研究室
唐突ですが、新キャラ登場です。(そして、久々の投稿となります…)
「こ、これは…」
「ちょっと、何…これ?」
走達はその場の光景に言葉を失った。高倉に案内され入ったその部屋、そこは例えるなら、学校の理科準備室の様だ。人々を恐怖に追い込んだ巨大な蚊の一部がホルマリン漬けになっているのだ。そして、部屋の中央には蚊の死骸が置かれており、その周りに数人の人間が居て、死骸を観察している。その蚊はカブト虫の様な角が生えている。有希子達の話に出てきた変異種の蚊の様だ。
「驚いたかね?」
「高倉さん、何なんですここは?」
「ここは研究室だ。」
「研究室!?!」
「そうだ。ここでは、この蚊達を自分達なりに、研究しているんだ。」
「研究?!」
「そうだ、我々もただ蚊に怯えてこんな所に隠れ潜んでいる訳じゃない。何とか蚊に対抗する方法を探っているんだ。」
「しかし、素人が見て考えても、良いアイデアが出るとは限らないんじゃ…」
「その為に、私がいるのよ。」
女性の声が聞こえて来た。走達は、声の方に顔を向けると、若い女性がこちらを見ていた。
その女性は、ポニーテールに眼鏡をし、ロングスカートを履いている。手には先程まで付けていたと思われるマスクを持っている。よく見ると蚊の亡骸を観察していた人間の1人だ。
「アンタは?」
「私は齋木よ。一応、ここで蚊の研究の責任者を任されているの。」
「責任者?アンタがか?」
「ええ。」
走は、自分達と同い年位の女性が責任者をしているという事に違和感を感じていたが、その疑問を払う様に正一が口を開いた。
「齋木…あっ、もしかして君…いや、アナタは齋木紫苑さんじゃ?」
「知ってるの、よっちゃん?」
「あぁ、数年前に大きく騒がれた天才女子高生だよ。高校生ながら遺伝子研究で大発見をして、表彰までされた。」
「そういえばいたな。当時随分と話題になったっけ。NHKで特集組まれてたな。」
「そんな事もあったわね。」
紫苑は他人事の様に、素っ気無く答えた。
「何だよ、あっさりしてるな。」
「もう昔の事よ。それよりも、高倉さん、この人達は?」
高倉が紫苑に説明した。それを聞き、
「なる程、中々興味深いは。早速、話を聞かせてくれる?」
紫苑は走達を部屋の隅にある、簡易的な机の方に案内し、側にあったパイプ椅子を組み立てた。
「まぁ、汚い所だけど座って。」
「あぁ…(いや、汚いと言うよりも、気味が悪いぞここは…)」
近くにホルマリン漬けの蚊の頭部があり、しかもこちらを向いているので、走達は気にしないでいられなかった。
が、彼女の方はそんな走等の気持ちなぞお構い無しとばかりに、スカートのポケットからメモ帳を取り出し、話を聞く姿勢に入っている。
「(天才の考える事は解らん…)」と走は思った。