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秘めし能力を解放し

YOU☆としてデビューして一年。

環境ががらりと変わる中、

衣鶴から言われたのはドラマのオーディションで・・・?

時計の針が静かに進むのを、ごくりと唾を飲み込みながら眺めみる。

次々に呼ばれていく人々を見ながら、僕は一つため息をついた。

どうして僕は、ここにいるのだろう。

改めて考えても、その答えは出なかった。


篤志さん主演のドラマ、「今宵、舞踏会で会いましょう」。

今日僕がここにいるのは、そのオーディションだ。

どんなに僕が嫌だと渋っても、行きたくないと言っても彼は曲げはしなかった。

結局その時は、彼方さんが無理にさせるのはかわいそうと助け舟を出してくれて保留って形になったんだけど……

後日、衣鶴さんは、


「四月二十日、池上スタジオ応接室。九時」


とだけ送ってきた。

それがオーディションのことだと気付いたのは意外と早くて、ぎりぎりまで行くのを迷っていた僕に


「なんでもやってみるのが一番よ、夕! 当たって砕けろってよく言うじゃない!」


と、母にくぎを刺されてしまった。

砕けたら元も子もないのに、とも思ったがさすがにこれで行かなかったら辞めさせられるかもしれない。

それを普通にやってしまう人だから、僕も行かざるを得なくなった。

もう、この際受かっても受からなくてもいい。

ここに来た以上、やることをやって帰るだけだ!


「次の方~応接室へどうぞ~」


ドキッと心臓が高鳴る。

思わず裏返った返事をしながら、部屋のドアを開けた。

その部屋は応接室というより、さながら受験会場の面接場のようで。苦い思いをした高校受験を思い出させられた。


「初めまして! カノンプロダクション所属のYOU☆、十九歳です! よろしくお願いします!」


「はい、じゃあそこに座って」


監督、脚本と書かれたプレートの席には風格漂う男の人と女の人が優しげな瞳を向けている。

言われるがまま、僕はゆっくりと腰かける。

そして前を見ると、監督たちの横にいたのはなんとそこには……


「あはっ、夕ちゃんってばガチガチじゃんw かっわいい~」


「えっ、篤志さん!?」


「ども~! このドラマ主演の皆川篤志です♪ オレも試験官役として、参戦しちゃいましたぁ♪」


不安で仕方なかった緊張が、彼の笑顔を見て少し和らいだ気がする。

それでも状況はほぼ変わらないも同然で、篤志さんの言葉に返す余地もなかった。


「台本は持っているかな?」


「あ、はい。ここにあります」


「じゃあまず、8ページのサミュエルのセリフを読んでくれるかな?」


え、まさかのいきなり本番!?

てっきり質問とか、色々受けてからだと思ってたのに!

でも篤志さんがいるから、なのかな。さっきよりは落ち着いている。

8ページ……確かここは、旅立つ王子を愛おしそうに見送る場面で……


『……王子……約束、してくださいね? 必ず、無事で帰ってくると……出ないと、私は………』


そこまで読んで、あれ? と気づく。

確かサミュエルって、王子に思いを寄せるお姫様だよね? ってことは……


「あの、僕は女役をやらされるん、でしょうか……?」


「ぶはっ、夕ちゃんってば真に受けすぎwww ただのオーディションなんだから、その役に決まったわけないじゃん! マジうけるww」


正直に疑問をぶつけただけのはずなのに、篤志さんは面白いとばかりにバカ受けしている。

そういうもんだということをしらないものだから、すごく恥ずかしくなってしまった。

それからも様々な役を、監督から指示された。

僕がセリフを読むたびに脚本家さんと話したりして、何が行われているのか少し不安にさえなった。

篤志さんはなんだか退屈そうに、あくびしていたけれど。


「YOU☆君は確か、歌手だったよね? 演技の経験は?」


「え、えっと今回が初めてです。学生時代に、演劇自体はやったことありますけれど……」


「演じることは、好きかい?」


監督に言われ、思わずえ? と声が漏れる。

三人の目はまっすぐ僕を見ていて、答えを待ち望んでいるかのように見えた。

少し戸惑いながらも、僕は大きくうなずいてー


「はい、好きです。役を演じていると、この作品のキャラに自分がなれているような気がするんです。この台本を読んだ時、すっごくワクワクしました。どんな物語になるんだろうって。だから僕、このお話が大好きです! もっと、もっと彼らの世界へ飛びたい! はばたきたいって、思ったんです!」


抑えきれない思いが、あふれてくる。

こんなことを感じたのは、いつぶりだろうか。

文化祭で、演劇をやった時? それとも幼稚園のお遊戯会の時?

これが何もないって思っていた僕に、やれることが見つかったっていう証拠なのかな……


「よぉし、そこまで言うならやろうよ夕ちゃん! オレと一緒に! とてもつもなくすんごいドラマにしようぜ!」


「えっ、それって……」


「もちろん合格だよっ♪ オレの親友役でねん♪」


篤志さんが立ち上がりながら、にんまり笑う。

こうして僕YOU☆としての物語が、また一つ動き出したのですー


(つづく!)

実はこの話、友達からオーディションを書いてほしい

と言われて出来た話で、もともと書かないつもりでした。


夕ちゃんの天然ボケがまあかわいいので、

結構気に入ってます。

作者的に、結構お気に入りなんですよ。夕ちゃん


次回、いよいよドラマ初挑戦!

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