吉元正一
新キャラ登場です(ゆうほど話進んでないですけど)。
走がしんみりとした気分でいると、ピンポーンとインターホンの音が響いた。「誰だよこんな時間に」と思っていると聞き慣れた声が聞こえてきた。
「走!俺だ。」
その声を聞こえた途端、走は飛び起きて玄関へ向かい、薄汚れたドアを開けた。
ガチャ。ドアの向こうには、眼鏡をかけいかにも優等生風の、よく知る顔が見えた。
「何だよっちゃん!どうしたんだ、こんな時間に?」
「部活終わって、帰る途中だ。バイトも休みだし、俺等スマホのLINEとかで連絡はしてるけど、今日はどうしても直に会いたくてな、遠回りだけと来ちまったんだ。」
「そうか、まっ汚い所だけど上がれよ。」
「本当に汚いな、掃除してんのか?」
「うるせー、大きなお世話だ!」
走は散らかった部屋を簡単に片付けると、客人を座らせた。
男の名は「吉元 正一」。二十歳の大学生。走とは幼い頃からの付き合いで、いわゆる幼馴染みである。「よっちゃん」はあだ名だ。
走と正一そしてここには居ないが、紅一点のカエデの3人で幼稚園の頃から現在まで付き合いがある関係となっている。幼稚園から中学まで3人は一緒だったが、高校からはそれぞれバラバラの高校に進学している。そして、高校卒業後の進路で大きな差が出てしまったのだ。元々学力の差はあったが、正一とカエデが大学に進んだのに対し走はフリーターである。前述通り走も進学するつもりだったか、家庭の事情で断念した過去がある。2人ともそれを理解しているので、あまりそこには触れないように気を使ってくれているが、やはりその事を意識してしまうのだ。
だか今はそんな事は置いといて、久々に機械越しでない会話に花を咲かせている。走が冷蔵庫からオレンジジュースを出し、安売りで買い溜めしていたポテチ等のお菓子類をパーティ開きにして出した。
2人共二十歳だか酒もタバコも一切やらない。2人はジュースとお菓子を口に運び入れながら会話を楽しんだ。特に走は先程までのしんみりした雰囲気が嘘の様に明るくなっていた。久々の親友との再開がそうさせたのだ。
「あーこんなに話が盛り上がったのいつ以来だ?」
走が訪ね、
「他愛のない話ばかりなのに、何だ職場の人と話して無いのか?」
正一が聞き返す。
「するけど殆ど仕事に関する事ばかりだし、休憩時間にしても今の職場俺以外はおっさんおばさんが大半だから話が合わねーんだよ。」
「そーいや今は食品会社の工場で働いてるんだったな。」
「ああ。小分けされた菓子とかを箱に詰めたり、シールを貼ったりするのが主な仕事だ。単純作業ってやつだな。難しくは無いし、体力もあまり使わないけど、同じ様な事を延々繰り返すから、段々辛くなってくんだよ。」
「そーか、俺も飲食店で接客業のバイトやってっけど、これはこれでハードだぜ。中には質の悪いクレーマーや代金を安くしようとする様な客もいて参っちまうよ。」
「大変だなよっちゃんとこも。」
段々と会話が愚痴のこぼし合いになって来たのを感じ、そこで正一が唐突に話を変えて来た。
なぜあだ名が「よっちゃん」なのかはいずれ説明があると思います。