山小屋と池
山中を3人は登り続けた。その途中で、3人の前にある物が見えてきた。
「おい、あそこにあるの何だっけ!」
「ああ、あれは小屋だよ!小屋。」
「そう言えば、10年前来たときもあったわよあの小屋。」
「そうだ、思い出した。人の住めそうにないボロい小屋があったっけ。その時中覗いたけど何もなかったよな。」
「ボロボロで穴だらけだったわよね。なんでこんな所に建てたのかしら?」
「多分、山を管理してる人が、何か目的があって建てたけど、古くなって、倉庫としても使えないから放置されたんじゃないのか。」
「使わないなら取り壊せばいいのに。」
「取り壊すにも手間と時間がかかるから放置したんだろ。ほっとけば、朽ち果てて潰れるから。ボロいから誰がが住み着くってこともないだろうし。」
「そういえば今日本には、放置された空き家が沢山あるって聞いたな。」
「ああ、住む人が居ない上に老朽化で倒壊の危険があるけど、壊すにも金がかかるし、更地にすると納める税金も増えるから、空き家のまま放置されてるらしい。」
「何か無責任な話ね。建てといて、放ったらかしなんて。」
「しかし、このボロ小屋、よく残ってたな。10年前の時点でかなりガタが来てて、いつ倒れてもおかしく無かったのに。」
「元々頑丈に作られてたのよ。利用目的解らないけど。」
「確かに、最も今じゃ少し力を入れれば倒壊しそうな位、柱とか朽ちてるけどな。でも、この小屋が残ってて良かったよ。タイムカプセルまでの目印の一つだからな。」
3人がタイムカプセルを埋めた地点は、この小屋の入り口を背にして、歩いて数メートルの場所にある池の近くの一本松の根元に埋めたのだ。池はこの亀山の中で一箇所しかなく、その近くに立派な松の木が生えており、他に松は無いので走達は一本松と呼んでいる。
走達は池までやって来た。
「やれやれ、やっとここまで来たな。しかし、俺等何でこんな所に埋めたんだっけ?」
「忘れたの?近くの公園とかだと誰かに掘り起こされ持っていかれる危険があるって貴方が言ったから、こんな山奥まで来たんでしょ。」
「そうだ、下手な場所じゃ建物が建って掘り出せなくなるって意見も出て、人が来ず無くなるリスクの少ない場所を3人で考えてここに決めたんだろ。」
「そーいやそーだったな。今思えば、もっと手頃な所あったと思うけど、当時はここに決めちまだたんだよな。」
「さてと、一本松も当時のままだ。あの根本にタイムカプセルがあるんだ。早速掘り出そう。」
「おう…ん?」
走が何気なく池に目をやると、池の中に妙な物が3つ程浮かんでいるのに気が付いた。山の中なので、池には枯葉や枯れ枝等が大量に浮かんでいたが、妙な物はそのどちらでも無いものだった。
それはラグビーボールに似た少し長細く黒っぽい色をしていた。大きさもその位だ。
「何だあの黒いの?池の真ん中ら辺に浮かんでるの。」
「さー、変わった形のボールか?虫の卵にも見えるが。」
「変なこと言わないでよ。虫の卵!本当にそう見えてきたわよ、やーね気持ち悪い。」
カエデが顔をしかめた。カエデは昔から気は強くとも、虫や爬虫類の類が少し苦手なのだ。
「まさか、あんなでっかい虫の卵なんてあってたまるかよ。」
「そうだよな。たぶん誰かが捨てた変なゴミか何かだろ。」
「きっとそうだ。そうに決まってる。」
「こんな山奥に捨てに来るなんて、道徳がなってないわね。」
「端にあれば拾えるけど、あそこじゃ無理だな。泥まみれになってまで拾うのは、流石に無理だな。」
「仕方ないな、そのままにしていこう。」
走達3人は理不尽な事・曲がった事が嫌いで、律儀でゴミのポイ捨てを見ると怒りを覚える位だ。正一はよく衝突する走とカエデの縁が切れないのを不思議がっているが、そんな似た性分を持つもの同士だから、気が合う間柄なのかもしれない。 今も池にあるものに対し不満をこぼしている。しかし、そんなことを話してると、カエデのスマホが鳴り始めた。