信じる理由
「それは兎も角、ブライアンさん、本当に信用していいんだろうか?」
「確かに、何処まで本当の事を言ってるか分からないからな…」
「FBIのIDカードは本物ぽかったぞ!」
「いやそれだけじゃ、本当のFBI捜査官と断定出来ないぞ。偽造カードかもしれないし。」
走達がアレコレと考察している。
「私は本物の捜査官だと思うは!」
と紫苑が断言した。
「齋木さん!その理由は?」
「データを見せながら少し話をしたけど、どうも嘘を付いてるように感じなかったの。言わば、感よ!」
「かっ、感⁉」
「そうよ。私は生物学を専攻してて、これまでに沢山の動物を見てきたは。人間以外の動物は嘘をつかないでしょ⁉人間以外の動物は嘘を付かず、本能のままに生きてる。そんな姿を沢山見てきたは。だから何となく分かるのよ、この人は嘘は付いてないってね!」
紫苑の主張に一瞬、皆が黙り込んだ。
「そっ、それだけ??」
「そんな理由かよ…」
紫苑の自分達とズレた考えに、皆が皆、困惑している。
しかし、一人だけ賛同する者が出て来た。
「わ、私もブライアンさんを信じます!」
新堂姉妹の姉、有希子だった。
「えっ!ちょっ、有希子本気なの?」
妹、登紀子が追求した。
「そうよ登紀子。私もブライアンさんが嘘を付いてる様に思えないの?」
「その心は?」
「私も感なんだけど…」
「また感かよ…」
走が少し呆れた感じで呟いた。
「新堂さん!もう少し具体的に話してもらえるかな?」
大石が訪ねた。
「勿論、ただ何となくって訳じゃありません。根拠…て程では無いですけど、理由はあります。」
そう言うと、有希子は語りだした。
例の事件から間もなく。この地下で暮らし始めた頃。
初めは今までとかけ離れた生活に、困惑していた。陽の光もささず、食べ物もろくに無い環境に、妹登紀子を始め、大石や近松等周りの人々に支えられながら何とか耐え忍んで来た。
そんな地下でのささやかな楽しみの一つとして、ブライアンが祖国での話をしてくれた事が挙げられる。
広大なアメリカの地をバイクで駆け巡った話を始め、仲間とホームパーティーやキャンブをした時の様々なエピソード、ハリウッドでのきらびやかなスター達の姿、オリジナルの自由の女神像と、様々な事を語ってくれた。
これまでに海外旅行をした事の無い姉妹は、テレビでしか見たことの無い光景に胸をときめかせた。
そんな話の最中、ブライアンが、
『この事件が解決し、自由になれたら、いつかの日か自由の国アメリカに来てください。案内しますよ』
と、言ってくれたのだという。その時のブライアンの笑顔を鮮明に覚えている。あれは嘘をついている人間の目ではないと、有希子は主張するのだった。
「私は本心で言ってくれたのだと思ってます。」
と有希子は頑なに主張した。
それに対し、
「うーん、何とも言えないが皆はどう思う?」
「どうって…俺からは何とも…」
走はコメントに困った。が、
「あたしは有希子と紫苑さんの感を信じるは!」
「本気かカエデ⁉」
「えぇ、同じ女として、2人「女の勘」を信じてみるは!」
カエデは相変わらず強気に答えた。
そして、
「新堂さん…分かった。僕も新堂さんの感を信じる見るよ!」
「防がそう言うんなら…俺も信じてみるかな…」
大石と近松も信じる派となった。
「確かに証拠も無いの疑っても仕方がない。使い方が違うかもしれないが、「疑わしきは罰せず」と言うしな。まぁ、何かあったら、その時はその時だ!」
と、剣持も賛成した。
結果、信じる派多数で、ブライアンを一先ず信用することで話は纏まった。
そのまま、その夜は解散となった。
そして更に時は流れ、いよいよ大阪脱出作成を本格的に開始する時が訪れたのだった。