新星アイドルは最大の好敵手
ラブソングを作るため、夕はライバルでもある
LOVEGATEのもとへ!
弟・穂高の話を聞き、
何かつかめた夕は・・・?
「ついに、完成しました! 僕の初! ラブソング!!!」
完成版とかいたCDパッケージをを、どんっと前に突き出してみせる。
社長席と書かれた席で足を組みながら座っている衣鶴は、ふうんと聞き流すようにまた仕事に戻ってしまう。
「ちょっと衣鶴ぅ、聞いてくれないのぉ?」
「無理。今忙しい」
「今日までに持ってこないと殺すって言っておいて?」
「それはそれ、これはこれだ」
見積書と書かれた書類を片手に、コーヒーを優雅に飲んでいる彼は座って待ってろとだけ言う。
社長の雑務優先の衣鶴は、僕にかまってる暇はないというようにいつも冷たくあしらわれる。
それだけ大事なことだから無理にとは言わないけど、それなら急がせないでほしかったなぁ……
「あ、そうだ。これ、お前に出演依頼の紙。読んどけ」
「なにこれ? アイドルのラブソング特集?」
「天王寺行ったときに知り合いから、こういうのがあるって教えてくれてな。ちょうどいい機会だから受けてきた」
さすが衣鶴は仕事が早いなと思いながら、紙の内容を眺めみる。
番組の企画内容や、出演者の概要が書いてある。
そこにはLOVEGATEの名前もあった。
「へぇ、木葉ちゃん達も出るんだ。また張り合いにならなきゃいいけど」
「LOVEGATEだけが、問題だと思うか?」
「どういう意味?」
「お前と似た傾向で、人気が上がってきてるのがいるんだよ。それが、JOKER」
聞いたことあるような、気がした。
母がアイドル好きだからか、何度か耳にしたことがある気がする。
確か木葉ちゃん達と同じ、天王寺事務所の子達だったような……
「お前、今まで以上に気を引き締めろよ? 今回は荒れるぞ」
いつにもまして顔をこわばらせる衣鶴に、僕の不安は掻き立てられていった……
アイドルラブソング特集。
ほとんどの内容が生放送で放送され、観客席も満員だ。
出演者が多いからか、誰目当てで来ているかはまばらでLOVEGATE二人のうちわを持っている人もいた。
もちろん僕のファンもいるのか、出演が決まってすぐにファンレターで絶対行きますって書いてあったけど。
「夕、準備はいいか?」
「うん、なんとか。曲、どうだった?」
「まあ……普通だな」
「相変わらず厳しいな……前言ってたJOKER、だっけ? よく知らないんだけど……どんな子なの?」
「ああ、それなら……」
衣鶴が何か言おうとする前、楽屋のドアをこんこんノックする音が聞こえる。
誰だろうと思いながら、はあいと返事をし開けると……
「初めまして!! YOU☆さんですよね!?」
きわめて元気そうな子が、にっこりと笑う。
明るい声色が、僕にあえて嬉しいのがすごく伝わった。
「は、初めまして……え、えっと……」
「あっ、オレ朝倉瑠夏っていいます! 今回出演する、JOKERの一応リーダーやってます」
JOKERと聞いたからなのか、衣鶴がこっちを見た気がする。
この子が、JOKERの人……リーダーってことは、何人かのグループなのかな?
確かに、いかにも中心にいそうな子だけど……
「YOU☆さんと共演するの、オレすっごい楽しみだったんです! 今日はよろしくお願いします!」
あわただしそうにそれだけ挨拶をすると、向こうの方へと消えてしまう。
ライバル会社なのに、わざわざ挨拶をしてくれるあたり悪い子ではない様子だった。
その時は、だ。
そのあと放送が明け、ステージの幕が上がるとー
「ど~~~も~~~JOKERです! 声を出していっくよ~? 聞いてください! 雨色片思い!」
最初は瑠夏君一人に照らされていたスポットライトが、ステージ上の照明全部があてられる。
そこには暗くてわからなかったが、四人の男性がいた。
五人それぞれの歌やダンスが、一気にステージのボルテージを上げてゆく。
曲も、詞も新人とは思えないクオリティーで……
「だから言っただろ、今日は荒れるって」
一緒に脇で見ていた衣鶴が、分析するように言う。
確かにこれは、彼が言うのもわかる気がする。
見に来た目的は違えど、来ているお客さんを圧倒的に魅了させる。
それが僕にとってはすごくて、今までにない気持ちを沸かせてくれてー
「……不思議だね、こんな状況なのに歌うのが楽しみで仕方ないよ」
「お前にしては篤志みたいなことを言うんだな」
「ファンのみんなに最高のパフォーマンスをしたいのは、僕も同じだからね。負けてられないって思うんだ」
「その気持ちを、あいつらにぶつけて来い」
「うん。行ってくる」
他のアイドルたちに、引けを取らないように。
僕は、僕のステージを見せるんだ。
それがYOU☆として、できることだからー
『続いてはYOU☆の登場です!』
そうして僕は、舞台の階段をまた一歩上ったのだったー
予感 作詞作曲 YOU☆
ねぇ、笑ってよ 僕は君の笑顔が見たい
その笑顔を 一人占めしたいくらい
君が好きだ この思いは譲れない
ずっと一緒だった 隣にいるのが当たり前だった
君がいない空間は 静かで 少し物足りなくて
気付いかなかっただけで それは恋だったのかな?
もうとめられない この思いは
伝えたいんだ 僕の気持ち
この声 この思い あなたに届いていますか?
大好きだって気持ちを 歌に乗せて歌おう
僕には僕しかできないことが きっとそこにある
人はそれぞれ違うけど ぶつかったりあるけれど
僕は君を守ると 誓わせて 愛の歌
(つづく・・・)
知っている方は、どのくらいいるのでしょうか。
天王寺事務所、という名前を出した時から
この時を待望しておりました。
そうです。今回の話に出てくるJOKERは、
私の作品・『LAPIS・JOKER』
にでてくる主役の五人組です。
いつか何かしら作品同士でコラボしたいと
思っておりました。
実は今日は私の誕生日なんです笑
こんな日にこの回がちょうど当たるなんて、
ちょっぴり運命を感じています。感慨深いです・・・
このJOKERは本編が終わった頃の
時系列くらいです。
もしよかったら、
そちらの方もよろしくお願いします。
長く語り過ぎてしまいました笑
さて、次回からは各キャラに視点を当てた
過去と今の話です。
タイトルに注目しつつ、
誰がメインかを当ててみてくださいね!




