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③話『迫りくる死』

「休みだからっていつまで寝てるのよ! 早く起きなさい! 親衛隊の人たちがあなたを殺しに来てるわよ!」

「だから寝たふりでやり過ごそうとしてんだよ! 声を掛けるな! 糞ババア!」

「アンタ! 母親に向かって糞ババアとは何よ! 心配して言ってあげてるんだから!」

「嘘だ! 絶対に楽しんでるだろう!」

「そんなことないわよ! じゃあ私これから友達とジャーミーズのコンサートだから行ってくるわね!」

「やっぱり心配してねえだろう!」


そしてお母さんは外に出ると

鍵を閉めて、


「あのどいてくれませんか? 邪魔なんで……」

「あ、はい申し訳ありません」


と言って親衛隊があけた道を通って、

そのままジャーミーズのコンサートに出かけた。

優は震えながら布団にくるまった。


「これで良し、、昨日の女の言葉を気にし、一応は長期戦に備え非常食にカップ麺! そして保存の効く食べ物の用意! そして暇なつぶしのためのゲームもエロゲーも漫画も撮り溜めしたアニメもある! 会社には変な集団が家の前にいますので当分は休みますと言ってOKはもらえた、どうやら先輩がたまたま昨日のことを見ていたことで、気を効かせてくれたらしい! ホワイト会社最高! よーし、あいつらとてずっとはいられまい! 大丈夫! スマホもあるからあの子と連絡すれば休みの日の今日中には丸く収まる可能性もある! そうすれば会社にも迷惑は掛からない! 完璧な計画だな! ヤッタゼ、ガハハ!」


そう言ってさっそくカップ面を啜った。

完全に人任せの計画であった。

そして一時間後

親衛隊は

2回目の交代をして優にスピーカーで呼びか続けている


『近童 優! 我らが姫! 小井田 咲菜様の恋人になった罪は重いぞ! いい加減出て来い! この糞ニート風情が!』

「しつけえなあ、何であんなに元気なんだこの若者共が!」


そんな愚痴を言ってるとラインが届いた。


『ごめんなさい! 私のせいでこんな酷い目に逢わせてしまって! 私が何とかしてみせる! だから心配しないで!』


咲菜からのラインであった。


「良かった、今日中に何とかなりそうだ! 後は咲菜が来るのを待つだけだ!」


するともう一通ラインが来た。

今度は尾貞からだ


『お前、今の状況を咲菜たんだけに押し付けるんじゃないろうな? さすがに下種の極みだぞお前?』


と送ってきた。


「お前は今の状況分かってんのか? こんな状況で外に出たら俺が殺されて咲菜が泣いて犯罪者が出てちょっとした騒動だぞ」

『お前一人の命程度じゃ皆すぐに出て来れるぞ』

「そう言う問題じゃねえ! てか失礼だぞ!」

『良いじゃねえか、お前が死ねば丸く収まる、死んで来い』

「嫌だ! 絶対に嫌だ! 僕まだ死にたくない!」

『わがまま言うな! 人間いつかは死ぬんだから!』

「今死にたくない! てかお前は逆の立場ならどうする!」

『男気を見せる!』

「口ではなんとでもいえるぞ!」

『口でも言わないお前よりマシだ!』

「何だと!」


その返事以降ラインは帰ってこなかった。


「何だよ畜生! 何で俺が彼女作っただけで敵がこんなに増えるんだ! 咲菜と付き合うことがそんなにいけないことか! 絶対に離さねえからな!」


すると優は


(待てよ、このまま咲菜に任せたらあいつは罪悪感に押しつぶされて俺と別れようとするんじゃないのか? そうなると俺はまた非リアに戻るのか……)


そんな不安にが優の頭の中を駆け巡る。


「いやいや、あんなのどうやって俺一人で沈めるんだ! 無理だってこういう時は咲菜ちゃんに任せた方が良いって! 死にたくないんだから俺! 大丈夫! 咲菜は俺から離れたりしない! 自信を持て!」


そう現実逃避しながらテレビをつけた。


『ヒョロ太! お前のそれは勇気ではない! 無謀って言うんだ!』

『たとえ無謀でも男ならば立ち向かうべきなんだ! それが男気ってもんだろおおおおおおおおおおおおおお!』


ブチ

そのセリフを聞いて優は再びカーテンを開けた。


『とっとと出て来い! お前にあの方に近づいた罰を与えるのだからな!!』

「えっと、1,2,3……どんだけいるんだよ……」


優は数えきれないと判断した。

何故ならたくさんいることと、壁によって人が隠れてしまっていたからだ、


「100人以上はいるっぽいってことは分かった、うん、男気か……」


そして目を閉じて考えた。


「うん! どうやったって無理だ! こんな人数相手にした瞬間俺は死んでしまう! デートだってまだなんだ! せめてデートの1つをしてキスの1つをしてエロの1つをして、後それから……」


優は一気に自分の欲望が溢れ出た。

しかし、このままでいいのかとかでも出るのが怖いとか様々な感情が優の頭を過った。

しかし、優はこれだけは考えることはなかった。

咲菜と別れること、

優にとってその選択肢はなかった。


(だって考えてみろよ、どうせ彼女作ったらこれ以上はないだろうけどどうせ苦難はあるんだぜ、ちょっと人が殺気立ってるぐらいで彼女と別れるとかさすがにないだろう)


そのため、優は咲菜を絶対に別れない意思は固かった。


「でもどうにかしないといけないよな、なんか尾貞が言ってたこともなんか正論な気がするし、さっきのアニメだって男気がなんだって言ってたし……いやいや、何流されそうになってんだ! あれはさっきのデブアンとは違って大量人数だぞ! それにデブアンみたいな男もいるし……」


ウダウダと優柔不断な考えで部屋の中をウロウロしていた。

優は考え事の時は意味もなく自分の部屋をウロウロして落ち着かなくなる、

そしていつも最終的にろくな考えが浮かばず勢いで適当に答えを決めつけて何とかなるだろう精神で行動してしまう、

それが優の失敗の原因である、

そして今回も優は心配するのであった。


「よし! 相手だって人間なんだ! 俺を殺したら犯罪だ! きっと話し合いで済むだろう! それに俺はこれでも昔、柔道の選択授業を受けていたんだ! それに柔道系のアニメも2・3回見た事あるんだ! 大丈夫! あの感覚だ!」


そして舐めたように柔道家気取りで外に出ることを決意した。

ドアを開ける瞬間優は一瞬にして汗が噴き出した。

緊張によっての発汗である、

元々優は汗っかきなタイプである。

体型は太ってはいないがペンを握るだけでも手の中は汗まみれであることが多い。

ドアノブをふれた瞬間一瞬にして体温が奪われる感覚が優を襲いかかり、体中が悲鳴を上げるように震えだした。


「落ち着け、俺……確かに怖いのは分かる、しかしここで終わるのか俺! 主人公になるんだ! 良くあるだろう! アニメや漫画やラノベで! いきなりリア充になった主人公がボロボロになりながらもカッコよく相手と戦うシーンを今の俺なら出来る! だってリア充何だもの! 昔のくそ童貞非リアではない! くそ童貞リア充だ!! ならば大丈夫! 落ち着け落ち着け落ち着けええええエエエエエエエエエエエエエエ!!」


優は自分の状態に完全に酔っていた。


*****************************************************************************


「あいつ、俺の冗談真に受けたかな、それなら面白そうだけど……まあ受けただろうな、あいつ結構アホだし……」


尾貞はくすくす笑いながらつぶやいた。


********************************************************************************


そして、尾貞の思惑通りガチで調子に乗ったリア充こと近童 優は勇気と勘違いした傲りでドアを開けた。


「待たせたな!」

「フン、ようやく出て来たか……臆病者」

「フン、さっきまでの俺ならな、だが今の俺は違う! あの子のために戦うと決めたんだ!」

「ホー、まあいい我々はお前を許さん! あの優しく、美しく、気高く、そして素敵な慈愛をくれるあの方をお前に汚させてたまるかああアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!」

(……何咲菜ちゃん、君は宗教団体の教祖なの?)


あまりの信愛っぷりにさすがに優はドン引きした。


「フフフ、お前らがあの子を好きなのは分かった、だが彼氏ぐらい自分で決めた相手をお前たちが好き勝手していいと本当に思っているのかな? それこそ君たちにとやかく言われる筋合いはないのではなかろうか?」


珍しく優は正論を言えた。


「我々も彼女が選んだ男性をどうこうしようと思わない、お前じゃなければの話だがな! お前のような社会に何の貢献もしないダメ人間にあの子が渡っていいわけがない! 我々はあの御方の将来を心配しているだけだ! 聞けばお前は! 昔あの御方に適当なことを言って励ましたようだな! しかしあの子はお前の言葉に縛られて自由を失ったんだ! 本当はもっと好きな人がいたんだろう! なのにお前の言葉のせいであの御方は他の男の子の告白をすべて断ったんだ!」

「まあ、そうだろうね……」


4歳から20歳までに告白されない人はなかなかいないだろう、特に咲菜のように熱狂的ファンがいて親衛隊がいるような人には特にそうだろう、

そして、それでも咲菜は優に対しての気持ちが変わらなかったっということは告白した男を全て振ってそして青春の全てを優に捧げたも同然なのであった、

親衛隊の人たちが心配するのも無理はない、

そして何より、咲菜は優好みの女の子になるために努力したのだろう、

つまり、全て優に縛られて生きてきたも同然なのである。

そして、優は


「だからこそ、俺はあの子の思いに応えるべきなんだ! そしてあの子と完全なる幸せという名の勝利を掴みとって見せるんだ! 今更お前らなんかに負けるかああああああああああああああああああああああああああああ!!」


優は敗北を味わい続けた男、

当然勝てる見込みがない、

だが今の優は傲りと酔いで自分は出来ると勘違いしている、

アニメの主人公のように正義は勝などと勘違いしているのである、

優は止まるつもりはなかった。


「いい覚悟だ、だがお前にマンに1つも勝ち目はない!」

「言ってろ!」


そう言って親衛隊は優に襲い掛かった。

優はアニメや、選択科目、漫画などで学んだ背負い投げをした。

ゴキン!!

案の定、運動不足と運動音痴の両方を兼ね備えてしまっている優に使いこなせる業ではなかった。

優はそのまま右腕の関節が外れてしまった。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 僕の右腕ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアああああああああああああああ!!」


情けなく座り込み、右腕を押えながら涙を流しながらみっともなく叫んだ。

それを見ていた親衛隊は冷めた目で


「この男を……あの方が選んだって言うのか……」


と絶望の目で見ていた。


「まあいい、お前もこれで終わりだ」


そう言って親衛隊のリーダーっぽい人がしないで殴ろうとした。

すると、


「くらえ!」

「うう!!」


優は卑怯にも、左手に持っていた砂をリーダーさんの目にぶっかけた。

そして


「くらえ! 俺の回し蹴り!!」


そう言ってリーダーに向かって回し蹴りを食らわそうとした。


「ク! 卑怯な!」


流石にリーダーさんは目を閉じた。

そのまま、優は足を絡めて顔から地面に打ち付けた。


「あああああああああああああああああああああああああああああああああ!! 痛いよおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!! 鼻血出たあああああああああああああああああ!!」


情けない叫び声が響いた。

周りの人たちはさらに怒りがました。


「貴様は! どうしてどこまでも卑怯なんだ! お前のそれは無謀でも勇気でも覚悟でもない! ただの傲りと侮り! そして我々に対しての侮辱だ!」


完全に親衛隊の怒りを買ったところで


「やめてください!」


咲菜は到着した。


「ク! 咲菜様!」

「様はやめてください!」


そう言って咲菜は優に駆け寄った。


「大丈夫ですか! 優君!」

「うん、超……痛い……皆僕をいじめるの……」


と泣きながら咲菜の胸に顔を埋めた。


「よしよし、無理しちゃって……大丈夫ですからね」


そう言って目を閉じながら咲菜は優しく優の頭を撫でた。

優は痛みに耐えながら


「フ、」


と親衛隊にニヤッと笑って見せた。


「ク! ……」


親衛隊は怒りを抑えながら言った。


「我々はお前を認めない! 絶対にな!」

「余計なお世話です!」

「……」


そうして親衛隊の皆はその場を去った。


「右腕が外れているではないですか!」

「うん、痛い……」


そう言って咲菜は


「條島さん、お願い」

「かしこまりました、お嬢様」


そう言って條島は優の右腕を嵌めた。


「ありがとう、條島さん」

「いえいえ」


そうして優の右腕は動くようになった。

優は條島に


「ありがとうございます」


とお礼を言った。


「もう無理はしないでください」

「ああ、分かったよ、でも変わりたかったんだ、俺」

「優君はそのままでもかっこいいですよ」


そう言って咲菜は優の言葉を鵜呑みにした。

優はそれすらも完全なる飾りでしかなかった。

條島は優を見ながら


「お初にお目にかかります、私の名前は條島 剛志と申します、以後お見知りおきを、あなた様のことはお嬢様に聞いております」

「……咲菜ちゃんってもしかしてお金持ち?」

「ええ、まあ……そうですね」

「……そうなんだ」


咲菜がそのことに触れて欲しくなさそうだったので


「助けてくれてありがとう、咲菜が来なければ僕は酷い事になっていたよ」


と言った。


「そんなこと、私の方こそごめんなさい……こんな目に逢わせてしまって……なんとお詫びをしたらいいか……」

「気にするなよ、別に気にしてねえし、君のせいではないだろうに……それに俺はお前をどんな理由があっても話す気はねえからさ」


そう言って咲菜を抱きしめた。

咲菜は


(ああ、嬉しい、彼はこんなにも私を愛してくれるなんて……)


そう思いながら頬を赤らめた。


(まあ実際こいつが金持ちでも金持ちでなくても俺の彼女には間違いない、もし俺がこの子の会社を継ぐのかもしれなくても実力不足は承知の上だがもうなるように頑張るしかないしな、結婚は計画しようとすればしようとするほど崩れたときの挫折感やプレッシャーに押しつぶされるものだと俺は童貞ながら思う、なら考えずに突き進み努力するのみ、最初はポーズになるかもだが俺は結果を残さないといけないのだからやるべきことを一つずつやっていくだけだ、必ずこの恋を成就させて見せ、そして結婚へと手繰り寄せて見せる!)


優は様々な困難を頭から離して今の幸せを考えていくことにした。


「近童 優様、一つよろしいでしょうか?」

「はいなんでしょうか?」


取り敢えずは優は覚悟して聞くことにした。


「あなたは咲菜様の財産目的や旦那様の会社を乗っ取ろうとはしてませんよね? もしそうであるなら容赦はしませんので……」


と確認するように聞いた。

優はそれに対して


「え、別にそれはない、正直金なんてあり過ぎたら人が変わるって言うから正直あまりの大金とかは老後の蓄えにしかしないと思う、何でも手に入ってしまうとその時の感動が薄れるのも嫌だし、2人で慎ましやかに暮らせるならそうしたいんだけど」


と言った。

條島は微笑みながら


「そうですか、ならいいんですよ、咲菜お嬢様にお金目的で近付いた男や、会社の乗っ取りで近付いた男がいたもので、不安だったんです、お嬢様のことを愛さずに別目的だとさすがに私も許しませんでしたし、……本当に良かったです」


條島はほっとしたように言った。


「正直彼女が好きなのは僕の正直な感想ですよ、こんな可愛らしくて純情な子を金目的や会社目的で付き合おうなんてもったいなさすぎだろ! いつかもったいないお化けに祟り殺されろって感じですよ! 僕の彼女を愛する気持ちはそんな男どもに負けてたまるか!」


優は金より愛を選ぶタイプの人間である、

確かに昔金持ちになりたいと思って宝くじと言う博打に手を染めた。

しかし、それすらもただの貯蓄と言う夢のないことを理由に買ったまでだ、

そして宝くじを買うと人生が潰れた人をがいるとネットで知った瞬間ビビッて

それ以降宝くじを買うのが怖くなり手を完全に引いた。

あるのは何か幸せになりたいと言う漠然とした夢物語であった。

しかし、今の彼は咲菜と言う彼女が出来た、

そのためこの男は単純であったため必死に縋りつこうと思い始めたのである。

條島は優に微笑みながら言った。


「優様、私はあなたと咲菜様のお付き合いは猛反対でございます」

「賛成してくれねえのかよ」


意外な言葉にその言葉しか出なかった


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