異変
「何かしら?」
カエデがスマホの画面を見ながらつぶやく。
「⁉カエデ、お前のスマホ電波届いてんのか?俺のいま圏外だぜ。」
走がスマホを旗のようにヒラヒラさせながら聞いてきた。
「俺のも圏外だ。」
正一も続けて言う。
亀山は広大な山なので山頂付近になると、携帯等の電波が届かず、圏外になるのだ。
「本来ならね。秘密ってほどじゃないけど…理由はこれよ!」
カエデはバッグから小さな箱型の物を取り出した。それはプラスチック製のもので、小さな画面が付いており、パッと見デジカメにも見えた。
「ポケットWi-Fiよ!」
「ポケットWi-Fi!」
2人が声を揃えて言った。
「そっ!最新式のやつで山奥や海のど真ん中でもつながる優れ物よ。」
カエデは自慢げに見せつけた。
「そんな物持ってたのかよ。」
「何時でも何処でもスマホ使えて書き込みとか出来るように手に入れてたのよ。」
「(そこまでして、お前のSNS見る奴いんのかよ?)」
と走は思った。が、また食って掛かって来られたら面倒と思い、口にはしなかった。
「ところでスマホ見なくていいのか?」
「ああ、そうだったって…何よこれ?」
カエデが困惑した顔をした。
「どうしたんだ?」
「見て、画面が…」
カエデが2人に画面を見せた。
走と正一がカエデのスマホの画面を見て見ると、カエデの困惑する原因がわかった。スマホの画面には、渦巻きのようなものか表示されていた。そして何やら音声が出ているようにも見えたが、特に何も聞こえては来ない。
「なんだよこれ不気味な画面だな。」
「それよりこれ止められないのよ。どうなってるのよ。」
カエデは軽くパニック気味だ。
「落ち着け、ちょっと貸してみろ。」
正一がスマホを受け取った。
「何だタッチパネルは愚か横のボタンすら一切反応しないぞ。」
「よっちゃんなんとかならない。」
「これ自分で蓋を開けられないタイプだな最近支流の。蓋を開けられるやつならバッテリー外して止められるけど…そうだこの機種は確か…」
正一が電源ボタンと音量ボタンを操作し、暫くすると電源が切れた。
「ふ~、なんとか強制終了は出来たみたいだな。」
正一はスマホをカエデに返しながら言った。
「しかし、今の何だたんだよ?」
「解らないが、新種のコンピューターウイルスかもな。」
「コンピューターウイルス!今のが?」
「俺だってあんなに状態になったスマホなんて見たことないけど、ただ事じゃないのは確かだ。」
「俺らのは大丈夫か?」
「今は圏外で何ともないみたいだが、カエデ、変なサイトに入ってないか?」
「入ってないはよ、何時も見たり聞いたり、書き込みしてるサイトだけよ。変なアプリも最近はダウンロードしてないし。」
「兎に角、こんな山奥じゃ何も出来ないし、今は様子を見よう。」
「だな。さっさとタイムカプセル掘り起こして帰ろうぜ。」
「そうしよう。カエデ、とりあえず帰ったら電源入れて、また今の画面が出るようなら購入したショップに相談しに行くといい。最悪買い替えてもいいし。」
「そうする、ありがとうよっちゃん。」
3人は気を取り直して、タイムカプセルを掘りに松の下まで行った。池の中にある例のものが何やら不自然な動きをしているのにも、気付くことなく…
そう、今のパプニングが、これから始まる恐怖へのオープニングだということを3人はまだ知らない
ピキピキ…パキッ!
この音と共に恐怖が始まろうとしていた…
そんな優れもののWi-Fiあるのかって気もしますが、あくまでフィクションなので