そして未来は繋がってゆく
衣鶴、彼方の過去
そして篤志のことが分かった夕。
自分のため、二人のため、
運命は大きく動き出すー
「おやおや、ダメじゃないですかァ。夕サァン? 自粛中に会社に来るとは、いい度胸しておりますネェ?」
くつくつ笑うその笑顔が怖くて、怒っているようにも見える。
その不気味さに思わず僕は、つばを飲み込んだ。
彼方さんと衣鶴さんの事情を知って、まだ一時間もたっていない今現在。
僕は大急ぎで電車に走り、会社に向かった。
幸いそんなに時間がかからなかったし、僕がここの所属だったから裏口から通してくれた。
オフィスではたくさんの人が電話の対応をしており、正面玄関では何人かの記者が押し寄せている。
裏口から入るが否や、待ち構えていたのは社長だった。
メディア対応に追われているからなのか、着ている服はちゃんとした黒いスーツでしゃきっとしていた。
「す、すみません……今、いいですか?」
「ええ、かまいませんヨ?」
「衣鶴さんの処分は追って連絡する、んでしたよね? その、判断は……?」
「あ~そのことデシタカ。それでしたら、彼から話がありマシタヨ? ここをやめると。正直惜しい人材ではありますがネェ」
「彼から、篤志さんのこと聞いたんですよね? なら、クビをなしにすることもできますよね?」
僕が言うと、社長はほほうと興味深そうに顔を向ける。
相変らずニコニコとした表情は変わらず、何を考えているかは読み取れなかった。
「確かにそれも可能ですが、ご本人からの申し出デスヨ? それともあなたは、彼を説得させてきたのデスか?」
「そ、そうじゃないですけど……篤志さんは衣鶴さんのことを、身を挺してでも守ったんです! それで衣鶴さんが責任を感じるなんて、おかしいじゃないですか! 僕は篤志さんがいけなかった舞台に立ちたい! それにはまず、衣鶴さんがいてくれなきゃ、ダメなんです!」
無我夢中、とはこのことだろうか。
篤志さんならこうするんじゃないか、こういうんじゃないかってことがたくさん出てくる。
まるで、ドラマで役になり切っているような……この感覚。
彼はきっと、衣鶴さんに続けてほしいと思っている。たとえ自分がいなくても、やってほしいって思ってるんじゃないかって。
「ホッホッホ。随分面白いことをおっしゃるのですネェ、夕サンは。面白い、実に面白い!!」
な、なんか急に叫びだしたなこの社長……
もしかして僕、余計なことまで言っちゃったんじゃ……
「だ、そうですが……このままおずおずとおやめになってしまうのデスか? 衣鶴サン」
え???
社長が見ている方向をぱっと振り向くと、柱から出てきたのは衣鶴さんだった。
一緒に来ていたのか、彼方さんの姿もいる。
「い、衣鶴さん!? い、いつの間に!」
「……あれを聞いてお前が行くとこなんて、ここしかねぇと思ってな」
ひぃぃ、見破られてるぅ……
「俺がやるやらない問題はいいとして、篤志のことはどうすんだ。ただの事故死にするのは、ムリがあるぞ」
「ホッホッホッ、ワタクシを誰だと思っているのデスカァ? それくらい、ちょちょいっとやってのけますヨ。ここの社長はワタクシなのですから。それでどうなさいマス? 続けられマスカ?」
社長が嫌味そうに笑いながら言うのは、相手が衣鶴さんだからだろう。
彼に言われてムカついているのか、気に食わないように衣鶴さんが見つめている。
彼はため息をつくと、社長に一言。
「やるよ。やりゃあいいんだろ」
とつぶやいた。
「では役目続行デスネェ。ワタクシ、とてもうれしゅうございマァス」
「あんたの場合、仕事がなくなるからってだけだろ」
「なんのことやら。あ~でも篤志サンがいないのに、誰のマネージャーにつくおつもりで?」
「そんなの、わかりきってるだろ」
衣鶴さんが僕の前に立つ。
僕を眺めみながら、ふっと笑みを浮かべた。
それはいつにもましてきれいで、自然なもので……
「夕。俺には俺の事情がある、それに首を突っ込まないでくれたのには感謝している。お前を見た時から思っていたものは、本物だった。それを証明したのは紛れもなく、お前がやったこと……俺を引き留めたんだ、それなりの覚悟はあるってことだろ?」
「もちろん! 僕のマネージャになってもらえますか? 衣鶴さん!」
「前も言いましたよね? ため語でいい、って。それともこの関係を続けるおつもりですか?」
似合ってもいない敬語口調がなんだかおかしくて、前に言われたことを思い出させてくれて。
思わず吹き出してしまい、笑顔をこぼす。
「これからもよろしくねっ、衣鶴!」
今、きっと篤志さんも喜んでくれている。
そう思える自分が自然といて、これから始まることに不安はもうなかった。
新たな物語の、幕があがるー!
(つづく!!!)
第二の分岐点も、年内に完結することが
出来てほっとしています
新キャラとして創作する際、
篤志がいなくなることは
最初から考えておりました。
篤志の死を描くことによって、
夕や彼方、衣鶴の成長に
繋がると判断したからです。
短編の方を読んだ方へは
どうして衣鶴が夕のマネージャーなのか、
呼び捨てで呼び合うようになったのか…
この話を読むと、
すべてつながるようになっています。
こういうの、好きなんですよね。
分かる方いませんか
次回の更新は、ツイッターでお知らせした通り、
おやすみし、1月9日に行います。
一歩前進した三人の行方は、いかに!
それではみなさま! 良いお年をー!




