夕暮れに伸びる五つの影
YOU☆として活動していった夕と、
それを支えてきた四人の仲間達。
五人の物語がついに、ここに完結!!
~side 夕~
しんしんと、雪が静かにふってくる。
初雪だと騒ぐ人を眺めみながら、ゆっくり歩きだす。
聞こえてくる話題に、そっと耳を澄まして。
「ねぇYOU☆の新曲、やばくない!? かっこよすぎ!」
「わかる! でも私、JOKERも好きなんだよね~みんなイケメンっていうかさあ」
「ラブゲもかっこいいよね~ああ~ライブやってくれないかな~?」
女の子たちの話を聞きながら。思わず顔がにやけそうになる。
YOU☆、つまりは僕―大西夕のことである。
アイドルを始めてもうすぐ五年がたとうとしている今、初めてのラブソングが好評で話題になっています。
なんとなくで作った曲だったから、正直自信はなかったんだけど。
中でもこの前出演した歌番組でJOKER、LOVEGATEとの共演が一番話題で、最近じゃ誰が好きかなどの話もよく耳にする。
自分の名前が出てくるのは嬉しいような、恥ずかしいような……まだ慣れないなあ。
「この前の番組、最高視聴率だったみたいだよ? すごいね、夕君」
優しく微笑みかけながら、彼方が言う。
横には気に入らないというようにため息をつきながら、衣鶴がちゃちゃをいれた。
「まあ有名なのが三個も揃えばな。一人だったから、余計目立ってたぞ。お前」
「そ、それ言っちゃう……?」
「でもすごいよね、はむ。歌だけじゃなくて、色々なとこで活躍してるの。はむ」
メロンパンをほおばりながら、奈緒ちゃんが言う。
それを受けてなのか、当事者ではないのにひろちゃんが胸を張って見せた。
「ふん! これくらい役者がそろえば、私の作品の駒が増えると言うだけだ! ネタの参考になるぞ~ぐふふふ」
「だめだよ~ひろちゃん、迷惑行為は~」
「ところでなぜ私まで呼ばれた? 番組の打ち上げとやらなら、お前らだけでやれば済む話だろう!」
文句を言いながらも、先ほど買ったたいやきにかぶりつく。
ひろちゃんのいうとおり、彼を呼んだのは僕だ。
あの歌番組の打ち上げをしようと言い出したのは衣鶴で、せっかくならとみんな呼んだのだ。
打ち上げなら喫茶店とか、店内で食べてもおかしくないのになぜかこうして街中を歩いている。
たまにはこういうのも、いいとは思うんだけど。
「それにしても衣鶴君が町巡りを言い出したのは、びっくりしたな。いつも中がいいっていうのに」
「まあ……な」
「何か隠してるでしょ、衣鶴。はむ。僕にはわかるよ、はむ」
「お前は食うかしゃべるかどっちかにしろ」
「何かあるの? 衣鶴」
「もったいぶっておらんで、さっさと話さんか!」
僕やひろちゃんに言われても、彼は紙パックのコーヒーをすするだけで何も言わない。
腕時計の時刻を確認したかと思うと、なぜか
「そろそろか……お前ら、あれをみろ」
とビルにあるビジョンに指をさす。
そこに流れたのは、なんと……
『YOU☆ 五周年特報! 武道館にて初ライブ、決定!!!!』
という文字で……
「えっ? えええええ!? なにこれ、聞いてないよ!?」
「すごいね、夕君。初めてで武道館なんて」
「おめでと~~~~はむ」
「五年目でやっと初とは、お前もまだまだということだな!」
「なんで三人はそんなに冷静なの!?」
「驚いたか? お前に内緒で、進めてきたんだ。来年で五周年、だろ?」
してやったりな顔で、衣鶴が笑う。
その情報は瞬く間に広がっているらしく、母からも喜びのメールが届いている。
偶然見ていた女の子達も、キャーキャー言って喜んでいた。
武道館。かつて、篤志さんが目指していた場所。
そして同時に、彼が昇れなかった舞台。
いきなり初めてのライブで、夢のような舞台で歌えるなんて思いもしなかった。
それだけ僕の実力が追いついたってことなのか、みんなが認めてくれたってことなのか。
どっちにしろ……
「武道館なんて……感謝してもしきれないよ……こんな僕でも、立てる時が来るなんて……」
「夕君は十分、頑張ってると思うよ」
「なんだかんだ、助けられてるしね。はむ」
「せっかくの初ライブだ! この私も、見に行ってやるぞ?」
「夕。改めて、おめでとう」
彼方、奈緒ちゃん、ひろちゃん、衣鶴。
ここまで来れたおかげでもある四人が、微笑みかけてくれる。
出会えて、仲良くなれて、時には迷うこともあったけど。
「最高の舞台にするよ、必ずね!」
ずっと頑張ってこれたからこそ、目指せた舞台へ。
大西夕はこれからもはばたき続ける―
FIN
読者の皆様、応援してくださった皆様、
ご愛読まことにありがとうございます!!
小説家になろうで初めて投稿させていただいた作品を
このような新しい物語で展開させていただき、
まことに感慨深い気持ちでいっぱいです。
個人的に、この五人は大好きです。
皆さんにもきにいっていただけたでしょうか・・・?
作品自体は終わってしまいましたが、
キャラたちはずっと心の中で生き続けます!
またどこかで五人に会えるのを待っていてくれたらうれしいです!
それでは・・・
Mimiru☆ より




