バリケード
区切りが良かったのでここから3章とします
走達は剣持達に案内され、彼等の隠れ家に向かった。正一の車は隠れ家の入口近くに停めた。本来なら駐禁を切られるだろうが、今は取り締まる警察は居ないので、堂々と停めれた。
「!おい、こんなとこから入るのか?」
「ああ、ここから入るんだ。」
それは、路地裏にあるマンホールだった。剣持が蓋を開けると、先に新堂姉妹を入らせ、それから走達が入った。剣持はその間何時でも刀を抜ける状態で回りの様子を伺っていた。
「マンホールに入るなんて生まれて初めてよ。」カエデがつぶやいた。
「そりゃそうだ。マンホールなんて、業者でもない限り入る機会なんて皆無だから。」
「まるでタートルズみたいだ。」
「こっちです。」有紀子が懐中電灯を片手に走達を招いた。
彼女の誘導に従い、下水道を進むと少し広い場所に出た。
「もう少しですよ。」
「ところでここはどの辺なんだい?」
「難波の南の方です。ここから更に南下したら通天閣の近くに辿り着きますよ。」
「通天閣…そんなとこまで逃げて来たのか俺等は…」
「無我夢中で逃げまくっていたからな。」
等と話している内に着いた。
「ここです。」
「これは?」
そこにはバリケードが築かれていた。有希子が、バリケードから出ている紐をグイグイと、引っ張りながら、
「私達が隠れ家は、下水道や地下鉄の線路等といった、地下空間を利用しているんです。蚊が出現した地上とはバリケードやシャッターで何重にも封鎖してあります。」
「なる程、地上の下手な所よりは安全かもな。」
等と話していると、「誰だ!」とバリケードの向こうから人の声が聞こえてきた。
「その声、大石さんですね。私です、有希子です。」
「新堂さんか!無事戻ったんだな。待っててくれ、今開ける。」
その言葉通り、バリケードの一部が動き、ヒトガ通れるだけの隙間が出来た。そして、そこから1人の若い男が顔を出した。見た感じ、走等と同じ位の歳だろう。
「新堂さん、登紀子さんに剣持さん…ってあれ、袴崎さんは…それに知らない人達も…」
「…それが…」
有希子が暗い顔をし、それを見て男は事情を察したのらしく、顔色を変え
「まっ、まさか…」
「いや、防くん。ここではあれだ。詳しくは後で話す。早く中に。」
「剣持さん…あぁ、そうですね。皆さん早く中に。バリケードを閉じます。」
全員が中に入ると、防と言う男は近くにあった物でバリケードを再び閉じた。
それと同時にまた別の声が聞こえてきた。
「おーい、防!どうかしたか?」奥からパーカーを着た、いかにも腕に覚えありといった感じの男が現れた。
「あぁ、修一か。お前こそどうしたんだ?」
「何って、遅いから気になって様子を見に来たんだよ。」
「そうか、すまないな。少々話をしていてな…」
「話って…ん、見慣れない連中もいるな。」
修一と呼ばれる男は走達を見て発した。
「僕も詳しくは聞いていないんだ。兎に角、早く居住区に行こう。あっ、新堂さん。それ調達した食糧かい?」
「あっはい。」
「ご苦労さま。ここからは、僕達が運ぶよ。」
「あぁ、重そうだしな。任してくれ。」
「あぁ、それじゃあお言葉に甘えて。」
「はい、ヨロシク!」
新堂姉妹が食糧を2人にバトンタッチし、一同は奥に進んだ。