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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
第一章 始まり
4/202

山口走3

 買い物を終え、走がアパートに戻るまでの道中、近くの民家からいい匂いが漂って来た。おそらく世間的には夕飯時なのだろう。


 「そういえば、しばらく母さんの作る料理食べてないな」


 とその匂いに走は手料理というものの懐かしさを感じながらも家路を急ぐのだった。

 アパートにつくと走は先程と同様台所で手洗いとうがいをした。


 「几帳面なA型なのにずぼら!」


 と言われるぐらいズボラな走だが、子供の頃から手洗い・うがいだけは律儀にしてるのだ。病気になるのは嫌だし、何より下手すれば病院に行かなければならないからだ。しかし、最近テレビでうがいはあまり効果ないと聞きいささかショックを受けたのも記憶に新しいが、走は続けた。

 しがない一人暮らしのフリーターの走は、時折夜勤の仕事をし、帰ったら真っ昼間に寝る様な事も珍しくなく、食生活も不規則なので、何もしないよりマシだとばかりやっているのだった。 


 手洗いを終え走は買ってきた物を机に置き、冷蔵庫の冷凍室を開けラップで包まれた冷凍ご飯を取り出し、レンジで解凍し始めた。若いながらもご飯党の走だか、毎日炊くのは面倒くさいと、たまに纏めて大量に炊き、冷凍保存しているの。

 しかし、どのご飯がいつ炊いた物なのか等は一切確認しておらず、今レンジにて解凍中なのは、半年前の物なのか、先週の物なのかも不明だったりする。 

 が、ズボラな走は気にも止めていないのだった。

 

 解凍したご飯を茶碗に入れることなく、ラップのまま箸と共に机まで運び、ろくに掃除もしてない散らかった床に腰をおろした。そして、テレビを付け丁度毎週見てるバラエティー番組の時間なのでそのチャンネルにあわせた。


「始まった始まった!」


 と走は画面に目をやるも、顔をしかめた。


 「げっ、ゲストこいつかよ…」

 

 今週のゲストは走の嫌いな芸人だったのだ。

 走は芸人の好き嫌いが激しく、とくに最近のキャラの濃い芸人はあまり好かない質なのだ。

 とはいえ他の番組はいいものが無いので仕方なくそのままにした。


 解凍したご飯を主食に、スーパーで買って来た値引きシールが貼られた見切り品の惣菜等をおかずに夕食を進める走。洗い物を増やしたくないとラップのままご飯を食べるその姿は、傍から見ればしがない男の一人やもめと言えた代物だが誰に見せるでもないと走は箸を進めた。

 

 走は今でこそフリーターだが、本来は大学に通っているはずだった。高校三年の時、必死に頑張りなんとか第ニ志望の大学にギリギリだが合格したのだった。

 しかし、そんな折に父親の会社が不当たりが原因で倒産してしまったのだ。両親はなんとか息子を大学へと思っていたが、走はこれ以上両親に負担をかけたくないと進学を諦め、同時に実家を出て自立を始めたのだった。

 就職も考えたが不景気がゆえ入れる企業など無く、しがないフリーターをしているのだ。

 

 食事を終えると、ラップや惣菜の空容器を纏めてゴミ箱に捨てて、唯一繰り返し使用している箸を水道で洗った。高校時代から使っており、先の方の溝がすり減って薄くなっている位の代物だ。模様もだいぶ剥げてきているが走は愛着を持っている。洗い終えると走は箸を箸置きに置き、テレビの前に戻り横に寝転んでテレビを見ながら、


 「このまま俺は平凡に生き、地味に年老いていくのかな…」


 と思いを抱いていた。


うがいの下りは、完全にうる覚えです。

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