表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
脱出作戦
51/205

防火シャッター

 全員が、防火シャッターの向こうへと走り、次々と入っていく。そして最後の1人が滑り込んだ。慌てていた為か、入った途端、その場に前のめりに倒れ込んだ。

 時間にして十秒もかからなかったが、その場にいた者達にはそれなりの時間に感じた。


 「よし、これで全員だな!」

 「早くシャッターを!」

 「おう!って、スイッチはどこだ?」

 「そこよ!そこ!」


 カエデが指差す場所に、赤いボタンがプラスチックのカバーで守られるかの様にあり、下には「非常時以外押さないで下さい」と、注意書きがあった。最も、今がその非常時なのだが。


 「よし、これだな。」


 と、1番近くにいた近松がボタンを押そうとしたが、その前に何かがシャッターをくぐり抜けてきた。


 「!うわー、来やがったー!」


 そう、巨大な蚊だ。一同は、蚊の侵入を許してしまった。

 侵入した蚊は、近くにいた新堂姉妹目掛け、一直線に飛来して行った。


 「い、イャー!」

 「くっ!」


 蚊の襲撃に、悲鳴を上げる有希子と、彼女を庇うような体制をとる登紀子。大石と近松の今いる位置から2人は離れていた。


 「新堂さん!」

 「駄目だ、間に合わ…」


 そう近松が叫ぶ最中、姉妹と蚊の間に割って入る人物がいた。


 「2人共、伏せて!ハッ!」


 齋木紫苑だった。彼女はスカートの中が見える事などお構いなしに、蚊の頭を目掛けて、見事な蹴りを入れた。

 蹴りを受けた蚊は、シャッターの向こう側へと転がった。死んではいないが、かなりのダメージだったようで、まともに動けないでいる。

 が、まともに動けない蚊を無視するがごとく、別の複数の蚊がこちらへと向かって来るのが視界に入った。


 「早くシャッターを!」

 「よし!」


 と、近松は防火シャッターを作動させるボタンを、自らの拳で殴りつける様に押した。差し詰めそれは、ボクシングの試合で、相手の顔にストレートを打ち込む様な感じだった。

 ボタンはプラスチックカバーが割れる音がするのと同時に押され、作動し、防火シャッターはガラガラガラと、大音を立てて閉まった。


 「ふー、これで蚊はこっちに来れない。一安心だな…」

 「そうだな…」


 一同は束の間の安心を感じた。

 新堂有希子は先程の礼を言おうと、齋木に近寄った。

 彼女はシャッターの近くでしゃがみ、そして、その場所の匂いを鼻で嗅いでいた。


 「齋木さん、どうしたんです?」

 「アロマの匂いは、ここ迄来てるわね。」


 彼女の言うとおり、アロマの匂いは、防火シャッターで塞がれてもキツイ匂いを残していた。


 「どうやら、匂いでは一瞬怯ませる位は出来ても、完全に追い払う迄には行かないみたいね。」

 「確かに、皆身体にもアロマを付けたけど、襲って来たからな…」

 「奴等に対して匂いは、対策として不十分みたいだな。」


 齋木と大石等が難しい顔をしている。その場の空気が固くなった。が、またも、そんな空気をぶち壊すかのように、


 「まーまー、ミナさーん。ヒトマズたすかったんだから、よしとしましょー!Are you OK?」


 と謎の外国人ブライアンが発した。流石外国人だけあって、最後の方はかなり綺麗な発音だった。

 ブライアンの言葉に空気は軟化し、


 「ブライアンさん…そうですね。考えてても仕方ない。食糧は又別に探すとして、今はここから抜け出す事を考える方を優先しましょう。」

 「あぁ。食糧があるのは、ココだけじゃないからな。」

 「よし、行こう。出きるだけ音を立てずに。」


 一同は、食糧調達は一旦諦め、百貨店からの脱出を目指し、歩きだした。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ