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2

 

 俺は手紙の内容を口に出して読んだ。手紙にはそれだけ書いてあった。

 宰相をちらりと見ると無表情から右の眉が少し不安そうに傾いていた。

 この手紙は依頼主の王子が書いたとしか思いつかない。

 宰相は病弱な王子と言っていた。病弱な王子といえば誰もが思いつく。第一王子だ。病弱な為1回も公の場には出た事がなく色々な人物像の噂が飛び交っていた。そんないわば謎の人物と言われる正体を俺は知る。

 面白い。

 この大金の報酬は口止め料込みという事か。それなら納得だが用心する事に変わりはない。


「わかりました。お受けいたしましょう」


 俺は右手を胸の前におき左手を背中に回し優雅にお辞儀した。

 すると、宰相は先に出した2倍位の袋を懐から取り出し置いた。この中にちゃんと金貨20枚入っているかをもう一回宰相の目の前で数える。

 宰相は数えるのを見届けてから口を開いた。


「1ヶ月分だ。できるだけ早く来て欲しい。だが他の依頼もあるだろう?」


 他の依頼もあるがこれは間接的に王家の依頼になる。優先しなければならない。今は運の良いことにそれ程大変な依頼は入っていない。そっちはレイに任せて俺は王家の依頼に行くことにしよう。第1王子から手紙で招待を受けたことだし。

 普通の生活をしていれば金貨1枚で1ヶ月人1人暮らせる。こんな大金を王子の子守り程度ででポンと出すあたり王家は潤っているらしいな。


「はい。ですが他の者に任せられるのでご心配には及びません。あと10分程お待ちいただけますでしょうか?」


 俺がそういうと宰相は頷いて店のものを見始めた。店には依頼者を退屈させないようにと色々な国々から集めた面白い道具が飾ってある。俺が集めた物たちだ。それを宰相は1つ1つ手に取り見ている。

 その物は店からは出られないように魔法をかけてあるから取られる心配もない。

 こんな時間に訪ねてきたくらいだ。俺も急いで準備した方がいいだろう。

 客に合わせるのは俺流の情報屋の礼儀だ。俺は宰相が頷いた事を確認して店のカウンターから奥の方へ入った。

 店とプライベートルームの境の扉を閉じると同時に「レイ」小さく声を出した。呟いてから1秒位で目の前に高身長で白髪の美青年が綺麗に片膝をついていた。


「お呼びでしょうか」

「レイ、俺は今から城へ依頼をこなしてくる。だからお前は依頼の片ずけと店番をしといてくれ。いいな」


 少し命令的すぎたが俺はこんな言い方しかできないからわかって欲しい。レイは長い付き合いだから分かってくれるだろう。

 レイは片膝をついた状態から立ち上がり綺麗にお辞儀をした。


「はい。かしこまりました。ご無事に達成し帰ってくる事をお祈りしています」


 レイは本当に今は礼儀正しい。

 だが出会った時は威嚇しまくりで零も小さかったからちょっとした躾をしたらこんな丸くなったわけだ。元は素直で良い子だったのだろうがスラムという環境がそうさせてしまったのだろう。


「あぁ、ありがとう。レイもな。ほらしゃがめ」


 俺がレイにしゃがむようにいうとレイはまた片膝をつき頭を差し出した。俺がこう言う時は頭を撫でる合図みたいなものだ。

 いつのまにか背も抜かされておりレイがしゃがまないと頭がなでられない位置になっていた。それだけ零が成長したという事だが俺は少し悲しい。子に背をぬかされる親の気持ちってこういうものなのかもしれない。


「なぁ、帰ってくるよな?」


 レイは先ほどと打ってかわって甘えるような声をだし俺の手に頭をすり寄せてきた。レイはいつも俺が頭を撫でる時だけ甘える。本人によるといつもは気を抜かないように頑張っているのだがなでられると気が抜けて甘えてしまうらしい。俺はいつもそれでも良いと言ったがレイはメリハリがつかないからと断られた。


「あぁ、大丈夫だ。俺はお前との約束を破った事あったか?」


 俺はレイのサラサラな黒髪を撫でながら言った。


「ない…」


 レイは上目使いで目をうるうるさせながら言った。そんなに俺と離れるのが心配らしい。行きにくいじゃないか。いつもは影で俺を守っていてご飯も一緒に食べる。本人は俺が気がついている事を知らないと思うが訓練だと思って許している。

 依頼で少し遠い所に行かなければいけなかったのだがさすがに危険だからと留守番させようとしたら号泣で引き止められた。それで仕方なく連れて行ったのは懐かしい思い出だ。それが7歳位の時。今は8年たって15歳だからさすがにと思っていたが号泣しなかっただけ成長したようだがまだまだのようだ。だが、甘やかしちゃう俺は親バカというのなのだろう。


「じゃあレイ行ってくる。後は頼んだ」

「はい。いってらっしゃいませ」


 零は素早く立ち上がりいつもの様子に戻った。俺は様々な日常品から非常品まで入っているアイテムボックスが持っているがこのスキルを持っている事が知られると厄介なのでカモフラージュ用のバックを持ってカウンターの方へ戻った。


「すみません。準備が整いました。」



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