春に吹く新しい風
新たなスタートを切った半年後。
春になった面々は、新曲に足りない何かを探すべく
彼方のもとへ!
そこにいたのは、新人と名乗る奈緒という少年で・・・?
「それにしても、YOU☆って本当に存在したんだね~……はむ。見た目的には、彼方の方がかっこいいと思うけどなあ。はむ」
目の前に本人がいるにもかかわらず、容赦ない言葉を次々に投げかける。
それでも彼は気にしていないのか、メロンパンをほおばり続けた。
異例の人事ともいわれている、最年少の男の子。
見るからに外国人っぽい彼が話しているのは、流暢すぎる日本語だ。
食べ物を食べている様子はまるで、小動物でも見ているようで……
「え、えっとぉ、こちらこそ初めまして。大西夕です」
とりあえず自己紹介をしようと、彼の背に合わせてかがんでみる。
宮下君は相変わらずパンを食べながら、浅く会釈して見せた。
「あ、それとこっちが僕のマネージャーの、上村衣鶴」
「……どーも」
「衣鶴、夕、彼方……女の子っぽいのばっかりだね。はむ」
「おいガキ。年上には敬語って習わなかったのか?」
「だってため語でいいって彼方が」
まるで飛び火を食らうような勢いで、衣鶴は彼方を睨むように見ている。
彼方は苦笑いしながらも、ごめんと小さく謝った。
「それで、僕に何の用?」
「こいつのPVを直してほしいんだ。彼方に見せてもらっただろ?」
「ああ、それなら見たよ。ほんと、ひどかったよね。編集が雑だし、いいとこが全部つぶれちゃってる」
「け、結構ずばずば言っちゃうんだね? 君」
「僕は感想を言っただけだよ。時間がもったいないから、データ貸して」
彼に言われ、持ってきたデータを衣鶴が渡す。
わきに抱えているパソコンを開き、起動を待っている間こそりと衣鶴は
「なんだこいつ、めっちゃくちゃ生意気なんだけど」
とつぶやいた。
「ダメだよ、衣鶴君。そんなこと言っちゃ」
「これが中学生だと思うとなおさらイラつくんだよ」
「衣鶴~、あんまり言うと怒られるよ?」
「いいんだよ、全然耳に入ってねぇみたいだし」
そう言われて宮下君の耳に、イヤホンがはめられていることに気付く。
起動したパソコンには、編集用のソフトが開かれる。
待っていたとばかりに彼は、もらった動画のデモと撮ってきたものをつなげだして……
「い、今どきの中学生って、パソコン出来るんだね……」
「できはしても、これほどまでとはいかないだろ」
「会社の人が言ってたんだけど、彼のことは相当名が知れてるんだって。局長がこの新聞を見て、彼しかいないって思ったみたいで」
彼方が手渡してくれたのは、新聞の一面だった。
小さくではあったけど、確かに彼のことが特集されている。
異端の天才児、宮下奈緒。
アメリカ生まれのハーフで、十二歳にして全国模試でトップを飾った。
パソコンの能力にたけていて、その実力はプロ顔負け……
その記事を読んで、やっと思い出した。
数年前に、お母さんが最近の若い子はすごいと感心していたのを。
新聞自体は二年前のものだったし、写っている彼も心なしか小さく見える。
と、いうことは……
「もしかして局長さんが彼を雇ったのって、編集の仕事で?」
「うん、まだ小さいからって僕が世話係してるんだけど……色々なプロデューサーさんから頼まれごとの嵐でね。マイペースな性格からか、あまりよく思ってない人もいるし」
「そりゃこんだけ生意気ならな。実力がどうかは、PVの出来次第だが」
衣鶴が嫌味たっぷりに言っている間も、彼の操作は黙々進んでいる。
特にすることがない僕は、そんな宮下君の後ろ姿を眺めるしかなかった。
まあ衣鶴は彼方に、愚痴みたいなものをこぼしてるけど。
「できた」
まだ十分くらいしか、たっていないだろう。
それなのに宮下君は満足げにイヤホンをはずし、僕と衣鶴に片方ずつ差し出してくる。
交互に顔を見あわせながらも、僕達はイヤホンを耳にする。
彼が再生した動画は、前のものと比べ物にならなかった。
数々のアングルをうまくつなげることによって、生まれる雰囲気のよさ。
歌とシンクロしているかのように、背景や踊ったダンスがしっくりくる。
もともと全部カットで取っている動画なのに、全部が一つになっているような違和感一つないこの出来は……
「……完璧すぎて腹が立つ」
僕が言う前に、衣鶴が顔をしかめてつぶやく。
それでも宮下君はさも平然とした顔で、
「ご褒美はお金じゃなくて、食べ物でお願いね」
と言ってのけた。
「なん、ていうか……すごいんだね~宮下君って」
「そう? これくらい普通でしょ」
「いやいや、十分すごいって! これからのPV編集もお願いしたいくらい!」
「別にそれくらいいいよ? そのかわり、食べ物ちょーだい」
どうやら彼は、本当にマイペースらしい。
僕が頼んだことに衣鶴は呆れたようにため息をついてるし、彼方は用意していたお菓子を差し出している。
もしこの子の力が加われば、今まで以上にいいものができるかもしれない。
そう思うと、なんかワクワクしてきたかも!
「食べ物くらいお安い御用だよ! あ、僕のことも呼び捨てで全然いいから、これからよろしくね! 宮下君!」
「その宮下君ってなんか慣れないんだよね。僕も奈緒でいいよ、夕」
「そう? じゃあ、奈緒ちゃんで!」
ちゃんづけした、せいだろう。
彼は心底不思議そうな顔をして、僕へ
「僕、男だよ?」
とごもっともな意見が飛び出した。
「そうなんだけどさなんか奈緒ちゃんって、奈緒ちゃんってイメージがあるっていうか……かわいらしい感じがあるんだよね!」
「なんだそれ」
「でも、わかる気がする。奈緒君、かわいいもんね」
「褒められてるのかけなされてるのかわかんないから、とりあえずどやっとくね」
そう言いながら、奈緒ちゃんはよろしくと浅く会釈してみせる。
こうして僕は彼との出会いを果たし、次のステップへと歩みだしたー
(つづく!!)
早いものでもう1月も終わり。
年を越したのがついこの間みたく
感じてしまいます。
今年は彼らと共に成長していきたいなぁと
願う作者でございます。
次回、奈緒ちゃん節炸裂!




