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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
脱出作戦
50/206

匂い

 突如現れた蚊の大群を前に、2人は一瞬トランス状態になった。


 「なっ、なんでいきなり…さっきまで一匹もいなかったのに…」

 「ひー!」


 2人は逃げ出した。が、逃げた先にも蚊がいた。逃げる隙間はないかと船森は素早く辺りを見渡し、非常口を見つけた。しかし、このままではたどり着く前に蚊の餌食は必死だ。ならばと、船森は顔をニヤつかせた。


 「なあ、「大の虫を生かして小の虫殺す」って言うよな?」

 「?こんな時に何を…って、まさかふなも…」


 ドン!取り巻きの男が言い終える前に船森は、彼を蚊の群れへと蹴り飛ばした。


 「船森、テメーッ、!ヒィィぃ、ギャー!」


 男に蚊が群がる。


 「へっ、恨みたきゃ恨め!俺は生きる。まだ女抱いてねーんだからな!童貞のまま死んでたまっかよ!」

 

 船森は、非常口に素早く入り込み、急いで非常階段を降りた。そして、外へと通じるドアを開いた。左右を見渡し、蚊がいないのを確認した。そして百貨店の外へと、一歩足を踏み出した。


 「ヘヘ、助かった…」


 そう思った瞬間、ザクッ!という音が聞こえた。


 「へっ?」


 船森は2歩目を踏む前に自身の頭部に違和感を感じた。両目を上へと向けると、そこには蚊が自分のつむじへと、垂直に針を突き刺していた。


 「なっ…うっ嘘だ…ろ…そんな…まだ…して…ねーのに…」


 この期に及んで船森はまだ己の性欲にくらんでいた。「因果応報」「自業自得」等の言葉が船森にふさわしい言葉だ。が、それを船森に伝える者は今、この場の何処にも居なかった。

 そのまま意識が薄れていく船森。

 その場に倒れた船森に更に、複数の蚊が集まり、彼を覆った。

 

 再び百貨店店内、食糧調達班の所にも蚊が集まっていた。


 「なっ…何でいきなり蚊がこんなに…」

 「皆落ち着いて!」

 「くっ、ここは安全だと思ったんだが…」

 「たまたま居なかっただけよ。今の大阪に、100%安全な所なんて無いのよ。」


 一同は、蚊の群れの近くに隠れ潜んでいる。今のところ、犠牲者は出ていない。


 「どうする?何時までも隠れてられないぞ…」

 「そうだな…ん!皆あそこ。」


 大石が指し示した方には、防火シャッターがあり、その向こうには蚊がいなかった。


 「あれを使わない手はない、蚊達もシャッターは開けられないだろう。」

 「いいアイデアだけど、シャッターの近くにも蚊が何匹かいるぞ。無傷で通るのは難しいぞ…」

 「それなら、いいものがあるは!」


 と、齋木が小さい瓶を何個か取り出した。


 「齋木さん、それは?」

 「アロマや、香水よ。」

 「アロマ?」

 「そ、化粧品売り場から貰ってきたの。蚊は柑橘系等の匂いを嫌うの。化粧品売り場から、蚊が嫌う匂いの成分が入ったやつを集めてきたは。」

 「へー、流石齋木さん!天才少女と言われた人!」

 「だからそれは昔の話よ。でも、絶対追い払えるとは限らないはよ。変異種がいて、匂いに耐性を持ってる個体が居ないとは限らないんだから。」

 「だけど、ここにいても見つかるのは時間の問題だ。やってみよう。」

 「ああ、そうだな。」


 意見は一致し、一同はアロマの匂いの効き目にかけることとした。念の為、皆の身体にもアロマの匂いを付けた。


 「食糧はどうする?」

 「置いていこう。荷物になるだけだ。」

 「よし近松、ブライアンさん。僕が合図したら一斉に瓶を投げるんだ。」

 「ああ、分かった。」

 「オーケーでーす。」

 「それじゃ、いくぞ!せーの!」


 大石、近松、ブライアンの3人は防火シャッター近くめがけ瓶を投げた。

 投げた瓶は大きな音を立てて砕け、辺りに匂いが広がった。

 その匂いの流に合わせるかの様に、蚊達も防火シャッター前から一斉に離れだした。一先ず、効き目はあったようだ。


 「よし、今だ!急げ!」


 その掛け声と共に、一同は、防火シャッターめがけ駆け出した。


今年最後の更新です。来年のよろしくお願いします、良いお年を。

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