彼らと歩むこれからの道
新曲を作ってわずか三日後。いきなり生放送でデビューすることになった夕。
そして彼はアイドルとしての道を切り開く―!
「ねぇねぇ、この前の新人の子! 見た?」
「見た見た! 超レベル高くない!?」
「あれで新人とかすごいよね~私CD買っちゃった~」
「私も私も~!」
少し開けた窓から、何人かの女子が話す内容が聞こえる。
聞いているだけで恥ずかしくて、今にでも逃げ出したくなる。
「マンガみたいに順調だな」
運転席でコーヒーを口にした衣鶴さんが、にやりと不敵に笑う。
そんな彼を見ながら、僕はしていたマスクを取って、
「あの、何なんですかこれは」
「何って世論調査だろ? 世間の評判を知るには、聞くのが一番だ」
「一歩間違えれば犯罪になりませんか? それ」
「お前だって知りてぇだろ? 自分がどう思われてるか」
「それはそうですけど……」
あの生放送が終わって以来、僕―YOU☆ の名前は瞬く間に広まった。
記者会見や、情報番組。とにかく引っ張りだこで、大変だったけど。
篤志さんと同じ番組に出ることもあったし、とにかくこれでもかってほど忙しかった。
そして迎えた、CD発売当日である今日。
発売記念にパーティーをしてくれると言うので、衣鶴さんにつられ家を出た僕だったが……
なぜか道端にいる女子高生の話を盗み聞きしたり、CDショップに聞き込みをしに行ったり……
相変わらず、この人がやることは謎だな。大胆すぎる、っていうか……
「顔だけいいのもあって、結構な評判だな」
「だけって……そんなにとりえないですかね、僕」
「初登場にもかかわらず生で、絶大なパフォーマンスをしたんだ。そんなわけねぇだろ」
「褒めるのかけなすのかどっちかにしてくれます?」
「そいや、お前のお袋はなんていってたんだ? CDも買ったって?」
「ああ、お母さんは……言うまでもなく、友達などに自慢ばっかりしてます」
ああいうところは、本当に直してほしい。
本名を伏せたにもかかわらず、うちの近所の人にはほぼほぼばれてしまった。
まあそれだけ嬉しかったんだろうけど、僕にとってはこそばゆい。
家に帰ると、決まって僕が出ていた番組をテレビに映すし……
「よし、会社に着いたぞ。降りろ」
「は、はい! そういえばそのお祝いには、篤志さんも来るんですか?」
「あいつは仕事だからなーうちの会社の奴が主だ。あとは……呼んではみたが、来るかどうか……」
呼んでみた、とはだれのことだろう。
そう思いながら、衣鶴さんが会社のドアを開けるとー
「ご機嫌うるわシュウ~~衣鶴サン。お会いできて、光栄でゴザイマスヨォ」
そこにいたのはなんとも奇妙で、不信感極まりない。
白いタキシードにシルクハットをかぶった、奇術師のような人がいた。
覗いている髪の毛は金色で、話している言葉もどこかぎこちなくまるで外人のように見えた。
「……結局来たんすか」
「YES~。せっかくですから、この機会にあいさつを兼ねてと思いましテ」
「そりゃご苦労なことで。迎えくらい行ってやりましたのに」
「おほほほほ、何をご冗談を。ワタクシを事故死させるおつもりですかァ? あいにくワタクシはまだ死ねませんネェ」
なんか、すごく気まずい雰囲気になっている気が……
初めて見たな、衣鶴さんと対等に接している人。
上司でも彼を尊敬しているような人、ばっかりだったのに。
「あの、この方は?」
「オオット、あなたが大西夕さんですネェ。うわさはかねがね聞いていますよォ、よくぞうちの会社へお越しくださいマシタ」
「うちの会社?」
「……夕、こいつは山田琉生。うちの、社長だ」
しゃ、しゃちょう!!?
「本国ではルディウス、という名で呼ばれておりマス。どちらの名前でも、気軽に及びくださいマシ」
くつくつ笑う社長の笑みを見ながら、僕は戸惑いを隠しざるを終えなかったー
その後、僕のデビューを祝ってくれる簡単なパーティーは始まった。
主に社長が近況を聞く場のようにも、感じたけど。
みんなあの社長に振り回されているようにも見えて、上下関係が何となく垣間見えたものになった。
衣鶴さんはため息交じりで、僕のそばを離れようとしない。
よほど話したくないのか、どうなのか。
雑務を任してるってことは、二人に何かあってのことだろうけど……
「あの、衣鶴さん。大丈夫ですか?」
「……悪い、あいつが来るとろくなことにならねぇんだ」
「それは……なんとなくわかります」
「まあこの際、あいつはどうでもいい。そんなことより夕、これからは大変だからな」
「大変?」
「セカンドシングルもそうだし、曲だけだと活動範囲が狭い。やれる仕事は全部やっていくぞ」
うええ……全部これからが本番ってことか……
でも、ここまで来たら後戻りできない。
あのステージを見てからか、あいまいだったものが確信に変わった。
やっぱり僕、歌うことが大好きなんだって。
「あとこれは、俺からのご褒美」
そういうと衣鶴さんは、ポケットから袋に入った飴玉を出す。
どこの駄菓子屋でも売ってそうな、オーソドックスなもの。
子供の頃によく食べたことを思い出して、思わず笑いがこぼれてしまう。
「デビューのお祝いが飴って衣鶴さんらしいですね」
「酒が飲めるようになったら、おすすめのもん教えてやるよ」
「ご遠慮いたします」
「まあなにはともあれ、これからもよろしくな。夕」
衣鶴さんの優し気な微笑みに僕は、元気よく返事をする。
夕日に沈んでいく太陽が、いつもより輝いて見えた―
(つづく!!)
と、いうわけ社長のご登場です。
外人なのかなんなのか、
もはや私にもわかりません。
ところどころカタカナなのは、
片言的なのをイメージしております
そういえば今年はハロウィンですね。
この面子でハロウィンは……
篤志が盛り上がるくらいで
他メンツはそうでもなさそうなきが笑
次回! アイドルとして飛躍まっしぐら?