発電所
3章はここまでです。
スマホの充電の為、高倉に案内され、走達は電源所を訪れた。
「ほら、ここだよ。」
「ここっすか。」
「そう、ここの機械で、地下の電気を作って、賄っているんだよ。」
そこには、普段は見慣れない機械が一箇所に一纏めになっており、そこからケーブルが沢山伸びていて、そのうちの何本かが、複数のバッテリーと繋がっている。
「よく分からないけど、スゲー機械だな。」
「状況説明の時に言ってたやつね。」
「どうやらこれらのケーブルが、太陽光等の発電システムと繋がってるみたいだな。」
「あぁ、そうだ。」
とそこへ、機械の脇から薄汚れた作業着を着て、首にボロいタオルを掛けた、工事現場作業員風の中年男性が現れた。
「おおヒデ、どこ行ってたんだ?」
「何だヒトシか。なに、機械いじりしてたらよ、指を切っちまってな。チエちゃんに傷テープを貰にな。」
「なんだチエちゃんとこか。」
「あの、チエちゃんとは?」
「看護師のチエちゃんだよ。本名は御子柴チエミって言ってな、前々から顔馴染みなんだよ。」
「ああ、御子柴さんのことですか。」
「(あの人、チエミって名前なんだ…昔のアニメみたいだな。)」
走がかなり前に、再放送で見た、子供ながら店を切り盛りするといった内容の、古いアニメの事を思い出している最中、高倉達が話を戻した。
「ところでヒデ、又、この機械の手入れか?大変だな。」
「ああ、こいつ等もそこそこ年季の入ったヤツだからな、定期的にメンテナンスしないといけないんだ。貴重な電源だからな。」
「それはご苦労さん。でだ、早速で悪いんだが…」
高倉が事情を説明し、走達のスマホの充電をさせて貰う事となった。充電を待つ間、話をしたところ、作業着を着た男、名を三船 秀次と言う。元は大手の家電メーカーの工場で働いていたらしい。今は日本橋で個人経営の電気屋をやっているらしい。
なお、高倉のフルネームは、高倉 等である。
「ところでヒトシ、例の話はどうなってる?昨日言ってたやつ。」
「あぁ、あれか。近々、実行しようって事で話が進んでいる。」
「やっぱそうなるか…」
2人の話は何やら深刻そうな雰囲気だった。
「なんの話ですか?」
「あっ、いや、こっちの話だ。時期が来たら話すよ。」
正一の質問は、はぐらかされた。
充電後、3人は自分らのスペースに戻った。
充電されたスマホの時刻を見ると、もう夜になっていた。
「やれやれ、なんか急に疲れてきたぜ。」
「女の子を助けて、地下に入り、色々な人と出会い、話したりと、忙しい1日だったもんな。」
「もう寝ましょう。上より安全だし、落ち着いて寝れるは。」
カエデが言うように、回りでは就寝している者がちらほら見られる。無論、まだ起きている者もいるが。
ここでは、夜の間、元々夜勤の仕事をしていた人間が、夜警を担当してくれており、何かあったらヒデこと、三船の作ったサイレンを鳴らす手筈になっている。
過去に1度試しに鳴らしたら、「死者でも飛び起きるぞ」と言われる程の大音量が地下中に鳴り響いたらしい。
なので、皆、安心して睡眠を取れるとの事だ。
「そうだな。見張りもいらねーし、久々に車の中以外で寝れるぜ。」
「それじゃ、お休み。」
「ああ、お休み。」
こうして3人はその夜、久々に熟睡出来た。
かつての平凡な日以来となる、一時の安らぎを得る事が出来たのだった。
次はキャラデータ3で、その次から4章です。