?」
全員を見渡しながら言った。
それに対しその場にいる全員が、軽くうなずいた。
「よろしい。それから、前にも言ったと思うが、武器や食糧等、必要な物以外の荷物は極力置いていくように!」
「余計な荷物はいざという時、邪魔になる。どうしても持って行きたい物だけにするんだ!」
三船が補足するように説明を挟んだ。
「選ぶ時間は十分あったはずだ。辛いかもしれないが、恐らくここに戻る事は無いと思った方がいい。」
高倉達が言う様に、彼等は殆ど荷物らしい物を持ってはいない。
剣持の刀を始め、角材・鉄パイプ・スコップ、棒の先に包丁やナイフを付けた即席の槍等、いざという時に蚊と戦う覚悟のある者達が持つ武器類。
戦う覚悟のある者以外は、食糧を。
御子柴等、一部の者は最低限怪我の手当てが出来るよう、医療品を持っている。
それ以外は、辰馬達との連絡用の無線機を高倉が。そして、各自がどうしても持って行きたい物。
これらが、主に彼等が持っている物だ。衣類などは無い。今着ているものだけだ。
どうしても持って行きたい物は各自様々だ。離れ離れになり、長い事顔を見ていない家族や友人・恋人の写真を持つ者。主に御子柴・大石・その他の既婚者等。
新堂姉妹は揃いの御守。
ブライアンはFBIのIDカードと、日本で調査した事の記録を纏めた記録媒体。この調査の為にために日本に来たのだから。なんとしても本部に持ち帰らなければならない。帰れなくとも、せめてデータだけでもネットで送らなければならないというのが、理由だ。
紫苑も地下で行った研究データの媒体を持っている。彼女にとって、研究データを置いていくのは、苦痛だからとのこと。
そして、
「いよいよだな…」
と、角材を強く握りしめ、緊張を隠せないでいる正一。
「あぁ、緊張してるなよっちゃん…」
「当たり前だろ…」
「そりゃそうだ。ゲームと違ってコンティニューは出来ない。失敗=死だからな…」
と、走も武器として持っているスコップの先の方を右肩に乗せながら言った。そう言う当の本人も、緊張しているのだった。
「ところで走!アンタ何だってスコップを武器に選んだの?」
と、自身は即席の槍を手にしたカエデが質問した。
正一=角材
走=スコップ
カエデ=即席の槍
これが走達3人かそれぞれ選んだ武器だ。
「何でって…強いて言えば…何となくだ!」
「何となくって…アンタね…」
「いやホント、なんつーか、ひと目見てコレだと、俺の直感が働いたんだよ、そうカンが!」
「何よそれ…」
「まぁまぁ、そう言えば、桜島さんも持ってたなスコップ!」
「だろう⁉なんで持ってるのか聞いたら、武器として持ってるって言ってたぜあの人。例の銃は、いざという時だけ使うようにしてるってさ。」
「してるってさって、アタシその桜島さんの事よく知らないから、なんとも言えないけど…でも、スコップなんかで戦えるの!基本的に、穴を掘る道具でしょう⁉」
「いやカエデ!スコップはバカにできないぞ!軽くて丈夫だし、先も尖ってるから、十分武器になるぞ!」
と、正一が説明した。
そう、スコップは刺してよし、斧の用に使ってよし、そして平たい面を利用して防御にも使えたりと、様々な使い方が出来、武器としても優れているのだ。
等と走達が内輪で盛り上がっていると、
「あのー、皆さん…」
と、有希子が話しかけて来た。その横には登紀子もいる。
「あら有希子ちゃん!どうしたの?」
「他の人達は、移動し始めてますけど、行かないんですか⁉」
「えっ⁉」
「あっ!本当だ…残ってるの俺等だけだぞ!」
有希子が言う様に、他の人達はゾロゾロと移動し始めている。
してないのは走達位だ。
「いっけねー!遂話に熱が入っちまった…」
「俺等も行こう!」
そんな感じで、少し遅れながら走達も、移動しだした。
かくして、大阪脱出作戦は決行に移されたのだった!