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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
大阪 難波
28/205

長槍

 長槍。

 その名の通り、普通の槍より柄の部分が長い槍の事である。


 戦国時代、戦で用意られる槍は約3メートル程の物が一般的であったが、長槍は6メートルを越えているという代物だ。

 この長槍と種子島(火縄銃)を戦にいち早く取り入れたのは、かの有名な「織田信長」と言われている。信長は戦で家臣が傷付くのを心苦しく感じており、これらの武器を取り入れれば家臣が傷つき可能性が減る。そう考え、実戦で使うのを決めたという説がある。

「比叡山焼き討ち」や、「泣かぬなら殺してしまえホトトギス」等、残酷なイメージの強い信長だが、実は部下思いであったという話もあるのだ。

 そんな信長だが、皮肉にも最後は、有名な「本能寺の変」で部下の明智光秀に裏切られ、命を落としたのであるが…


 今、彼らの目の前で見られる蚊の針は正に、その長槍そのものだった。蚊の体から異様に伸び、槍のようになっている針は青年、袴崎の腹部に刺さり、その部分を血に染めていた。


 「がっ…がはっ…あっあぁ…」

 

 蚊の針が腹部に刺さった袴崎は、力無く声を上げ、干からびていく。最早、手に力は入らず、刀も地面に落としてしまった。

落とした刀は、袴崎の足元に転がっている。


 「はっ袴崎!」


 剣持が悲痛な声を上げ、近づいて来た。

 それに反応したのか、袴崎は最後の力を振り絞り、右手の掌を剣持に向けた。そして、


 「にっ…逃げ…ろ…」


 生き絶え絶えの声を出した。それが彼の最後の言葉となった。

 そのまま袴崎は、地面へと崩れ落ちた。直後、ピクピク動いていたが、やがて完全に動かなくなった。


 「袴崎…くっ…逃げるぞ。早く!」


 剣持は2人に言い、急かした。


 「えっでも…袴崎さんが…」

 「いいから早く!奴はもう…手遅れだ…」

 「そうよ有希子!あの人の死を無駄にする気?」

 「…袴崎さん…さよなら…」


 2人に諭され、有希子は歯を食いしばり、3人は走り出した。

 しかし、逃げた先に別の蚊が待ち構えたいた。


 「クソ!」  


 剣持は出会い頭に刀で蚊を切り裂いた。その目には薄っすらだか涙があった。


 「!剣持さん、上…」

 「!しまった…」


 剣持の頭上から2匹の蚊が降下してきた。


 「くっ、避けきれ…」

 「剣持さん!」


 蚊は剣持を捉え、針を打ち込もうとするが、直前で有希子が剣持を押し倒し2人はそのまま転げた。

 間一髪、避ける事が出来た。


 「大丈夫ですか?剣持さん。」

 「ああ、しかし君が…」


 有希子は今ので手足と顔に怪我を負っていた。


 「これ位なんとも無いですよ。」

 「すまないな…」


 剣持が申し訳なさそうに言った。その直後、


 「嫌ー!」


 登紀子の悲鳴がして来た。


 「登紀子!」


 有希子が悲鳴の方に顔を向けると、登紀子が数匹の蚊に、壁際に追い込まれていた。逃げれる余裕は無い。有希子と剣持の位置的に助けるのは難しい。


 「いっ、嫌…」


 登紀子は大粒の涙を出している。完全に腰が抜けて一歩も動けなかった。最も動けたとしても、逃げる余地は無いが…

 

 「登紀子ー!」

 「駄目だ、間に合わない!」


 登紀子は自分はここで死ぬのだと悟った。

 そんな彼女の脳裏に、かつての有希子との思い出が走馬灯の様に蘇った。

 それは、2人が高校に入学する前の、時の話だ。


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