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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
新たなる出会い
205/206

ティッシュ

互いに信念が通じ合い、一致団結した。

そんな最中、


「なんだこりゃ!?」

「あっ!!」


気づくと子供の1人が、彼等が置いた荷物を触っていた。


「こら、不用意に障るなって!」


見かねた一人が注意した。

彼らの荷物の中には、食料以外に弾薬の他に、ナイフ等の刃物といった物も入っているので、子供が下手に触るのは危険だ。


「あぁ、ダメだよ、お兄さん達の邪魔しちゃ!」

「お姉ちゃん!」


双子の姉、有希子が来た。

どうやら、遊んでいた子供の1人が、勝手に離れてしまったようだ。


「すみません、少し目を離した隙に…お邪魔してしまい…」

「いや、別にかまわねーよ!」

「ほら、取ったもの、箱の中に戻して!」

「は~い!」


有希子に言われ、手に取った物を箱に戻していく子供。

すると、その中から何かが音もなく、床に転がり落ちた。


「何だこりゃ!?」


それを近くにいた者が拾い上げだ。辰馬の仲間の1人、六村(もむら)だった。

六村が拾い上げた物それは、丸まったティッシュだった。しかも、靴で踏まれたのか、靴跡が付いている。


「なんだゴミか…」

「あっ、それってもしかして…」


ティッシュ(それ)を見て、声を漏らした有希子。


「何だアンタ、何か知ってんのか?」


六村が訪ねる。


「えぇ、それが…」


有希子はそれに答えた。

そのティッシュは、警察署を出発する前、2号車に乗り込んだ直後、彼女の妹 登紀子が踏んだやつだった。

その時の事を、簡潔に説明した有希子。


それは、宇島が2号車の点検をしている最中、潰した蚊(今大阪の町を支配している巨大なものでない、普通の大きさ(サイズ)の)を包めたティッシュで、そのまま放置され、乗車した際、登紀子が踏んだのだ。

なので当然、靴跡は登紀子の靴のものだ。

それが何かの拍子に、彼らの荷物の中に知らず知らずの内に紛れ込んだようだ。


「出発の直前で、その後も色々あったんで、今の今まですっかり忘れてました…」

「何だそうか…」


それを聞いて、六村達は早くも関心を失いつつあった。


「あっ、でも…」


有希子は追加で話た。

そしてその際、宇島が変な音を聞いたことも…


「宇島さんも登紀子も気のせいと言ってましたし、それも、ただのゴミってことでしたが…」

「が?…」

「私、妙にそれが気になってたんです!」

「気になる?」

「えぇ、何と言いましょうか、口では上手く説明できませんが、ただのゴミとは思えなくて…」


しばし沈黙が続いたが、


「…気にし過ぎだって!」


今度は、柳川(やなかわ)が切り出した。


「あん時は、いよいよ脱出だって、皆が皆、緊張してたし、何でもないことまで気になる状況下だったんだ。」

「そうそう。宇島の聞いた音も、空耳か何かだって。ほら、幽霊の正体見たり()(けやき)ってことわざもあるだろ!?」

「それを言うなら、枯れ尾花(おばな)だろが…」

「そうそう。そうとも言うな!」

「そうとしか言わねーよ…」

「…」

「まぁ、きっとそうだって!」


彼等は完全に気のせいという方向に持って行くようだ。


「こんなゴミもう忘れようぜ!」

「あっ!?」


そう言って六村はそのティッシュを、近くにあった、ビニール袋を入れてゴミ箱とし使われている、ボロいバケツに投げ捨ててしまった。

そう言って解散する辰馬の仲間達。

が、当の有希子の方はというと、やはり踏ん切れなかった。


「やっぱり気になる…」


ゴミ箱から例のティッシュを拾う有希子。

それを持って、ある人物の元に向う。


「成る程ね…」

「どうでしょうか紫苑さん!?」


向った先、それは紫苑の元だった。

有希子の話を聞き紫苑は、


「見せて貰うわよ!」

「どうぞ!」


ティッシュを開いた。中には、確かに潰れた蚊の亡骸らしきモノが、まだあった。


「…」


片目をつぶり、間近で睨見つける様に見る紫苑。しばし見ていたが、大きめとはいえ、蚊は蚊だ。肉眼ではよく見えなかったらしく、紫苑はスカートのポケットからある物を取り出した。

それは単眼鏡に似ていた。


「それは?」

「ハンディ顕微鏡よ!」

「ハンディ顕微鏡!?」

「そう。普通の顕微鏡と同等の機能を持ちながら、ポケットに入れて、手軽に持ち運ぶことが出来る小型のね!」

「そんな物まで持ってるんですか…」


本当に、色々なものを持ってる人だと有希子は思った。が、当の紫苑は真剣な面持ちで、ハンディ顕微鏡を覗き込んでいる。

そして、


「これは…」


と、呟いたや否や、


「コレ、預かるわよ!」

「えっ!?あっ…」


そう言って紫苑は、有希子の返事を聞く前に、行ってしまったのだった。


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