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嵐は突然に。

ライバルであるLOVEGATEとの

PV対決に勝利をした夕。


季節は秋。

夕達四人の前に、新たな嵐が吹き荒れようとしていた!


さしてくる日差しのまぶしさが、僕の顔を刺激する。

布団の少しの隙間から、冷たい空気が入ってくるもんだからおきたくなくてしょうがない。


「こら夕、いつまで寝てるの! 今日が休みだからって、お母さんは許しませんよ!?」


部屋に入ってきた母の声に、仕方なく重たい体を起こす。

僕―大西夕は、はあいと返事をしながらさっと上着に手を伸ばした。

季節は秋。すっかり寒くなってきました。

あれからまた一つ年を取って、今は二十一歳。


大人になっていくのが嬉しいような、切ないような、よくわからない感情が渦巻いているのが実際のところ。

衣鶴もよく言ってるけど、年を取るってあんまりいいことでもないよね……


「コーヒー注いであげるわ。大サービスよ❤︎」


「……どうかしたのお母さん、なんかいいことあった?」


「じ・つ・は! 発表されたのよ、最優秀賞文庫が!」


「最優秀賞文庫???? なんだっけそれ」


「もう、いい加減覚えなさいよ夕! この一年で出版された本の中で、一番を決めるやつよ! 毎年見てるでしょ!」


母に言われて、やっとピンとくる。

僕が出すCDと同じくらい、新しいものがどんどん出てくるのが本だ。

一年で出された本の中で、最も話題性があり、文章表現やストーリーがよかったものにだけ与えられる最優秀賞文庫。

きまった本は、映画化やアニメ化も決まるほど発展していくためなのか、テレビ好きな母は毎年のようにチェックしている。

まあ僕も、演技の参考になるから一緒に見てたりするんだけどね。

そっか、もうそんな時期なんだな……

「それで? 今年は何に決まったの?」


「『薔薇のように、美しく散れ』って作品、夕知ってる?」


はて……そんな作品あったかな?

仕事が忙しくなってきたせいか、ニュースや新聞を見る暇がめっきりなくなってしまった。

これは知っといた方がいいと言うものを、衣鶴がピックアップしてくれるからそれくらいしか知らない。

本当は、それじゃいけないって分かってはいるんだけど。


「それでね、お母さんびっくりしちゃったの。聞いて驚かないでよ~なんと! 作者が中学一年生の、最年少受賞なの!!」


「ちゅっ、中学生!?」


「すんごくかわいい女の子だったわ~ドラマ化も決まってるって」


なんともまあ、話が早いことで……

それにしても中学生で受賞って、すごいな。

もう少し早く起きてくればよかったな、どんな人か見てみたかったかも。


そんなことを考えていた時、だった。

自分の携帯の、バイブが振動したのは。

着信主は、衣鶴だった。

お母さんの邪魔にならないよう、自分の部屋に戻り通話ボタンを押す。


「はい、もしもし?」


『夕……最優秀賞文庫のやつ……見てるか?』


「それなら、お母さんから結果だけ聞いたよ? すごいよね~中学生が受賞って」


『その本のドラマ化の主演……お前に決まったっぽい』


「へぇ~そうなん……へ!? 主演? 僕が!?」


こんなにも、ことが早く進むことがあるだろうか。

ドラマに出演、ならまだ分かる。なのに主演と聞いたら、驚くことしかできない。

数々の仕事をしてきた僕でも、主演は今回が初めてだ。

しかもそんな話題性があるものでなんて……うう、なんか緊張してきた。


『しかもその作者が、直々に脚本も手掛けるらしい。俺も今調べてるんだが、嫌な話題しか耳にしなくてな』


「そ、それって、僕ピンチってこと?」


『彼方も奈緒もいるから、大丈夫だとは思うが……それなりに覚悟しておけ。んじゃ、また明日』


今まで色々な監督や、脚本家の人と会っているはずの衣鶴がそんなことを言うせいだろう。

すべてが脅しのように聞こえて、体がこわばってしまう。

主演ってことだけでもすごいことなのに、悪い噂ばかり聞くと不安でしょうがない。

通話が切れた後でも、僕はしばらく携帯を耳から離せなかった―



ドラマクランクインは、下準備も間もなくあっという間に幕を開けた。

いよいよこの日が来てしまったと思うと、嫌で嫌で仕方ない。

頭の中は今日のことでいっぱいで、近づくにつれ不安が大きくなる。

そのうえ……


「……人多すぎねぇか? こんなにいらねぇだろ」


「作家さんの希望に添えるため、なんだって。どんな人なんだろう」


「そうはいっても中学のガキだろ? 嫌な予感しかしねぇ」


「まあどんな人が来ても、僕は興味ないけどね。はむ」


どんな人でもお構いなしとでもいうように、三人は相変わらずだ。

衣鶴はなぜか不機嫌だし、奈緒ちゃんは食べ物を食べてばっかりだし、彼方は見るのを心底楽しみにしているようにも見える。

僕が弱すぎるのか、それとも三人がすごいのか……

どっちにしろ初めて会う人には変わりないんだから、不安くらい感じてもおかしくないのに。


「すいませーん、作家兼脚本のまひろ先生がご到着なさいましたー」


き、きた!!!


「うむ、全員ちゃんとそろっているようだな。私こそ、最優秀賞文庫に最年少で選ばれたまひろ様だ! 存分にたたえ、ひれ伏すがいいぞ!」


ちんちくりんな容姿と、ものすごく偉そうな態度。

彼女のインパクトと同時に、僕の不安はますます強くなるばかりだった。

そしてこれが、初めて僕達五人が出会った瞬間だったのですー


(つづく!!!)

ちなみに、なんですけど

最後にでてくるまひろこそが、

五人目のメインキャラになります。


まひろが大みそか生まれなために、

実は本編より先にちらりと出ておりました。

先日15日は奈緒ちゃんの誕生日でしたが、

次で出てくるのがわかっていたので

彼のみ出さずに

あえてふせさせていただきました。


さぁ、この人がどんな嵐を拭き荒らすのか。

こうご期待くださいませ!

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