表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/45

頼れる味方と心の支え

大西夕はどこにでもいそうな高校三年生。

平凡な日々を過ごしていたさなか、突然現れた

上村衣鶴と名乗る青年の登場で

彼の運命は徐々に動き出すー

『えっ、スカウトされた? 夕ちゃんが?』


驚いたような声が、携帯越しに聞こえる。

うんとため息交じりに返事すると、彼は僕とは逆に


『なんていうか……その話をした当日に来るなんて、よくできてるね……』


と冷静に分析したような、口を開いた。

ベランダから見える空から、満天の星空が広がってみえる。


あの一件のことがどうしても夢のように思えてしまう自分がいて、耐えきれずにたかちゃんに電話していた。

現実といわんばかりにおしつけられた名刺は、いつみてもぐしゃぐしゃで綺麗には思えない。

初めて会ったというのに、なんであんなに言われるのかもわからない。

そんなにすごいのかな、僕って。全然実感がわかないっていうか……


『その人、どこの会社の人なの?』


「カノンプロダクションってとこのらしいよ。きょうちゃん、知ってる?」


『うーん……聞いたことがあるようなないような……スカウトされるくらいだから、芸能会社じゃないかな? その人の誘い受けたら、夕ちゃんほんとに人気者になっちゃうかもよ?』


「やめてよ~冗談は~~」


芸能人なんて、やる気にもならなかった。

僕はいたって普通の生活を送ってきた普通の高校生だし、どう見てもテレビに出ている俳優さん達の方が倍にかっこいい。

踊って歌って演技して、同じ人間には思えない。


俺がお前を、もっときれいで輝いたステージへ連れてってやる。

そう、上村さんは言っていた。

そんなことが、可能なのだろうか。

彼にそこまで言わせるほど、僕に魅力があるようには思えないな。


『まあ夕ちゃん、顔はいいし考えてみればいいと思う。少なくとも、オレは賛成かな』


「顔はって……他に褒めるとこないの、たかちゃん」


『ごめんごめん。なんにしても、オレは夕ちゃんを応援するよ。決めるのは、夕ちゃん自身だけどね』


そう言ったたかちゃんは、勉強するからと言って電話を切ってしまう。

通話終了のボタンを押しながら、ご飯でも作ろうかと部屋に戻ろうとした。

そんな、時。


「うわっ、夕! そんなとこにいたのね! もう、帰って来てたなら何か言いなさいよ~」


濡れた髪から、キラキラとした水滴が一滴たれる。

肌を隠したバスタオルが、いつにもまして白く見えて……


「ってお母さん! 服! そんなことより服着てよ! なんでバスタオルのまま出てきちゃうの!」


「だぁってぇ〜風呂あがりって暑いんだもぉん。あ、もしかして夕。お母さんの色気むんむんな裸に、興奮しちゃった?」


「そういうのいいから!!!」


強引に脱衣所に戻らせ、着替えが終わるまでと扉を抑える。

これが僕の母、大西朝香おおにし あさか

年齢の割にさばさばしていて、豪快で。僕とは正反対な人だ。


今だから言える。授業参観とかに来てほしくない親のランキングに、君臨してもおかしくないほどのお騒がせっぷりだと。

こんな風に息子の前で裸でも平気なのが、何よりも証拠。

ほんと、どうしたらこの母から僕が生まれたのか……いまだ疑問なんだよね。


「着替えたわよぉ、夕。上着くらいは脱いでもいいでしょ?」


「いいけど……お母さんこそ、帰って来てたなら言ってよ。全然気づかなかった」


「あっはは~いないと思って先にお風呂入っちゃった❤︎ 夕も入ってきな! 晩御飯は母さんにどんと任せなさい!」


言うが否や、早くいけとばかりに背中をたたく。

そんなお母さんを見ながら、僕は思わずため息を漏らすのだったー



「それでね、佐藤さんってば怖くて逃げだしちゃったんだって。若い子は、肝が据わってないわね~」


「そりゃあ……不良に絡まれたらそうなるでしょ……」


「あら、夕も? 軽く説教したり、しないの?」


「それはお母さんだけ」


並べられた料理の数々に手を付けながら、お母さんの話に突っ込みを入れていく。

僕の家族は現在、母親と二人暮らしだ。

お父さんもいたんだけど、昔に亡くなっちゃって女手一つで僕を育ててくれている。

迷惑ばかりかけるのも悪いと思って再婚も提案したけど、お母さん曰くお父さん以外いい男がいない、らしい。

こんなお母さんだからこそ、僕は好きなんだよね。


「あ、そうそう! その佐藤さんから借りてきたのよ、皆川篤志のライブDVD! 夕もみない?」


「皆川篤志って、今人気の歌手の? まだ好きなんだ」


「いいでしょ~? 好きも嫌いも、年なんて関係ないわっ」


たかちゃんと芸能界の話をし、上村さんに会いスカウトされ、そのあとに人気歌手のDVDを借りてみる。

ここまで聞くと、なんてできた都合の話だと思う。

ただの偶然なのか。まるで僕に、アイドルをしろと言わんばかりのシチュエーションばかりだ。


母が流したDVDに映っている青年、皆川篤志みながわ あつしは有名な歌手の一人だ。

抜群の歌唱力と、かなりの美形。

それが重なって女性には特に人気である。


彼のような選ばれた人にしか立ち上がれない、あのステージ。

あそこからは、どんな風に見えるんだろう。

僕にはペンライトが輝いてるようにしか、見えないけど。

違うんだろうなあ。あのステージで見る景色と、ここで見てる景色って。


「お母さん。カノンプロダクションって、知ってる?」


「知ってるも何も、篤志君の所属会社じゃない。結構有名よ?」


「そ、そうなんだ……そのカノンの人にさ、今日……アイドルになれ言われちゃって……」


「うっそ! 夕、それスカウトって奴じゃない! 大出世のチャンスよ、夕! やっちゃいなさい!」


やはりそう来たか、と思った。

昔からお母さんはアイドル好きだし、この反応は予想できたけど……


「やっちゃいなさいって、アイドルだよ? 僕が売れると思う?」


「そんなの、やってみなきゃわからないじゃない。夕はお父さんに似て、顔だけはいいんだから」


「お母さんまで顔だけって……」


「それに、あんたは小さくて覚えてないかもしれないけど……昔から歌ったり踊ったりするの、得意だったじゃない。去年の文化祭だって、お母さん感動して泣いちゃった」


幼い頃のことは、よく覚えていない。

お母さんがCDを聞かせてくれたり、音楽番組を見たりしていた影響か音楽にはなじみがあった。

今も嫌いじゃないし、割と好きな方ではあるけど……


「そりゃあねアイドルなんて、狭き門だって分かってるわよ? でもその手のプロに言われたんでしょ? なら、夕には可能性があるってことよ」


「可能性……」


「自分のやりたいことって案外、身近にありすぎて気付かないものなのよ」


母の言うことが本当なのかどうなのか、わからない。

ただテレビで流したDVDをみて、興味がもくもくわいてきたのは確かだ。

見てみたい。あの上に立った景色を。

そしたら見つかるかもしれない。ずっと探していた、夢中になりたいことー


「お母さん……僕……やってみても、いいのかな?」


「当然っ。夕なら、大丈夫。なんたって、私とお父さんの自慢の息子だもの。目指すなら大きくトップアイドル! 篤志君のサインも、もらってきてねっ」


「はいはい」


大西夕。十八歳の夏。

夢の第一歩が、ゆっくり幕を開けたのです。


(つづく・・・)

ちなみに作者は、

こういったお母さん嫌いじゃないです。

書きやすくて助かります。

何の話してるんだって感じですね、

忘れてください。


次回、そして物語はここからはじまるー!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ