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作り出す、君と僕の歌

衣鶴や篤志、そして彼方とともに

ちゃくちゃくとデビューの話がまとまる中、

いよいよ曲作りへ・・・



デビューの話がだいぶまとまりきつつある、九月中旬。

月日はあっという間で、僕もようやく十九歳になっていた。

まるで家庭訪問で終わった話し合いは、あの後続くことなくいったん解散。

それからというもの、付き人生活が続くだけで特に進展がなかった。


「おい夕、少し手伝え」


衣鶴さんに、呼び出される前までは。


「あのぉ……この後、篤志さんの仕事があるんですが……」


「雑誌の写真だろ? いざとなったら彼方がいるから、大丈夫だろ」


「随分放任主義ですね?」


「アイツもガキじゃねぇってことだよ。とにかく、こっち来い」


僕に断らせる権利もくれないらしい。

こういうところは相変わらずで、衣鶴さんは結構勝手な人だ。

まあ、思ってるだけで直接言ったりはしないけど。

彼に通された場所はここの所属している人たちが使っている、一つのスタジオだった。

脇には高そうなグランドピアノがおいてあり、録音できるようにラジカセまでおいてある。


「何のためにこれがあるか、なんとなくわかるよな」


「えーっと……曲作り、でしょうか?」


「正解」


やっと来たかと思うワクワクと、本当にやるのかという不安が同時に襲う。

作曲のことはインターネットで調べたりしては見たけど、具体的な方法は難しくてよく分からない。

ギターやピアノのコードで、っていうのが無難だったけどうちにはそんな余裕ないし……

第一、触ったこともないのに果たして本当に曲が作れるのか……


「とりあえずこれ、試しに聞いてみろ」


そんなことを考えていた矢先、衣鶴さんから差し出されたのはイヤホンだった。

その伸びた先には、彼が持っている音楽機械がある。

言われるがままそのイヤホンを耳にはめると、衣鶴さんがボタンを押して再生する。


聞こえた音楽はピアノで弾いたようなもので、伴奏の部分だけが流れている。

ここはAメロ、Bメロ……聞いているだけで曲のどの部分かすぐわかる。

それだけうまくきれいで、伴奏だけなのに今にでも曲が聞こえてきそうだった。

ちょうど伴奏が終わるタイミングで、衣鶴さんは曲を止めて話し出した。


「どうだ?」


「す、すごいです……伴奏だけなのに、曲が聞こえてきたっていうか……これ、どうしたんです?」


「話は後だ。試しに歌ってみろ、これに合わせて」


僕の話なんか聞く耳も持っていないようで、有無を言わさず音楽をまた再生させる。

言われるがまま、僕は浮かんだメロディーを口ずさんでいった。

何も考えていないのに、自然と浮かんでくるのはこの伴奏のせいだろうか。

今にでも歌い踊りだしたくなるような、わくわくが止まらなくて……


「……いいぞ、夕。これで完成だ」


はっとした時には音楽が終わっていて、衣鶴さんが紙にずぅっと何かを書いていた。

しばらく待っていると、彼は無言でそれを差し出してくる。

何ということか、それは譜面だった。


「大体だが、譜面に起こした。編曲はうちの会社の奴に頼むから、お前は作詞を進めろ」


「えっこれで、完成?! ただ浮かんだのを口ずさんだだけですよ!?」


「それが作曲だからな」


「そうかもしれませんけど!! なんで衣鶴さん、そんなすごいことできるんですか!? 僕が歌ったメロディーを、譜面に起こすなんて……!」


「両親が音楽一家のおかげで、耳を鍛えられてな。イメージさえ言ってくれれば、ベースになるものも作れる」


それって絶対音感、って奴……だよね。

この人は、一体何者なんだろう。

改ためてそう思ってしまう自分がいて、驚きのあまり声も出なかった。

家に来て話し合ってから、数日もたっていない。

今だって、ただ口ずさんだものを曲として形にしてくれている。


すごい。これが上村衣鶴さん、なんだ。

尊敬と憧れが生まれると同時に、疑問もわいてくる。

じゃあどうして、マネージャーをしているのか。

作曲家とかピアニストとか、目指せるレベルでもあるだろうに……


「作詞でわかんなかったら篤志に聞くといい。感性は乏しいが、経験はあいつの方があるしな」


「あの……ちなみにですが衣鶴さんは、どういったイメージでベースを?」


「しいていうなら、新たな光。物語のプロローグ、だな」


彼がどういう考えに至って、マネージャーをしているのかはわからない。

でもそんな彼だからこそ、作り出せるものがあるのかもしれない。

衣鶴さんのためにも、応援してくれたお母さんのためにも何か形を残そう。

僕は決意し、作詞を始めた。思ったことを、ありったけに込めて。

完成した曲を披露するという話が出てきたのは、曲が出来たわずか三日後の話だったー


(つづく!?)

この話で言いたいのは、

衣鶴のギャップ萌えについてです。

どう見ても不良な彼には、意外な一面が多くあります


こうみえてじつは・・・

みたいなキャラ、私大好きなんですよ

なのではばたけの中でも、

衣鶴は結構特別だったりします


次回、いよいよその時が!!

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