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ブラッディ・モスキート  作者: Mr.ゴエモン
第一章 始まり
10/205

時代の流れ

 走達は目的地である亀山こと象亀山の近くまで来た。

 これ以上先は道も狭く、何より車を止める場所が無いので、ここからは徒歩で向うことにした。予め調べておいた亀山から一番近い所にあるコインパーキングに車を停め、持ってきた荷物を持つと走達は歩き出した。

 歩いている最中、走は


 「車止める前から感じてたけど、この辺りも所々代わったな。」


 と言い


 「そりゃ10年は経ってるからな、10年もすればよっぽどの場所でない限り変わってるだろ。」


 と正一が答えた。

 この亀山の近くの町は、走達がよく遊びに来ていた場所の一つだ。取り立てて目立った観光名所と呼べる様な物もない為、人も余り来ない地だが、だから静かで気兼ねなく遊べると、走達は利用していた。

 そんな町も10年の歳月で代わった箇所もある。


 「ここにあったパン屋も向いの自転車屋も無くなってんな。」

 「ねー、ここ更地になってるけど何があったっけ?」

 「さー、最後に来たの何年も前だからな。」

 「おい、ここ確か本屋だったのに、デイサービスの施設になってるぞ!」

 「本当だ、皆で立ち読みしたり、漫画買ったのに完全に別物になってるじゃないか。」

 「この辺も過疎画が進行してるみたいね。若い人が殆どいないわよ、おじさん、おばさんばっかりよ。」

 「そーいや子供も全然いないな。確か10年前はそこそこいたってのに。この辺りも少子化が進んでんだな。」

 「この町の小学校も生徒不足で閉校してるらしいぞ、コインパーキング探すとき、ついでに色々調べて知ったんだか。」

 「思いのほかかなり深刻ね、この町も。」

 「あれ、なー確かこの辺に林があったと思ったけど…」 

 「たぶんここで間違い無いぞ走。林の横の小道と川に覚えがある。どうやら伐採されて無くなったみたいだな。」

 「嘘だろ…完全に無くなって、家が建ってるじゃないか。」

 「見て!向こうの方にあった池も埋めたつられて、月極駐車場になってるわよ。」

 「マジかよ、魚やザリガニ釣りとかしたあの池が今じゃ駐車場かよ…」

 「多分、駐車場といっても、今だけだろう。将来的には建物が建つと思うぞ。」 

 「どーしてそんなことわかるのよ。」

 「見てみろ。地面は舗装されてなくて砂利が敷き詰められてるし、駐車スペースのラインも看板も簡易的だろ。」

 「ああ、確かに急ごしらえっぽいな。」

 「こういう池とか田んぼとかを埋め立てて作った土地は、地面が柔らかく、建物を建てるのに向かないんだ。だからこうやって、別の形で利用して、土がしっかり固まってから、建てるんだよ。車はいわば重石だな。」

 「へー流石よっちゃん。」

 「こんなもの、大したことじゃないって。」

 「とはいえ、林と池がなくなっちまったのは、ショックだな。」


 走は本当にショックを受けた顔をしている。故郷ではないにしろ思い出深い場所の変わりように、本当に残念に感じている。


 「だいたいよ、テレビとかで地球温暖化防止だ、環境保護だの言ってるけど、口先だけじゃないのか!毎年多くの自然が無くなり、ゴミだって全然減らねーし、本気で自然を守る気あんのかよ。」

 「あたしに言ったってしょうが無いでしょ、文句言うなら環境庁とかの人に言いなさいよ。」 

 「まーまー、でもそれを考えると走の愛車は自転車だろ。排ガスも出ないしガソリン代も税金もかからない、エコロジーだから、そこらの車に乗ってる人よりは偉いんじゃないか?」

 「単に金も経済的余裕も無いだけだよ。なんにせよ、時代の流れとはいえ昔と変わってしまったものを見ると寂しくなるな。」

 「全くだ。人間のエゴで住処を奪われた動物達はいい迷惑だよなぁ。こうやってどんどん自然を壊したツケはいつの日か回ってくんだよ。」

 「近い将来世界規模で深刻な食糧難になると言われてるけど、そのツケの一つなのかもしれないわね。」

 

 かつての思い出の地であるこの辺りの町にも、現代日本が抱える問題の波が来ていることを痛感しながら、3人は足を進めた。

 そして、目的地の亀山こと象亀山に到着した。山の周辺は殆ど変わっていなかったので、3人は少しほっとした。

 

 「懐かしいな、あっ、この地蔵、昔のまんまだな。」

 

 象亀山の入口の側に佇む一体の地蔵は、雨風で少々汚れていたが、当時のまま、山に入る人間を見守るように健在していた。

 

 「流石にお地蔵さんのあるところは手を出しにくいのよ。化学が発達しても、そういうところは今も昔も変わんないのよ。」

 「だな。」


 と言いながら走が軽く手を合わせると2人も手を合わせた。

 3人は10年前タイムカプセルを埋めた時にも「また10年後に3人で来れます様に」と、この地蔵に手を合わせたり、持っていた小さい菓子を供えたりしていた。それ以来来た事は無い。なので、当然手を合わせるのもそれ以来だ。


 「よし、そんじゃ暗くなる前に行くか!」

 「ああ、埋めた場所な行くには…こっちの方向だ。」


 正一の誘導にそって走達は山道を進むのだった。

 

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