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孤高の天才に灯す火

本番までのとある日。

夕は車の中、路中を歩くまひろを発見。

様子がおかしいことに気づき、

走りだすがファンの子に

見つかりそうになり・・・?

「まったく、この大ばか者が!! 変装しているとはいえ油断するとは何事だ!! 私まで巻き込みやがって! しかもお前、この前家に来ていた奴ではないか! 私をだましやがって、どういうつもりだ!」


「……すみません……だますつもりはなかったというか……」


「ええい、問答無用! その場で土下座しても許さんからな!!」


すっかりお冠状態のまひろ君に、どうしようもなく縮こまる。

正座をさせられて数分、すでに足の限界が来ていた。

現在僕達は近くにあった公園のドーム型の空洞に、避難している。

まひろ君ははあっと深いため息をつくと、僕に


「それで、何の用だ。ファンに見つかる前、私を呼んでいたような気がしたが?」


「ああ……えっと車でまひろ君を見かけて……なんか、いつもと違う気がしたっていうか……」


「いつもと? 私の何を知っているというのだ」


「知らないから、知りたかったんだよ。うまく言えないんだけど、困ってることがあったら相談に乗りたいなあって」


思うように言葉にできない自分がもどかしい、と思う。

衣鶴も彼方も、そして奈緒ちゃんも何かしら抱えているのにそれを感じさせない強さがある。

知らないからこそ知りたいって思うのは、僕の欲張りなのかなあ。


「……変わった奴だな、お前」


「え?」


「正直、お前が呼び止めてくれて助かった部分もある。それに免じ、今回の騒動は許してやろう」


そう言うと、足を崩していいと許可をもらい楽な姿勢に戻る。

足がじんじんしびれつつも、彼の言葉に耳を傾けた。


「私の本名は高松真尋、この姓を聞いてピンとはこないか?」


「え、えっとぉ、どこかで聞いたような気はする……かなあ?」


「私の家は古くから伝わる、由緒正しき名家だ。私がこうして常日頃女の格好をしているのは、家のしたきりのため。すでに飛び級で大学も出ている」


うえ!? そ、そうなの!?

てことはこの人、大金持ちのお坊ちゃま!?

ほ、本当にいるんだ……なんてうらやましい……って何を言ってるんだ僕は!


「で、でも前みんなで行ったおうちは普通の家だったような……」


「あれは伯母上……母上の妹君の家だ。作家活動の時だけ、生活させてもらっている」


「……作家のこと、家族には言ってないの?」


「当然だ。言ったところで、やめろと言われるだけ……高松家たるもの、遊びのような戯言に付き合うな……それが父上の教えだ」


なんだか、かわいそうだと思った。

お金持ちって聞くと、自分がそうじゃないせいかすごく憧れな部分がある。


でもそれは、違う。

その家で生まれたからこそ、縛られてきた生活と決められごとの数々。

彼の表情が暗いように見えたのも、そのことがあったからなのかな……


「つまらぬ話をしたな。まあそうはいっても、私の脚本を許可なく変えることは許さん! 明日は、覚悟して取り掛かるように!」


「僕……あの脚本を読んで、すごく感動したんだ。主人公のように、まっすぐ思いを伝えられたらいいのにって。原作もちゃんと読んだよ、その上で思うんだ。主人公もきっと、思い悩むことがあるんだろうって」


「何が言いたい」


「脚本通りに演じるのも、お父さんのいうとおりにするのも大事なことだと思う! でも、それだけじゃ人形同然だよ! 人は自分で考えて、自分で行動できるんだから!」


決して彼の考えが、間違っているというわけではない。

辛く苦しい境遇があるからこそ、生まれたであろう作品にはわけがある。

自分がそうだったからと、それを僕達やキャラクター達までに押し付けるのでは違う。

だからー!


「見てて、僕の演技! 必ず、よかったって言わせて見せるから!」


決意と覚悟を胸に、僕は彼にそう誓ってみせたのだった……


(つづく・・・)


と、いうわけで真尋の

バックホーンも明らかになりました。

前も言ったとおり、

この五人は比較的暗いほうだと思ってます

過去にはこだわってるんですよ、こうみえて。


こんないいところではありますが、

次回は更新をお休みさせていただきます!

それもこれも、なんと24日は

私事ではありますが

第1作目の投稿日から丸三年を迎えるんです。


それを記念した企画については

詳しくはツイッターや

活動報告でお知らせいたします。

そこで今後の更新についてもお知らせするので、

お楽しみに!


次回、夕VS真尋!

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