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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
脱出作戦
54/205

 大石達が臨戦態勢に入った時から、少し時間は坂戻る。

 ほんの少し前。ここは某警察署。

 刑事ドラマに出て来るような、殺人事件等を扱う刑事課や、交通違反を取り締まる交通課を始め、身柄を拘束した被疑者の身柄管理を行う留置管理課等という聞き慣れない課もある。

 本来なら、制服を身に着けた多くの警察官がおり、一般人は落とし物を届けたり、違反切符の出頭、又は免許の更新等の時くらいしか訪れる事のない、基本的に静かな場所だ。

 しかし、今は違う。あからさまに警察官でないと人間達が、屯している。


 「お前等、準備は出来たか?」

 「オッケーっス、辰馬(たつま)さん!」

 「何時(いつ)でもいいッス!」

 「よし、行くぞ!」

 「オーー!!」


 その声の主達は、一斉にパトカー等の警察車両に乗り込んだ。そして、エンジンを掛けた。複数台の車両が一斉にエンジンがかかったので、その場には激しいエンジンが響いた。

 そのまま若い男が乗るバイクを筆頭に車両が走り出したのだった。

 警察署から飛び出した一行は、北上して難波へと向かって行った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 そして時と場所は、再び難波・某百貨店前に戻る。

 蚊に挟み撃ちにされた食糧調達班。地下隠れ家に通じるマンホールが情けない理由で塞がってしまい、退路の断たれ、意を決して臨戦態勢に入っている一同。

 そこへ、警察車両の集団がやって来たのだった。


 「なっ、何だあれは?…」

 「何って…警察車両だろ…」 

 「それは見れば分かる。何でそれが、今、こんな所を走ってるんだって話だ…」

 「まさか警察の助けが来たんじゃないの?」


 カエデが大石と近松の話に割って入る様に、答えた。


 「いや、どうやら違うみたいだよ、冬樹さん。」

 「タシカに、ドライバーは、ニッポンのポリスマンじゃありませーん。」


 ブライアンが言うように、それらを運転しているのは、見た目からして、明らかに警察官でなかった。

 それ等の車両を先導するように、先頭を走るバイクを運転している男は、ジャンパーにジーンズ、そしてスニーカーといった、明らかに警察官、ましてや到底、刑事にも見えない服装だった。無論、私服警官というわけでもなさそうだ。

 後続のパトカーも運転しているのは、金髪にピアス、挙げ句はタトゥーを入れた、あからさまに都会の若者といった感じの人物ばかりだ。

 そして彼等は食糧調達班と蚊の群れの近くに来て、先頭の男が左手を伸ばし、後続車達を静止させた。

 そんな男目掛け、近くの蚊の一匹が飛来した。


 「!マズイは、あの人を狙ってる。」

 「おいアンタ、逃げろ!」


 カエデ達が叫んだ。が、男は少しも焦る様子を見せず、右手を懐に入れ、ある物を取り出した。それを蚊に向けた。そして次の瞬間、大きな爆発音がその場にこだました。

 突然の爆発音に一同は身を強張らせた。


 「なっ、何よ今の音!」

 「ジュ、ジュウセイデース!」

 「銃声!」


 ブライアンの言う通り、それは紛れもない銃声だ。そして、音の出どころに一斉に目をやった。

 男の右手に握られ、黒光りする物。それはリボルバー式の拳銃だった。

 俗に「ニューナンブ」と呼ばれる拳銃が男の手に握られていた。

 そして、銃口の先には先程の蚊が、体に風穴を開けて横たわっていた。

 唖然とする一同。銃を持った男が、そのまま口を開いた。


 「よし、行け!」


 その掛け声と共に、後続車両から次々と若者達が降りてきた。

 彼等は叫び声を上げながら武器を構えた。


 「オラ!喰らえ!」

 「くたばれ、虫野郎!」


 ある者はライフルを発砲、ある者はボウガン(クロスボウ)を発射し、またある者は火炎瓶を投げつけた。

 銃火器の数々に蚊の群れは、一気に数を減らしていった。


 「ちょっと何なのこれは!」


 突然の事態にカエデは、両手で耳を塞ぎながら叫んだ。軽くパニック気味だ。


 「分からないが、助かったのかな…」


 大石も軽く混乱している。するとそこへ懐かしい声が聞こえて来た。


 「おーい!カエデ!」

 「無事かカエデ⁉」

 「走、よっちゃん!」


 それはカエデの幼馴染、山口走と吉元正一(通称よっちゃん)だった。2人が自分の元へと走って来ている。

 ほんの数時間前に別れたばかり。1日も経っていないのに、カエデには数年ぶりの再会のように感じた。

 彼女にとっても、そう思える位、濃い数時間だったのだ。


 本文中の「ニューナンブ」、現在は生産を終了し、別の銃に切り替えられているそうです(今でも現役の所もあるみたいですが…)。

 2021年4月11日追記

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