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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
第一章 始まり
19/205

 「【虫よけ火炎放射器作戦】はもう駄目だな。」

 「何時そんな作戦名付けたのよ、この非常時に呑気なんだから。」

 「うーん、こうなりゃ、直接やるしかない。」


 そう言うと走は、近くにあった木の棒を手にした。


 「これで近づいて来たところをぶっ飛ばす。見たところ、デカイけど所詮は蚊だ。体は脆そうだったしな。」

 「危険すぎるわよ走!」

 「しかし、他に方法がねーだろ。」

 

 そうこう言っている内に、例の羽音が聞こえて来た。


 「おっ、来たな。」


 走は覚悟を決めたかの様に、棒を力強く握った。そして茂みの隙間から覗いて見た。すると、残り2匹の蚊が横並びにしかも周りを警戒するかの様に飛んで来た。


 「奴等、横に並んで飛んでるぞ。」

 「仲間が殺られたから警戒してるのかもな。」

 「そーなると、うかつに攻撃できないわね。」

 「何とか2匹まとめてやっつけれねーかな?」

 「難しいな…」


 3人の考えよそに、蚊達は着実に近づいて来ている。


 「もう少し離れよう。音を立てるな。」


正一が小声で囁く。


 「そ~とな、そ~と…ん⁉」


 3人の視界に、来る途中にあったボロ小屋が入ってきた。

 

 「気付かない内にここまで逃げてきてたのか…」

 「しかし、壁に大穴空いてるからな…二酸化炭素だだ漏れで隠れ家にはならねーな。」

 「中にも、ろくなもの無かったしね。」


 目の前の大きな建築物もまた、朽ち果てており、走達の持ち物同様、役に立ちそうには無かった。


 「くっそ、楽しみにしてた今夜のお笑い番組見れねーかもな…」

 「走、アンタまた何呑気な事を言ってんのよ。」

 「お前らあんまり騒ぐなよ、この非常時に…」

 「だってよ、数少ない楽しみなんだよ。あーあ、こんな事になるなら録画しとくんだっただな、「野田ジンのアホ王様」。」

 「あの番組か、俺も好きだよ。特に好きなネタが…」


 正一が話の途中で黙ってしまった。


 「どうしたのよっちゃん?」

 「いけるかも…」 

 「えっ…?」

 「危険だが上手く行けば纏めてやっつけられるかもしれないぞ。」

 「本当かよっちゃん。」

 「ただ、一番の問題が誰かか囮になる必要があるんだよ。」

 「囮!」

 「ああ、あの蚊をある場所に引きつける役がいるんだ。」

 「どんな作戦なの、よっちゃん?」

 「それはな…」


 正一は考えた作戦を説明した。


 「なる程な、それなら奴等を一気な潰してやれそうだな。」

 「でも上手く行くかしら?」

 「確率は五分五分…いや、もっと低いだろうな。」

 「一か八かだ、やってみようぜ。」

 「だから危険よ、そもそも囮は誰がするの?」 

 「俺がやるよ。言い出しっぺだからな。」

 

 正一が名乗りを上げたが、すぐさま走がそれを静止した。


 「いや、俺がやる。」

 「走!」

 「よっちゃんの足じゃ、そんなにもたねーだろ。むざむざ死にに行くも同じだ。」

 「しかし…」

 「しかしもかかしもねーよ。この中で足は俺が一番だ。それはお前らが一番よく知ってんだろ?」

 「確かにそうだが…」

 「俺を信じろ。必ず3人で生きて下山すんだ、いいな⁉」

 「…分かった、俺等も直ぐに作戦の準備する。」

 「決まりだな。」

 「走…」


 カエデが心配そうに走を見ている。

 そして、3人はそれぞれ役割分担と覚悟を確認し。いよいよ作戦に取り掛かった。

 2匹の蚊は尚も警戒しながら山中を飛んでいる。その前に1人の人間が飛び出して来た。それは走だ。


 「おら来いよ!蚊の化け物!」


 そう走が叫ぶと蚊は、揃って走に狙いをざため飛びかかって来た。


 「(狙い通りだな)」


 走は蚊に追われながら山道をひたすら駆け回っている。町と違い、コンクリートで舗装などされていない道は走るには不向きだったが、走はひたすら足を動かし続けた。


 「はーはー…走りづれーな!」


 (かける)は走りながら後ろを振り返った。2匹の蚊は、後方を飛び回り、走を追っている。

とはいえ、そこは森の中な上、蚊の方もその巨体。走が走りにくいのと同様、木々が邪魔になり、飛びにくい様子だ。

 

 「とにかく、俺の役目は2人からの合図があるまで、蚊を引きつけて時間を稼ぐことだ。それまで逃げ切ってやらー!」


 走が駆け回っている最中、正一とカエデは、ボロ小屋で大急ぎて作業を進めている。


 「カエデ、焦らしたくは無いが走も長くは持たない。急げ!」

 「勿論よ、よっちゃんこそ、口よりも手の方を動かして。」

 「おうよ!」


 3人はそれぞれ役割をこなし、蚊との直接対決に挑もうとしているのだった。


 

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