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世界をも統べる魔王、爆誕

天才作家・まひろから次々と

演技のダメ出しを食らう夕。


全員が意気消沈する中、奈緒に

一件の電話が来て・・・?


枯れ葉になった葉が、木からハラハラ落ちてくる。

一枚の葉をつかみながら、また自然に返す。

風に揺られた葉っぱは、右へ左へと流れていく。


「待たせたな夕、乗れ」


声が聞こえて、ぱっと前を向く。

縁石に沿って止められた車の窓から顔を出したのは、衣鶴だった。

助手席には彼方が、後部座席には奈緒ちゃんも座っていた。


「遅いよ衣鶴~10分も遅刻だよ?」


「仕方ねぇだろ? 渋滞してたんだから。挙句の果てに奈緒は全然出てこねぇし」


「だって眠かったんだもん」


「仕事が大変だと、寝ても寝ても足りないよね」


「そんなことよりさ、奈緒ちゃん! 今から行くとこって、作家さんのとこ? なんで奈緒ちゃんに来たの?」


「うちの局長、顔広いから。編集の会社さんから、死にそうな声で言ってきたんだって」


奈緒ちゃんが局長さんに言われたという、新たな仕事。

それは小説家さんの、担当さんになってほしいとのこと。

僕も詳しくは分からないけど、一番下っ端の奈緒ちゃんがいいんじゃないかという話になったらしい。

なんか、すごい話だよなあ~


「んで? それになんで俺達まで、付き合わなきゃいけねぇんだよ」


「まだ新人さんなのに、奈緒君一人で行かせるなんてかわいそうでしょ? 後輩がお世話になるんだから、あいさつくらいはしておかないと」


「お前はこいつの母親か」


呆れるようにしつつも、なんだかんだ車を出してくれるのは衣鶴らしい。

僕も行きたいって言ったせいとはいえ、結局付き合ってくれる。

昨日のドラマのこともあったし、他の作家さんの意見も聞いてみたいんだよね。


「あ、衣鶴君。住所だと、ここみたいだよ? 門のところに誰かいるみたいだけど……」


住所の場所にたどり着くと、彼方が窓を開け確認している。

そこにはどこにでもありそうな、普通の家が一軒建っている。

そしてその門の前にいたのは、なんと……!


「ええい……遅い……この私をまたせるとは! まったく!! どういう神経をしているのだ!」


なんと、あのまひろちゃんだったのだ!!!




「どうも初めまして、僕は奈緒。君の担当になったから、よろしく。こっちは付き添いの彼方と衣鶴と、あと夕」


適当な紹介をされたなと思いつつ、どうもと会釈してみせる。

金髪のかつらをしているせいなのか、妙にじろじろ見られている気がする。

衣鶴は衣鶴でがん飛ばしてるし、奈緒ちゃんは気にもしていないようにメロンパンをほおばっている。

そして彼も、いつも通りで……


「まさか昨日の今日で会うとは思ってなかったよ。奈緒君の先輩の、彼方です。これ、つまらないものですが」


あいさつしないと、と車で言っていたのは本当だったようで。

いつ買ったのか、箱に包まれたお菓子を渡す。

が、まひろちゃんは心底呆れたようにため息をついた。


「どこの馬の骨が来るかと思いきや……どいつもこいつも昨日の連中ではないか! みぃんなあのゆうだか、ようだかの知り合いだろ! 即刻出て行け!」


「あ、あの僕がそのゆ……」


「やめとけ、夕。言わない方がお前の身のためだ」


確かに衣鶴の言う通り、彼女は僕が嫌いなようですごく不機嫌だ。

彼女はリビングに置いてあったソファに座ると、ため息交じりにポツリ。


「じゃあ、働いてもらおうか」


とつぶやいた。


「え? 働いてもらうって、どゆこと?」


「言葉の通りだ。お前らには、私の小説のネタにする権利を与えてやると言っているのだ! ありがたく思え!」


「僕、原稿を取りに来ただけなんだけど。早く原稿……」


「それを今から書くのだ! お前らを駒にしてな!」


思いもよらない展開に、ついていけない。

だがまひろちゃんが持っている作文用紙は真っ白で、とても書いているようには見えなかった。

ネタ帳と書かれた別のノートには、こまごまと何か書かれているようで……


「そこのがたいのいいやつ! 誰でもいいから、姫様抱っこしてみろ! そのあと愛の告白をするのだ!!!」


「ええええ!?」


そのあと……僕達は駒として扱われた。

延々と、ずっと。

嫌って言ってもやらされるものは、どれも恋愛ネタで。やるってなったら恥ずかしくて。


中でも衣鶴は全部拒絶し、それを彼方がどうにか納めていた。

奈緒ちゃんも途中であきてしまったのか、食べ物を食べるだけで相手にもしなくなったほど。

結果、何でもやってくれると認識されたのは僕と彼方だったようで、とにかく色々命令された。

それはもう……本当、すごい量で……


「……もうダメ……僕、死んじゃう……」


「だ、大丈夫? 夕君」


「ほんとにこんなんでネタとやらが思い付くんだろうなあ? クソガキ」


「ふんっ! 私を誰だと思っている! すでに原稿は完成済みだ!」


だったらもう帰ってもいいんじゃないかな……?

そう言いたくても、力が思うように入らない。

柄でもないこといっぱいしたせいか、一気に疲れが襲ってくる。

会った時から変な人だと思ってはいたけど、ここまでとは……


「付き合ってあげたんだし、何かお菓子くれない? 僕、おなかすいた」


「ああ? さっき何か食っていたのではなかったのか? まあいい、今回だけ特別だ。伯母上! 伯母上はいるか!」


部屋のドアを開け、階段の下に呼びかける。

伯母上、と呼ばれた人なのかはあい? という声と同時に姿を現した。

「どうしたの……ってあら、お客さんが来てたの? 早くいってくれればよかったのに」


「余計なことをされると困るのでな。悪いが四人分お茶と菓子を頼む!」


「はいはい。新しい担当さん、ですよね? ごめんなさい、真尋君が迷惑ばっかりかけて……」


「ああ、いえ、おかまいなく」


「真尋君は横暴だけど、根は素直ないい子なんです。どうか、仲良くしてあげてくださいね」


「ええい! 余計なことを言うな、伯母上!」


さっきから、この違和感は何だろう。

伯母上と呼ばれた彼女が呼ぶその名前には、君が付いている。

どう見ても、かわいい女の子……だというのに。

推測している僕とは逆に、衣鶴は思ったことをズバリ。


「真尋君ってお前……まさか男?」


「今頃気付いたのか? 馬鹿な奴らだ」


「えええええええええ!?」


真尋とかいて、まひろ。

これが彼女……いや、彼の素顔が明らかになった初めての出来事だったー


(つづく!!)

はい、というわけで。まひろは男でございます。

勘がいい方は、すでに分かっていたかもしれませんが

あとがきで彼と言いたいのを必死にこらえて、

あの人この人言ってました。

あとでまひろに怒られそうですね。


ここまですごい性格だっていうのが

二連続来ていると、

彼のことが嫌いという人も出てくるかもしれません。

でも不思議と、私は好きなんです。

なぜなのか、次回を読んだら分かるはず・・・多分


次回、まひろのすべてが明らかに!

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