ミーティング2
暫し絶句する一同。
その閉ざされた口を、最初に開いたのは、
「一体誰なんだ?…」
辰馬だった。
話したというよりは、呟いたと言って方が正しいだろうが。
「こんな、特定の変異種を操る為だけに、それ専用の生命を生み出すなんて…」
「…」
誰も答えられなかった。推理しようにも、推理する材料もないのだから、仕方がないか…
そんな中、次に口を開いたのが、
「辰馬くん、その事も大いに気になる。だが今は、ここから移動する方法を考える方を優先しよう!」
高倉だった。
確かに、今はソッチを優先すべきだ。辰馬も同意したので、話を戻した。
「そちら側の方の車も、動かないんだったね!?」
大石達に訪ねた。
「ええ。完全に動かなくなったんです!」
「うんともすんともいかないのか!?」
「うんと…えぇ、全く…」
「そうか…(エンコといい、コレも最近の子は使わんのかな!?…)」
言葉使いにジェネレーションギャップを感じつつも、話を進めた。
「宇島くん、そっちも修理は無理そうかね?」
「単刀直入に言うと、無理ッス!」
宇島がキッパリと言った。
「整備していた時から分かってたが、3台の内、アレが一番エンジンの損耗
車等のエンジンは、使い続ける事で内部の部品が摩耗
車種や扱い方によっても異なってくるが、基本的に車のエンジンの寿命は、走行距離約10万キロメートル位と言われている。定期的なメンテナンスをする事によって、その倍の20万キロメートル以上走れるケースもある。
エンジンは、走行距離だけでなく、年数や定期的なメンテナンスをしているかの有無によっても、寿命が違ってくるのだ。
今回、大石達が乗っていた車のは、隠れ家にいしていた警察署で最も古くからあり、尚且つ、一番使用されたモノだったので、一際エンジンが傷んでいたのだ。
「それでも脱出する分には支障はない程度だったんすが、ココまで来るまでに、色々と無理させたのが効いたみたいっス。兎に角、俺1人と、手持ちの道具だけじゃどうにもならないッスね!」
「そうか…」
ここまで彼等を運んで来てくれた、2台の警察車両は、完全に走行不能となったのだ。
「他に車は?」
「この際だ、贅沢は言ってらんないからな、軽バンでも無いか!?歩いた行くよりはマシだ!」
「生憎、この家の車庫に、車は無いよ。あるのは、自転車だけ。しかも、ママチャリ…」
「車庫のシャッターが開けっ放しになってたから、多分、この家の住民が、避難す
「だろうな…」
この家に留まっていた事から、ココに車が無いことは想像できていた。
あれば、彼等
「この家の両隣にも、使えそうな車は無かったぞ!」
「う~む…」
なかなか光明が見えないでいた。
が、そこへ、
「あっ、そうだ!」
双子の新堂姉妹の妹、登紀子が声を上げた。
「どうしたの登紀子!?」
「ココに逃げ込む時、ここの斜向
斜向かいとは、真正面ではなくて、斜め前の位置関係の事だ。
「その家がどうかしたの!?」
「垣根で見えにくかったし、ホンの一瞬だったけど、ア
「アレって!?」
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少しして、先程まで彼等が身を隠していた家の斜向かい、性格には右側の斜向かいの家の庭。
辰馬等が武装してその家の庭に乗り込んでいた。
そこには、
「おお!」
「コレは!」
「あの娘の、登紀子さんの言ってた通りだ!」
「俺何気に、実物を見るの始めてだぜ!」
「俺だ!まぁ、せいぜい、テレビとかでしか見たことねーよ!」
「兎に角、コレはお宝だな辰馬!」
「ああ、キャンピングカーという名のな!」
そう。彼等の目の前にあるのは、キャンピングカーだった。ソレも、かなりの大型のモノだ。
「少しきついかもしれないけど、詰めて乗れば、全員乗れるだろう!」
「でも鍵
周囲を探してみたが、見つからなかった。
そこで、
「任せろ!」
と、宇島が工具を取り出し、
カチャ!カチャ!
と、いじった。
すぐにキャンピングカーのドアは開き、更に運転席のハンドルの辺りをいじる。
すると、
ブロロロ!
エンジンがかかった。
「成功だ!」
「スゲーな宇島!お前、何時でも車泥棒になれるぞ!」
「なんねーよ!!仕事柄、自然に身についたんだよ!」
「落ち着けって!兎に角、持ち主には悪いが、非常事態だ。有り難く使わせてもらうとしよう!!」
かくして彼等は、新たな足を得たのだった。