協力
辰馬が照れ臭そうにしていると、彼の懐のトランシーバーが鳴りだした。
辰馬は素早く取り出し、耳に当てた。
「俺だ、何かあったのか?」
そして暫し、話しだした。
それを見ているという走達は、
「何かあったのかな?」
「まさか警察署が蚊に襲われたとかじゃないだろうな⁉」
「おっ、おい、不吉な事言うなよ、大石…」
「でもあり得るわよ…」
「あなたまで、やめてよ登紀子…」
皆が口々に呟いている。そうこうしている内に、用件を聞き終わったのか、
「分かった。すぐに戻ると言っといてくれ。」
辰馬はトランシーバーをしまった。
それを確認してから走達は、
「辰馬さん!何かあったんですか?」
「もしかして警察署が蚊に襲われたとか?」
「私達に出来る事があったら言ってください!」
「そうよ、今度はあたし達が助ける番よ!」
と、矢継ぎ早に辰馬に詰め寄った。
その勢いに辰馬は少し怯んだ。
「あっ、いや、大した事じゃ無いんだ…」
「大した事じゃ無いって…」
「あぁ、アジトのランからだったんだが…」
「ランさんから⁉」
「ココからあの警察署まで結構距離ありますよ?携帯ないざ知らず、トランシーバーの電波届くんですか?」
正一が質問した。言うとおり、今いる地下の隠れ家と辰馬達のアジトの警察署までは結構距離がある。一般的なトランシーバーは通信可能距離は約200メートル程だ。
「例の無線に詳しい奴が改良してな、2キロ位なら楽勝なんだ。」
「へー!」
その場の何人かが、「法律上大丈夫なのか?」と疑問を抱いたが、あえてスルーした。
嵐子はアジトの警察署で留守を任せて来たのだった。その嵐子からの通信が来たのだ。
「で、ランさん何て言ってたんです?」
「それがな…」
「それが…」
皆が息を呑んだ。そして辰馬が口を開いた。
「巳兎が「お兄ちゃん大丈夫なのー!」って騒いでるらしい…」
「はぁ!…」
皆が皆、呆気にとられた。
「だから、妹が騒いでるらしいんだ…」
「巳兎ちゃんがですか?」
「そうだ。あの時は大急ぎで助けに向かったからな。巳兎には、仲間に伝言頼んだだけで出発したからな…」
「それで騒いでいると…」
「あぁ、ツー理由だ!急いでアジトに戻るから、落ち着いたら連絡するんでな!」
それだけ言うと、辰馬は地下隠れ家を後にしていった。
「行っちゃったな…」
「ああ…ところで連絡するって言ってたけど…」
「それはな、これを使ってだよ!」
後方から聞き覚えのある声がした。
振り返ると、高倉と三船がいた。
「高倉さん、三船さん!」
「これって?」
「これだよ!」
三船の手には、先程辰馬が使っていたのと同種のトランシーバーが握られていた。
「さっき話を聞いていた時、彼から預かったんだ。今後、作戦等の打ち合わせできるようと、連絡用にな!」
「作戦の連絡用⁉」
「ああ、我々の大阪脱出作戦、彼等と協力して行うことにしたんだよ!」
「桜島さん達とですか⁉」
「そうだとも。彼等もな、今の生活にそろそろ限界を感じ始めているらしい。特に小さい子供達がな!」
「それで、我々が大阪を脱出する作戦を立てていると聞き、自分達も手を貸すと言ってきてくれてのだ。」
「ホントですか⁉」
「ああ、ホントだとも!!」
高倉が少々自慢げに話した。
それを聞き、
「それは願ったり叶ったりだな!」
「確かに、人手は多いに越したことはないからな!」
「ああ、あの人達、銃火器を持ってるから、心強いぜ!」
「まさに鬼に金棒、って感じよね有希子!」
「そうね登紀子(正確には金棒じゃなくて銃だけど…)」
脱出作戦に光明が見え、テンションが上がる一同。
そこへ、1人の人物が通りかかった。
「随分と賑やかね!」
齋木紫苑だった。手を洗っていたのか、両手をハンカチで拭いている。そしてあいも変わらず、マイペースな雰囲気だった。
「おお齋木くん良いところに。実は…」
高倉が言い出した。
が、その前に、
「全部聞こえてましたよ。脱出作戦にあの桜島って人と、その仲間の人達も加わるんですよね?」
「なんだ聞こえてたか、それなら話は早い。そういう事なんだよ。」
「人手が増えるのは大いに結構です。それよりも…」
「なんだね?」
「生け捕りにした蚊を調べて、分かった事があるんです。」
「分かった事?何だねそれは⁉」
「それは…」
齋木は少しためてから発した。
「今、大阪を支配している蚊は…人の手で生み出されたものだという事がです!」
彼女の発言に、その場にいた全員が絶句したのだった。




