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出会うことで動く歯車

普通の高校生だった夕は

母や友人の後押しを受け、

ついに芸能界の道を選択することに決め・・・

心臓の音が、体全体に聞こえてくる気がする。

何度もつばを飲み込み、はあ~~っと深呼吸をしてみせる。

ゆっくりドアが開き、そこから出てきた人が僕を見ながらため息をつく。


「こうして会うのは夏以来だよな。卒業式お疲れさん」


まるでいたわる気もないかのようにも見えるその態度は、相変わらずぶっきらぼうにみえて。

彼―上村さんは、こっちだと言って部屋に通してくれた。

母に言われ覚悟を決めた僕、大西夕は夏休みに再度上村さんに電話した。

てっきり面接とかがあるのかと思いきや、彼は僕がアイドルになると話すと


『んじゃ卒業式の午後、カノンプロダクションに来い。俺の名前いえば、通れるようにはしとく。場所は自分で調べろ』


とあっさりとした言い方で切られてしまった。

あれ以来、上村さんからは連絡はなかったし、彼が言うように夏にあったっきり。

言われた通り卒業式で友人のきょうちゃんに別れを告げ、見に来ていたお母さんに背中を押され……流されるようにここに来たけど……


「ようこそ、カノンプロダクションへ。改めてお前のお世話係を任された、上村衣鶴だ。本業はマネージャーをしている。歳は二十二……だから一応年上か。まあ気軽に名前で呼んでくれ」


マネージャーだったのか。

ということは、僕の他にもスケジュールを管理している人がいるってことなのかな?

これで四歳しか違うなんて……信じられないな。


「え、えと、大西夕です。改めてよろしくお願いします、衣鶴さん」


「堅苦しいな。ため語でいいのに」


「いやいや、滅相もございません!!」


「夕、か……確かに女っぽい名前だな。俺と同じで」


そう言う彼の笑みはどこか馬鹿にしたような、意地悪そうな笑い方で。

怖い人そうに見えるのに、その笑顔はちゃんときれいだったというか……


「そういえば、芸能人ってオーディションがあるんですよね? これからやるるってことになるんでしょうか?」


「まあ普通はそうなんだが……ここはやってねぇんだよ、社長の方針で」


「やって、いない?」


「うちの社長、かなりの放任主義でな。よほどのことがない限り、顔を出さないんだ。給料はちゃんとくれるから、仕方なく許してるけど。とりあえずそれくらい緩いのがカノンプロダクション。わかったか?」


なん、というか……果たしてそれで経営が成り立っているのだろうか……

芸能会社なんて初めてだし、想像もつかないところ。

それ故逆にこっちが心配になってしまう。

本当に僕、ここに来てよかったのかな。急に不安になってきたな……


「それじゃ、軽く社内を案内する。ついて来い」


少し先を行く衣鶴さんの背中を見ながら、僕もあわてて彼についていった。




カノンプロダクション。

少数とはいえ、芸能人が所属している事務所だ。

中でも有名なのが、母も好きな皆川篤志。

僕も調べてわかったことだけど、彼のファンにとってはこの会社は有名らしい。

そう言うのに無関心だった僕には、全然知らなかったけど。


会社自体新しいところなのか、社内はどこもきれいで特に目立ったところはなかった。

すれ違う人にあいさつをしたり、名前を一生懸命覚えるのが大変だったけど。

そのたびに思う。彼の、大きすぎる背中を。

上の人と思えるような人も、彼を慕っている様子が見られたし、後輩の人達も深々お辞儀していた。

ひょっとして衣鶴さんって結構偉い人、だったりするのかな。

これだけ顔が広いってなると、そうとしか思えないような……


「以上で終わりなんだが、何か質問は?」


「え、えーっと……衣鶴さんってここに勤めて何年目ですか?」


「んー高卒で入ったから、今年で四年くらいじゃね? それが何か?」


「いやあ、たくさんの人から慕われているんだなあ、と?」


「ああ、多分それは俺が社長のかわりに雑務を任されてるからだよ。ここの経営とかもろもろ、管理してるから自然にってやつ?」


偉い人、どころか社長のかわりとは。

確かに衣鶴さんってしっかりしてそうっていうか、頼りになりそうだよね。

まあ、見た目がちょっと怖いのをどうにかしてほしいけど……


「んで、ここから本題に入りたいんだが……入社してすぐにデビュー、ってわけにはいかないんだ。本人のスキルアップが先、ってことはわかるな?」


「えっと、なんとなくそんな気はしてました。下積み、っていうんですよね?」


「そこで俺も考えた。夕、お前には俺のかわりに、あいつの付き人をやってもらおうと思う」


あい、つ?

僕が首をかしげているのにもかかわらず、彼は


「そろそろだな」


と、腕時計を眺めみてからぼそりとつぶやく。

しばらくすると、ものすごい足音がこっちにやってきているように大きく聞こえてきて……


「間に合ったぁぁぁぁ! ギリギリセーフ!!」


「残念。1秒遅刻だ」


「秒数まで測るとか、つるちゃん厳しすぎっ! ぴったりな時間に来れる人の方が少ないんだから!」


「遅刻寸前の奴が言うことか、それ」


「いいじゃん別に、細かいことは! ん? つるちゃん、その子は?」


少し伸びた茶色の髪の毛に、おしゃれに着こなされた私服。

特徴的な顔立ちとその声を聴いた瞬間、僕はもしかしてと思い始めた。

そして案の定……


「今日から入った新人だ。ほら、あいさつ」


「あ、えっと、大西夕です! よろしくお願いしますっ!」


「へぇ~君がつるちゃんのお気に入りかぁ~どもっ! 皆川篤志、ですっ♪」


やはりだ。彼こそ本物の、皆川篤志その人!

まさか、こんなすぐに会えることになろうとは!


「しっかしつるちゃんが目をつけるだけあるね~モテそうオーラがびんっびんっ!」


「も、もてそうおーら?」


「おい夕。さっき俺が言ったこと、覚えてるよな?」


え、えっと誰かの付き人をやるって話だったような……


「それ、こいつのこと。お前には期日未定で、篤志の付き人をやってもらう」


ええええええええええええええ!?


「そういうわけなんでよろしくねっ! 夕ちゃん♪」


無邪気に笑う篤志さん、ドンマイという風に笑う衣鶴さん。

対照的すぎる笑顔を見つめながら、僕のカノンプロダクション生活が今日から始まるー!


(つづく!!!)

冒頭からして分かったとは思いますが

まあ、結構時期がすっ飛んでます。

今後もこういうことがあるでしょうが、

一日ずつ書くのは

どうも根気がいるもんで・・・

私には無理でした笑


ちなみに、なんですけどお友達の孝君は

初回二話だけの登場なんです。

あとにもさきにも、この二話だけなんですよ。

好きだった方はすみません。

ただ、名前は出る・・・かも?


次回! お仕事開始!

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