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皆で作る、最強ソング

ライバル事務所に所属するLOVEGATEの二人から

夕にPⅤ対決をしたいと申し出が!


衣鶴に連れられ、彼方・奈緒の力を借り、

勝負に挑むことに!


再生時間と書かれたものだけが、地道に進んでゆく。

イヤホンを通してでも、かすかにだが音が聞こえてくる。

いつもより真剣そうな顔の彼方と奈緒ちゃんを後ろから見守っている僕は、なんだか恥ずかしくて思わず身を縮める。


「かっこいい曲だね、これ」


聞き終えた彼方がイヤホンをはずしながら、僕に微笑む。

それを聞いて僕は、心底ほっとした。

彼方と奈緒ちゃんを連れて、やってきたのは収録スタジオだ。

今回PVを作ろうと思っていた、美波音さんが作った曲を聞かせている。

二人が断らないと思っていたのか、前もって音源まで準備していた衣鶴はさすがと思う。

奈緒ちゃんもしばらくすると、イヤホンをはずし自前のメロンパンをかじりながら、


「まあ悪くないんじゃない?」


と言ってくれた。


「今までの夕君が作ってた曲とは違うけど、作曲家さんに頼んだの?」


「う、うん。美波音さんっていって、衣鶴の友達なんだって」


「そうなんだ。セットもできてるみたいだし、思ったより準備万端なんだね」


「ああ、今日やるって分かってたしな。ちょうど二人とも空いてて助かった」


「そう聞くと、全部仕組まれてる気もするよね。誰が言い出しっぺか知らないけど」


奈緒ちゃんはそう言いながら、メロンパンを口にする。

彼の言う言い出しっぺは、まぎれもない社長だ。

まさか社長は、これを最初から狙っていたのだろうか?

確かに、偶然二人のスケジュールが空いていたのは事実だし……

相変らず、何考えてるかわかんないなあ……


「ところで夕、その格好は? もしかして、衣装なの?」


「あはは……もしかしなくてもそうだよ」


奈緒ちゃんが凝視するのも無理はない、と思った。

今回の曲はロックだからということなのか、衣鶴が用意してくれたのは全体的に黒を基調とされており、ヴィジュアル系バンドが着ていそうな服だった。


銀色に輝くボタンや、ズボンについているチェーンがやけにちゃらちゃらしてみえる。

今まで着ようとも思ったことがない服装だから、正直気が引けるというか……


「その服、夕に全然あってないよね。どっちかっていうと衣鶴っぽい」


「おいそれはどういう意味だ奈緒」


「まあまあ、二人とも落ち着いて。今までの夕君からしたら意外性もあって、僕はいいと思うけど」


相変らず彼方は、優しいな。

そんな彼方とは正反対な奈緒ちゃんは、ほんとだもんと意地を張っている。

先が思いやられるな……

思わずそう感じながら、僕は撮影の準備を始めたのだった。




新曲は、新たな自分をテーマにしたもの。

それをロックにかっこよく作ってくれた美波音さんのイメージに合うように、セットも特にこってはいない。

あえてシンプルにすることで、カッコよさを出す。

どんなPVにするか、僕はいつもカメラマンや監督に任せていて……


「かっこよさを前面に出したいんなら、歌っているシーンを多くとった方がいいと思うよ」


主なアングルや撮影を任された彼方が、セットを一望して言う。

多くのスタッフがああでもないこうでもないと頭を抱えているのに対し、彼の考えはあっけなくまとまっているように見えた。


「例えばサビの部分は、歌っているシーンだけでも迫力が増すと思うんだ。ドラムとかギターを後ろで弾いてもらって、夕君をメインにとってみるとか」


「……彼方、何もないセットでよくそこまでイメージできるね?」


「そんなたいしたことないよ、試しに撮ってみようか」


その後も彼方の言う指示通りに事は進み、順調のほかなかった。

あまりイメージがわいてこなかった僕からしたら、こんなにサクサク進むことがすごいと思う。

やっぱり彼方って、すごいんだな。カメラが趣味ってだけあって。


「とりあえず色々撮ってみたんだけど、どうかな? 奈緒君」


「ん、これくらいあれば充分。任して」


彼方が終わったかと思えば、次は奈緒ちゃんに感心させられる番だった。

奈緒ちゃんはたくさんの動画を次々に開いてはかっとしていき、うまい具合につなげていく。

その様子はとても、新入社員とは思えない手さばきで……


「おい夕。そんなに見てたら、こいつらしにくいだろ」


衣鶴がそう言ってくれなければ、ずっと二人を見ていたかもしれない。

それだけ目を奪われるものがあったし、尊敬するほどの物だった。


「ご、ごめん……二人が想像以上にすごくて……」


「お前に勝ってほしい気持ちは、みんな一緒ってことだろ」


「僕にっていうか、みんなが負けず嫌いなだけなんじゃない?」


「売られた喧嘩は買うのが礼儀、だろ?」


間違っているような、あっているような彼の考えを聞きながらはあと返事をする。

正直僕は、勝負をするということ自体があまり好きじゃない。

勝っても負けた人のことを考えると素直に喜べないし、どう声をかけていいかもわからないからだ。

今回の勝負も乗り気じゃない分、みんなが遠い存在に見えるっていうか……


「出来たよ、ゆ……夕? 生きてる?」


「ほえ? ああ、生きてるよ奈緒ちゃん」


「ごめん、夕君。疲れちゃった? 飲み物でも、買ってこようか?」


「大丈夫だよ、彼方。僕こそ、ごめん。二人が頑張ってくれてるのに」


「そういうのいいから、これ見て。これ」


奈緒ちゃんはそう言って、自分が今まで操作していたパソコンにつなげてあるイヤホンをはいと僕に差し出してくる。

僕が片方はめると、俺にも見せろとばかりに衣鶴が横から割って入る。

再生というボタンが流れた瞬間、自分でも予想していないものが流れた。


かっこいいロックな曲。

それだけでもすごかったというのに、歌っている映像や演奏シーン、そしてつなげたとは思えないほどの出来のよさ。


「これが……僕のPV……?」


こうしてみればという彼方の指示がきっかけだったというのに、それさえも感じさせない完成度。

そこに映っているのが自分だというのに、撮ったという感覚がない。

これが……奈緒ちゃんと彼方の力……!


「頼んどいた身で言うのはあれだが、お前ら人間じゃねぇだろ」


「衣鶴君、それほめてるの?」


「ほめてる、かなり」


「僕おなかすいた。ねえ、何か買ってきてよ。夕」


こんなにすごいことをしているというのに、二人は全く自覚がないのだろうか。

衣鶴といい、僕の周りって結構すごい人が多いんだな……


「彼方、衣鶴、奈緒ちゃん。本当にありがとう……」


「お礼なんていいんだよ、夕君」


「そうだぞ、夕。これからが本番なんだから」


「そんなことより食べ物ちょうだい」


「じゃあまた、みんなで行こうか。あまり食べすぎないようにね、奈緒ちゃん」


そう言いながら、三人へ微笑む。

あまり気が乗らない勝負事、には変わりない。

けれど、頑張ろう。

皆の思いを、多くの人に伝えられるように。

そう心に決めた日の空は、真っ青で綺麗に見えたー


(つづく!!)

ぶっちゃけ、はばたけの面子は天才しかいません。

こうみえてすごいんだぞって子がいればいるほど

ギャップ萌えが好みな作者は

はまっていくばかりであります。


次回、いよいよ対決本番です!

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