31話『課金』
「何だって……」
咲菜のお父さんは信じられないような表情をした。
それを見ていたお母さんも表情が固まった。
そこにいた男は
「だからあなたの時代は終わったのです、貴方座は私が頂きます、今まで取締をしていた私、田中がです!」
ドヤ顔で男は見下すように言った。
「私の財産は?」
「あなたの会社は私が頂きますからあなたの財産である会社はもう私の物です」
「いや、お金の事なんだが、貯金は大丈夫なんだよな?」
「? はい? どういうことですか?」
お父さんはまあそんなことないだろうみたいな顔で
「いや、私の貯金を取ることはないだろうかと言うこと? 後責任が出ても私にはもう関係ないと言うことでいいのかね?」
「当たり前でしょう? それとも、まだこの会社の社長を続けたいと?」
と嫌味ったらしく言った。
「え、それはお前に譲るよ、そのために動いてたし」
「……はい?」
男はきょとんとした。
「どういうことですか?」
男は質問した。
「え、だってもう働きたくないし、働かないでも生きていける金があるから正直止めたかった。でもなんか責任ってあるじゃん! それが邪魔でずっとやめるに止めれなかったんだよ! 正直今スゲエホッとしてる! これでSSRのガチャに専念できるよ! 玉はもうすでに揃ってるんだ!」
「私も! 期間限定のガチャにつぎ込める! 少なからず私も仕事のせいでそれに専念できなかったからこれでもう働かないでガチャできるんだ! やった!」
2人は大喜びしていた。
「へ? そんなことでいいんですか?」
「うん、いいよ」
「異議なし!」
田中はさらに聞いた。
「そのガチャって言うのは携帯ですか? 誰から教わったんですか?」
すると2人は
「「咲菜の彼から」」
と言った。
田中は思った。
(これ、私が望んだ結果なのだろうか、少しは堪えてくれないとなんかカッコつけた意味が……それに他の皆が反対するように私もなんかその男を容認していいのか分からなくなってきた……)
そんなことを思っている間に
「いやーまさか世の中にはこんな夢のような技術が発展しているとは」
「いや本当に便利な世の中ね、こんなに素晴らしい世界を私は知らなかった」
と嬉しそうに話していた。
(なんだろうか、私はこの人を追い越して嬉しいのだろうか、むしろ働いてほしいとすら思えてきた。そして何だか悲しくもなってきた。ずっと追いかけてきて追いかけてきてやっと追いついて今度は抜かせたと思ったのにすごくチープな存在になってしまったと言う幻滅と失望を……そして元のこの人に戻したいと言う悲しみが……)
「あのーやっぱり社長はあなたのままでも……」
「嫌だ、もうお前が乗っ取るって言ったじゃないか、私の課金に口を出さないでくれ」
「私ももう働きたくない」
「ですよねー」
田中はすごく寂しそうな顔で立ち去った。
「? 最後どうしたんだあいつ?」
「さあ?」
2人はそれぞれにスマホを取り出してゲームをした。




