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描いた未来のその先へ

ライバル会社の新人・LOVEGATEと

PV勝負をすることになった夕。

そんな彼に手を差し伸べてくれたのは、

仲間である衣鶴と彼方と奈緒だった。


四人で力を合わせた曲で、

いよいよ、決戦を迎えることに・・・!


「こうしてちゃんとお話しするのは、初めてご挨拶をした以来……となるんでしょうか。お久しぶりです、YOU☆さん」


優しそうな笑みを浮かべながら、僕に会釈する。

その笑みに何がこもっているのか、少し怖くなりながらもお辞儀をし返した。


七月十日、夏の暑さが地味に感じられてくるこの季節。

遂に発売日当日を迎え、僕はとあるCDショップへと来ている。

事務所や家でじっと待っているのが性に合わない衣鶴が、自分で売り上げに行こうと発案したのがきっかけだ。

そこまでは、よかった。


考えることまで一緒なのか、同じCDショップに彼女―城崎木葉ちゃんがいた。

同じ枚数に用意されたCDが、積み上げられている。

店員さんはもちろん、それを駆け付けたメディアの人もちらほらいる。

この中に、天王寺事務所の人もいるのかな。多すぎて、よくわからないけど。


「本当は番組で共演とか、もうちょっと気楽にお会いしたかったですね。すみません、突然の申し出で」


「い、いや……別にいいんだけど、どうして勝負なんて……」


「勧誘です。YOU☆さんは人気もあるし、素晴らしい方です。そんなお方がカノンプロにずっといるのは、幅が狭まってもったいない気もするんです」


ん? この子は何を言っているんだ?

彼女のセリフを把握するので精いっぱいな僕に対し、木葉ちゃんはすっとかがんで僕の手を取り……


「YOU☆さん、天王寺事務所に来ませんか?」


「ええ!? 急に何言ってるの!?」


「私はあなたと一緒がいいんです。何事も一生懸命に取り組むあなたが、とても好きなので」


これが嘘なのか、どうなのか。

こんなことをするのは、初めてではない。

それでもこういうアプローチは慣れてないし、彼女はなおも微笑んでいる。

色々な女の子から告白はされてきたつもりでも、実際に付き合ったことなんてさらさらない。

嘘なんかじゃないと物語っているような優しげな瞳に、まるで吸い込まれそうでー


「……ねーさん」


ふと前に現れた人に、あっと声が漏れる。

彼女の弟であり、LOVEGATEのもう一人、穂高君だ。

僕が何かを言おうとする前に、彼は木葉ちゃんの頭をたたいた。


「いった~……なにするんだよぉ、穂高〜」


「なにするんだよじゃねぇし……仕事中なんだけど」


「勧誘も仕事のうちだろ?」


「……そういうのうざいから……すんません……こいつの言うことは99%流してくれて結構なので……いくよ」


「ああ、首つかまないでよ~じゃあYOU☆さん、勝負頑張りましょうね~」


穂高君が連れていくがままに、木葉ちゃんはスタッフのもとに移動する。

売り場は割と近めで、彼女たちが何をしているかは一目瞭然だ。

懲りてないのか木葉ちゃんは駄々をこねているようにも見え、穂高君は相手にさえしていない。

あの二人、姉弟なのに全然似てないんだよなあ。


「お前、まさかとは思うがあの女に興味があるのか? 趣味疑うぞ」


「うわっ衣鶴! びっくりした、スタッフ会議っていうのは終わったの?」


「まあ一応。開店前だっつうのに、店ん前は行列だぞ」


テレビなどで宣伝したせいか、ファンの子達の反響は大きくてファンレターなどに行きますってたくさん書いてあった。

まあファンとしては、直接会えるチャンスだもんね。

僕としても応援してくれてるし、何かできるならやりたいって思ってたからちょうどいいんだけど。

それが対決じゃなければ、どんなにいいことか……


「そろそろ開店だ、覚悟は決まったか?」


「CDの枚数で決めるん、だよね? 本当に今日中に決まるの?」


「そこらへんが俺らの仕事になってんだよ。PVは知らねぇ奴とかの告知用に、ショートバージョンを流しておくんだと」


うひゃあ……用意周到だぁ……


「まあもしものために、彼方や奈緒に枚数稼ぎ頼んどいたから。あとはお前の頑張り次第だな」


「それって僕が負けるって思ってるってことだよねえ? 衣鶴ぅ」


「自分を信じろって。マネージャーとして、お前の実力は保証する」


そう言いながら、衣鶴はぽんと肩をたたいてくれる。

大きな背中が、いつもより大きく見えた。



CDショップが空いた直後は、もうてんやわんやだった。

ファンの子たちが次々に僕のCDを買いに来て、応援してますなどのコメントが一気に押し寄せてきた。

返答するのも間もなく、スタッフが次へ次へと回してゆく。

多分、混乱を招くためなのかな。


それはLOVEGATEの方も同じだ。

僕ら側とは違って、木葉ちゃんはファンにいろいろ言っていたりして、ファンの子がキャーキャー叫んでいる。

穂高君はうるさいのか、耳栓までしてるみたいだけど。


「あらあら、見事に若い子達ばっかりねぇ」


なんだか、聞いたことがある声がする。

ぱっと頭を上げると、思わず変な声が漏れそうになる。

だって、だって……そこにいたのは……


「やっほ~夕! きちゃった❤︎」


「お、おかあさ……!」


「叫んじゃったら、他の人にばれちゃうでしょ~? プライベートはきっちり守らないとね♪」


満面の笑みも、その声も知っている。もちろん、うちの母だ。

確かに、やるとは言ったよ? いったけども……


「来るなんて聞いてないんだけど! 衣鶴にばれたら、絶対怒られるよ!」


「いいじゃない、息子のCDなんだから♪」


「そういう問題じゃないよ!」


「あら、もう時間みたいね。じゃあ結果はうちで聞かせてね、夕♪」


スキップをしながら去る母に、はあっとため息をつく。

そのあともファンの対応をしながら、あっという間に時は過ぎていき……


「づ……づかれた……」


「夕、いいこと教えてやろうか」


「……なあに衣鶴……」


「CD枚数、お前の圧勝」


その言葉に、え!? と大きな声が出てしまう。

衣鶴はいつにもまして満足そうに、


「だから言ったろ? 大丈夫だって」


と笑って見せた。


「驚きましたよ、まさかここまで差がつくなんて」


ゆっくりと、木葉ちゃんが歩いてくる。

同じくらいのファンの対応をしたというのに、彼女は疲れている様子も見られなかった。


「私もみましたよ、PV。確かに、負けるのも納得ですね」


「あ、ありがとう……」


「約束ですからね。YOU☆さんの言うこと、何でも聞きますよ。私達」


負けたというのに二人の顔は満足げで、この結果に後悔をしていないように見えた。

パッと顔を見た衣鶴が、浅くうなずいて……


「じゃあ、いつか合同ライブでもやろうよ!! 今度は対決とかなしで!」


CD売り上げ枚数は、YOU☆の勝利。

そのことは瞬く間に広まって、僕の人気はますます上昇していくことになった。

この先の未来が、何があるかも知らずにー



SHOUT 作詞 YOU☆ 作曲 美波音

ああ この先には何が待っているのと 自分に問いただす

答えなんて求めてない 探すのは自分

大きな壁 見えない敵 何が待ち受けてたって

突き進もう 前へ前へ そこに光がある限り

わがままで臆病な心 まだあるのかい?

止まったって始まらない 昨日までの自分にbyebye


進め 進め 進め この道をまっすぐ

当たって砕けてもいい とにかく前に進むんだ

僕は歌う この魂が尽きるまで

僕は叫ぶ 届かない星だとしても


(つづく!!)

こういう風に夕の曲を作詞していると

自分に作曲の才能があればなあと思う日々であります。

遊びでキーボードはよく弾いていたのですが

まあ、無理ですよね笑

誰かしてもいいよって思う人がいましたら、

ほんと大歓迎なんでなにとぞ・・・


次回、何ですが

この話で第三部は一区切り、となります。

ですが、まだまだ彼らのお話はおわりません。

ついにあの人が登場です!

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